055 美香をコーディネイト
優斗はさっきのチンピラもどきの男たちの暴力をふるったことを何も悪いことをしたとは思っていなかった。だが美香は少し優斗がやりすぎたかもしれないと思っていた。
「お兄ちゃん、あんなことをして大丈夫なの?」
「美香が心配することはない」
美香が震えているのを見て優斗は神聖魔法で美香の気持ちを落ち着かせる。美香の青ざめた顔がだんだんと正常に戻って来た。
「大丈夫ならいいんだけど。このあとどうするの?」
美香のその言葉に優斗はさっき起こったことがなんでもなかったかのようだった。
「心配するな。あの男たちのことは気にしなくてもいい」
「本当に大丈夫ならそれでいいけど……」
「このまま予定通り美香の服を買いに行くぞ」
美香は優斗の魔法で正常な状態に戻っているので彼女もさっきのことをそれほど気にしなくなっていた。優斗は予定通り美香の服を選びに行こうと誘う。
「分かった。それじゃあ、地下に行ってみようよ」
「そこに美香の御目当ての店があるのか?」
美香は以前にもラフォーレ原宿に来たことがあるので店には優斗よりも詳しいようだった。
「うん、前来た時に好みの服が多かったからそこに行きたい」
「時間はあるから何か所か回ってもいいぞ」
「ほんと?」
「ああ」
「ありがとう。前は友達も一緒だったから思ったように店を回ることが出来なかったんだよね。今日は何か所か回ってもいい?」
「いいよ。俺がお金を出すから好きなだけ買ってもいいぞ」
「流石、億万長者は言うことが違うね」
優斗は宝くじに当たったお金以上に異世界でお金を得ている。そのお金のことを考えればどれだけ買い物をしてもお金が無くなることはないので心配はしていない。美香が望むだけ服を買ってあげようと思っていた。
「ははは、美香も億万長者になるんだけどね」
「そうだった。お兄ちゃん、ありがとう」
美香は優斗に言われて初めて自分も億万長者になったことを自覚する。美香はそう考えて遠慮なしに服を選ぼうと心に決めた。
「どういたしまして。それじゃあ、行こうか」
「うん」
二人は何事もなかったかのようにエレベーターに乗って地下に向かう。地下二階につくとそこにも一階と同じようにメンズやレディスの服を扱っている店舗がいくつもあった。美香は迷いが無く一つの店舗に入っていく。
その店舗には多くの女子中学生や女子高生がいる。優斗はそれを見て店舗に入るのを躊躇う。美香がそんな優斗を見て首を傾げる。
「どうしたの? お兄ちゃん、早く来てよ」
「いやー。女性ばかりだから入りにくい」
「はー。男性もいるじゃない」
中には女子高生と仲がよさそうにしている男子がいた。どう見ても恋人同士だろう。兄妹には見えない。そんな中に優斗が入るのは恥ずかしかった。今まで女性に近付くことがタブーだった優斗にはこんな店に入るのは度胸がいる。
しかし、そんな優斗の考えを知らない美香は優斗の腕を掴み強引に優斗を誘って引っ張って店の中に入って行こうとする。
「まて、美香。俺は外で待っている」
「それはだめです。今日はお兄ちゃんに服を選んでもらうからね」
美香は優斗が気に入る服を選んでくれるのを楽しみにしていた。そして今日はそれが叶う。だから優斗を逃がさない様に腕に絡みつく。優斗は美香の柔らかい膨らみが腕に感じられて恥ずかしくなる。
「俺にファッションセンスを求められても困るんだが……」
「朝のお兄ちゃんの服のセンスを見ているからお兄ちゃんには店員が選んだ服が私に似合っているか見てもらうだけで良いよ」
「分かったよ。でも俺のセンスに期待するなよ」
「それは分かっているから。私が服を着たら可愛いかどうか言ってくれるだけで良いから」
「しょうがないなー」
優斗は不満そうな顔をして店に入る。恥ずかしくて顔がほてってくるのが優斗には分かった。優斗の顔は真っ赤になっていた。美香はそんな優斗を見てほほ笑む。そして優斗のことを可愛いと思った。
美香は優斗に言った通り店員を呼んで服を選んでもらった。店員は美香が凄い美少女なので服選びを張り切った。サイズを確認するといくつもの服を持ってきた。服を持ってくるたびに美香は試着室で着替えて優斗の意見を聞く。
「どう? 似合っているかな?」
「美香はどれを着ても似合うから選ぶのに苦労しそうだよ」
「もう、お兄ちゃんたら……」
美香は優斗の言葉に恥ずかしそうにする。ハッキリ言って美香はどの服を着ても似合っていた。それに美香が試着をしているたびに店員が次々に服やスカートにワンピースを持ってくる。
「どれもお似合いですね」
店員も選んだ服を着た美香を見てそう言う。
「有難うございます」
「他の服も見せてください」
美香は他にも服を着る気満々だ。優斗はしかたなくコーディネーターと言うスキルをスキル創造で獲得した。そして叡智にコーディネイトの知識をインストールさせる。それで美香の服をコーディネートが出来るようになった。
優斗は店員が持って来た服を自分でコーディネートして一番美香が可愛く見える服をどうにか選んだ。とつぜん服をコーディネートする優斗に美香は驚いたが優斗のコーディネートした服を美香も気に入ったのでその店で二組の服と一足のサンダルを買った。
それでも美香の買い物は終わらない。次々に他の店にも入っていく。そこでもいくつもの服に着替えて優斗に見せていく。美香は着せ替え人形のように店員が持ってくる服に着替えていく。
優斗はその店でも美香にあうように店員が持って来た服をコーディネートして美香に薦めていく。結局、地下二階から地上二階まで17件の店を回って中学生や高校生に似合うような服から大学生が着るような大人びた服まで買うことになった。
合計30万以上のお金が飛んだ。それでも50億近い金額を亜空間倉庫に持っている優斗の懐は痛まない。全ての買い物を終えてラフォーレ原宿を出ることにした。
ラフォーレ原宿を出たところで優斗と美香は20人ほどの男たちに囲まれた。その中にはフードコートで出会ったチャラ男がいた。
「俺たちに手を出したのが失敗だったな」
顔を晴らしたチャラ男がそう言ってくる。
「男のお前は死ぬほど後悔させてやる。女は想像しただけでも悲惨な結果になることは分かっているだろうな」
時雄は勝ち誇ったようにそう言ってきた。優斗はそんなチャラ男の言葉に動じない。しかし、美香は震えて顔を青ざめている。それが普通の人の反応だろう。チャラ男は美香の顔を見て満足そうな顔をした。そしていやらしい顔で美香を見る。
優斗はそんな顔で美香を見るチャラ男を許せないと考えた。そしてこいつらをどうしようかと思案する。そして覚悟を決めた。




