058 家族でA5ステーキを食べる。
優斗は時計を見て9時を過ぎているのを確認した。夕食の時間だ。部屋を出てダイニングに向かう。ダイニングでは修二と和子が優斗と美香が来るのを待っていた。優斗が席につくと美香がやって来た。こころなしか美香はウキウキしているように見えた。
美香が席について夕食が始まった。優斗と美香はテーブルの上を見て驚いた。テーブルの上にはお祝いの日でもないのにステーキが乗っていた。
「今日は宝くじに当たったお祝いとしてA5の和牛ステーキを準備したのよ」
和子が嬉しそうにそう言うとテーブルの上に置いてあるステーキに家族の目が行く。霜降りが半端なく感じられるお肉だ。美香と修二は嬉しそうな顔をした。ただ優斗だけはキングミノタウルスの肉にはかなわないだろうと思っていた。
それでもこの家でA5のステーキなど見るのは初めてのことだ。和子が奮発して買って来たのだろう。優斗が和子の顔を見ると嬉しそうな顔をしているのが分かった。
「お母さん。凄いよ。私、和牛のステーキなんて見たこと無いよ」
美香は霜降りののったステーキを見て声を荒げる。当然だ。今まで食べてきたステーキはスーパーの特売品のものだった。
「美香だけじゃないぞ。お父さんも会社の接待でしか見たことが無い。しかもA5の最高級の和牛肉だろ」
修二は会社の接待などでA5のステーキ肉を食べたことがあるようだ。
「ふふふ、和牛肉のステーキだけじゃないのよ。大分奮発したわよ。お父さんと私様に赤ワインも準備してあるわよ」
和子が言ったようにテーブルの上には赤ワインが二本も置いてある。その赤ワインも高級感がある様に優斗は思った。
「この赤ワインも高そうだな」
「一本、3万円です。凄いでしょ。6万円も使ってしまったわ」
和子の言葉にみんなは驚くしかない。以前の和子はこんな贅沢をするような人ではなかった。家のローンがあるので贅沢な暮らしは出来なかった。そうはいっても貧乏と言う訳ではない。
「お母さんが億万長者になったとたん無駄遣いが凄い。そんなんで大丈夫なの?」
和子のはしゃぎっぷりに美香はすこし引いている。修二も和子の変わりように驚いている。優斗は亜空間倉庫に50億円近くお金があるので余裕な表情をしている。
和子は修二と美香の顔を見て二人が和子の行動に引いているのが分かったのだろう。慌てて言い訳をする。
「そんな顔しないでよ。今日だけよ。でも月に一度か二度くらいこれからもこんな日があっても良いと思わない?」
「まあ、月に一度か二度くらいなら宝くじに当たったお金も無くならないだろうな。俺のお金と母さんのお金を合わせば5億円もあるしな」
修二は和子の気持ちも分からないではなかった。結婚して子供が出来て家を建ててそれなりに苦労して来た。お金が出来たのだ。少しは自分たちをねぎらっても良いと思えた。
和子も同じ気持ちだったのだろうと思うことにした。
「私もそれくらいなら贅沢をしても良いと思う。お母さんに賛成」
美香は美味しい物が食べられるならどうでもいい感じだった。優斗はお金を50億も持っているので我関せずといった感じだ。それにこれくらいの贅沢程度ではお金を使いきることは出来ないと思っていた。
「俺もそれくらいなら良いと思うよ。毎月2、3度は、なにか美味しいものを食べようよ。一流料理店に行くのもいいしね。そういう店に行ってみたいと思っていたんだよ」
優斗の言葉に美香が直ぐに反応する。美香は嬉しそうな顔をしていた。
「それもいいね。お兄ちゃんの意見にも賛成一票」
「それなら私も料理を作ることをしなくても良いわね。私も賛成するわ」
和子は自分で料理する必要が無いので大助かりだと思って優斗の言う事に賛成する。
「なら、来月はどこかの高級レストランでも予約するか?」
修二は仕事をしながら和子に家事までさせているのを申し訳なく思っていた。なので、優斗の意見には賛成だった。
「レストランの件は、お父さんに任せたよ。早くステーキが食べたい」
美香はステーキが食べたくて仕方がないようだ。
「それじゃあ、頂きます」
「「「頂きます」」」
修二も和子も美香も直ぐにステーキにホークを差してナイフで一口大にステーキを切りステーキを口に頬張る。
「「「美味しい」」」
「サイコーだな。これならいくらでも食べられるよ」
「うん、美味しい。お母さんありがとう」
修二も美香もステーキが気に入ったようだ。
「お兄ちゃんは美味しいと思わないの?」
「美味しいよ。また食べたいな」
優斗はミノタウルスキングの肉に比べるとA5の和牛ステーキの肉は劣っていると思った。やっぱり叡智が言ったように魔力を持っている魔物の肉の方が優斗には美味しく感じた。
「そうよね。また食べたいわね」
「お父さん。ワインもどうぞ」
和子がワイングラスに赤ワインを注ぐ。修二は嬉しそうにして和子のグラスにも赤ワインを注いだ。そしてワインを飲んで満足そうな顔をする。
「たまにはこういうのも良いな」
「そうね。お父さん来月は高級レストランを予約してね」
「まかせておけ」
修二と和子はステーキを食べながら赤ワインを飲んで満足している。美香も満足した顔をしている。
「お兄ちゃん、高級レストランだって。楽しみだね」
「そうだな、俺も楽しみだよ」
修二はステーキを食べてワインを飲みながらどんな店に家族を連れて行こうか悩む。
「でも、いきなり高級レストランと言っても俺はそう言う店を知らないからなー」
「それなら俺がスマホで探してあげるよ」
「私も手伝うね。お兄ちゃんと来月行くお店を探すよ」
優斗の提案に美香がのっかってくる。その顔は期待に満ちていた。優斗は下手な店を選べなくなった。そこら辺の高級レストランよりスキル料理Lv.10を持っている和子の作る料理の方が美味しいに決まっているからだ。
その点では優斗は失敗したなと思った。和子以上に料理が出来るシェフはこの地球には存在しないだろうと思ったからだ。まあ和子以上の腕を持ったシェフが存在しなくても家で使っている食材以上に高級な食材を使った店ならあると優斗は考えた。
「それなら、美香と一緒に店を探すか」
「うん、お兄ちゃん」
「そう言う事なら優斗に任せよう。楽しみにしているぞ」
「まかせてよ。いいお店を見つけておくよ」
「私も楽しみだわ。着ていく服も買いに行かなくちゃね」
和子は服も欲しいようだ。
「お金は沢山あるんだから遠慮しないで服でも靴でも買ってくればいいよ」
「そうよね。優斗が宝くじを当てたおかげで贅沢が出来るわ。ありがとう」
「そうだな。優斗、ありがとう」
優斗は初めて両親にお礼を言われて感動した。そして照れくさくなる。
「良いんだよ。お金はみんなで使わないとなくならないほどあるんだからさ。お父さんも服とか靴を買うと良いよ」
「そうするよ。こんどの休みの日にでも服を買いに行こうか和子」
「そうね。久しぶりに2人で行きましょうか?」
修二と和子は嬉しそうに話をしている。その光景を見て優斗は幸せな気分になった。そしてそう言う幸せをくれた神様にお礼を心の中で言うのだった。




