050 ロト7当選①
優斗は金曜日は何も予定が無かったので朝家族で朝食をすませた後は暇だった。それで、ネット小説の異世界転生や異世界転移の内容の書かれた小説を読んでいた。異世界でどう過ごしていったら楽しく過ごせそうか考えて過ごした。
ネット小説では異世界で魔法を使っていろいろな楽しみ方があり冒険したり商売をしたりして過ごす作品がいくつも書かれている。そんな作品を改めて異世界でどう過ごそうか考えながら読むのは楽しいと優斗は思った。
でも一日で読むことが出来るのは一作品程度しかない。それに途中で書くのを辞めた作者さんもいて主人公がその後どうやって異世界で楽しく過ごしているか分からない作品もある。なるべく文章の長い作品から選んで異世界ものの小説を読んでいく。
優斗は今までは虐められて友達もいない一人の時間をどう過ごそうかと考えていた時に書店で買った異世界もののラノベを読んで、それで、そのラノベにはまりその成り行きでネット小説を読むようになった経緯がある。
優斗は今までただ読むだけで楽しかった小説を、今は異世界でどう過ごすかという目的のために読んでいた。でも異世界でどうやって過ごすかということを知るという目的が出来たので、今まで読んだ小説も読み返すことにした。
兎に角、ネット小説で異世界転生ものと異世界転移ものを検索して読むことにした。
そして夜の7時になってスマホをググってロト7の当選番号を優斗は確認した。するとスキル未来詠で見たとおりの当選番号だった。ロト7の当たりくじを見て何度も確認したから間違いない。
優斗はこれからお金持ちとして日本でどう過ごそうかも考えなくてはならなくなった。お金があればやりたいことはいくらでもある。でも優斗はまだ法律上では子供なので出来ることは限られている。
それでも出来る範囲のことを想像する。それだけでも顔がにやけてしまう。そして家族にどう話そうかと考える。夕食の時に話すことにした。未成年は宝くじを換金できないのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
晩御飯の時間ダイニングに行くと家族は揃っていた。以前だったら優斗がいなくても食事を始めていた家族だったが今日は優斗が来るまで食事をせずに待っていてくれていた。優斗はそのことだけでも嬉しさがこみ上げてくる。
そして自分が幸せになる様に手を貸してくれた神様に感謝するのだった。
「ごめん、待たせたみたいだね」
家族はそんな優斗の言葉に「何を言っているの?」という顔をする。
「家族なんだから待つのは当たり前だろ」
「そうよ。なんでそんなに嬉しそうな顔をしているの?」
「お兄ちゃん、ほら、早く席に座って」
家族の温かい言葉が余計に優斗の心に響く。それだけでも神様からニーベルリングを貰った甲斐があったと優斗は思った。優斗は美香が椅子をポンポン叩いて早くしてと催促しているのを見て直ぐに席に座る。
テーブルの上には今まで食べたことが無いような料理が並んでいた。和子が優斗から貰ったレシピを元に作った新作料理だった。和子の方を見ると「してやったり」という顔をする。
「お母さん、今日の料理は初めて見るものだね」
修二は料理を見て嬉しそうに和子に尋ねる。和子は自信満々に胸を張る。
「そうでしょう。なんだか知らないけどいろいろな料理の作り方が分かる様になったのよ。それで今まで作ったことが無い西洋料理に挑戦してみたの。レンジのオーブンなんて使ったことが無いのにオーブンの使いかた方が分かるようになったのよ。今日の料理はサンマとトマトのハーブグリルっていう料理なの。美味しいと思うから食べてみて」
料理から独特の美味しそうな香りが漂ってくる。修二は初めて見る料理を早く食べたくて仕方がないような顔をする。美香も待ちきれないようだ。
「本当に美味しそうね。お兄ちゃんもそう思うでしょ」
「そうだね。美味しそうだ」
「それじゃあ、食べようか」
「「「「頂きます」」」」
家族は初めて見るサンマとトマトのハーブグリルから口にする。
「「「「美味しい(よ)」」」」
優斗が和子に渡した料理の知識と料理Lv.10はうまく機能しているようだった。そのことに優斗は満足した。
「凄いよ。お母さん、とても美味しいよ」
美香はとても嬉しそうな顔をした。優斗はその顔を見られただけで自分のしたことを良かったと思った。和子もみんなが嬉しそうに料理を食べるのを見て誇らしそうにする。そして料理を作って良かったと思った。
「この味ならお店を出してもいいくらいだ。本当に美味しいぞ」
修二も満足しているみたいだ。本当に一流のシェフが作った料理に負けていない味だと修二は思った。
「母さん、本当に美味しいよ」
和子は家族から絶賛されて照れるように顔を赤らめる。そして幸せそうな顔をする。優斗はそんな家族の幸せそうな顔を見て嬉しく思った。
「明日も期待していいわよ。ローストビーフとか作っちゃおうかしら。今ならどんな料理も美味しく作れるような気がするわ」
「それ食べてみたい。作ってよ、お母さん」
「俺も料理を作ってくれると嬉しいな」
修二は和子が美味しい料理を毎日作ってることを望んでいるようだ。
「でもお肉とか高いし……」
優斗の家はローンで購入しているので両親ともそのローンを払う為に共稼ぎをしている。貧乏ではないが贅沢が出来るような家でもなかった。
「金のことなら心配しないでもいいよ」
「優斗、どういうことだ?」
「実は俺、宝くじ売り場でロト7を買ったんだ。さっき当選番号を確認したら一等賞だった。他に当選者がいなかったから配当金額は10億円だよ。俺は億万長者になったんだ」
優斗の言葉を聞いて家族は驚くが無理もない。10億円なんて普通の人が使える金額じゃない。一生かけて稼げる金額は平均で2億7千万だと言われている。その収入の3倍以上を優斗は稼いだことになる。
「本当か!? 優斗!」
「優斗! 本当なの」
「お兄ちゃん! 凄い!」
家族は夕食を食べるのも忘れて優斗を見る。優斗は家族の驚いた顔を見て笑うしかなかった。
「本当だよ。この宝くじは家族全員で買ったことにしようよ。俺だけで買ったことにして家族に分けると税金が掛るんだってさ。だから家族で買ったことにして2億5千万ずつみんなで分けようと思っているんだ」
その話を聞いて修二は嬉しそうな顔をする。そしてそんな家族の顔を見て優斗はほほ笑む。




