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047 妖魔事件の後始末②

スーツを着た女性と男性は優斗には25、6歳くらいの年に見えた。そして二人ともモデルのように整った顔をしていた。二人は揃って祈里の下にやって来た。


「「祈里お嬢様、ご苦労様です」」


「いいえ、たいしたことはありません。今回はこの方に助けていただきました」


祈里はそう言い優斗に顔を向ける。二人はその言葉を聞いて驚いた顔をする。二人はこの退魔師の業界で長いこと働いている。それに関東を統括する成神家と高橋家の分家の出身で関東にいる退魔師とはある程度面識がある。そんな彼らは目の前の少年のことを見たことが無かった。


それに祈里が苦戦するような妖魔から目の前の少年は祈里を助けたという。二人は少年がただ者ではないと思った。優斗はそう思われていること自体知らないでいる。


「お嬢様を救っていただきありがとうございました。私は成神家の分家で二条院の者です。名前は加奈と言います。あなたは何処の家の方ですか?」


女性の方がそう尋ねてきた。


「俺は九条優斗といいます。それと俺に敬語は必要ありませんよ。年上の方に敬語で話されると落ち着かないですから」


「わかったわ。優斗君と呼んでもいいかな? 私のことは加奈とでも呼んで欲しい」


加奈はかなり打ち解けやすい印象を持つ大人の女性と言う感じだった。人間不信の優斗でも直ぐに打ち解けることが出来そうな雰囲気がある。加奈も警察官として人当たりが良いように装っている。実際は優斗のことを値踏みしていた。


「はい良いですよ。加奈さんとお呼びします」


「しかし、祈里お嬢様が後れを取った妖魔は何だったんですかね」


男性はそう言い優斗たちの後ろの地面に横たわっている妖魔を見た。そして驚いた顔をする。


「大きさからすると女郎蜘蛛の上位種のようですね」


「そうなんですよ。いつもの個体より強かったです」


祈里が戦っていた妖魔はそれなりに力のある個体だった。祈里が出ていなければ被害がさらに拡大していただろう。その祈里がやられそうなところを優斗が助けたという。加奈はそんな優斗に興味を示す。


「でも、お嬢様なら一人で倒せたのではないですか?」


男性は祈里が一人で倒せなかったことを不思議に思った。


「一馬がいましたから……。彼を庇いながら戦う程、私は強くありません」


祈里がそう言うと加奈と男性は地面に横たわっている一馬を見て納得がいったような顔をした。


「俺は高橋家の分家に当たる三上家出身の博人(ひろと)という。九条君、今回は祈里お嬢さんを助けてくれてありがとう」


「どういたしまして」


「ところで九条家は退魔師の家系かな? 聞いたことが無い家名なんだが?」


「俺の家系に退魔師はいません。俺は一般人です」


加奈と博人は驚いた顔をする。ただの一般人が祈里でも手古摺った妖魔から彼女を助けられるはずがないからだ。それに霊力が少ないから警視庁の退魔科で働いているが退魔師の修行を受けていたので霊力や妖力を見ることは出来る。優斗が霊力を纏っているのを二人にははっきり見えていた。


「そのように多くの霊力を纏ながら一般人はないでしょう。博人もそう思うでしょ」


「そうだな、どう見ても一般人には見えないな。なにか理由でもあるのかな?」


優斗は退魔師全員が霊力(魔力)を可視化できることに驚いた。祈里は優斗が驚くのを見てなぜ彼が驚いているのかを察した。


「優斗さん、私たち退魔師は特別な血を引いているんですよ。修行をすれば退魔師の家系に属する者なら霊力を見ることが可能なんです。私の目が特別なのも私たちに流れている血のおかげなんです。彼らの目は嘘を見抜くようなものではないですが優斗さんが纏っている霊力を誤魔化すことは出来ません。諦めて下さい」


優斗はどう答えて良いか悩んだ。本当に優斗は一般人の家系に生まれたただの少年だ。ただ異世界に行ってレベルを上げて強くなっただけの存在だ。そのことは誰にも話さないつもりでいる。でも、祈里だけには打ち明けておこうと思った。


スキル未来視でみた祈里との結婚をする未来を見たことで祈里のことを他人と割り切ることが出来なくなっていた。


(あれ、そういえば少なかったとはいえ初めから魔力を俺ももっていたな)


優斗はそのことに気付いた。そして自分を納得させた。でもどう説明していいかやはり分からない。


「俺は本当に退魔師とか知らない家庭で育ったので一般人としか言いようがありません。霊力を持っているのは認めます。でもそのことについて詮索はしないで欲しいです。いずれ祈里さんに話しますから」


「分かりました。日曜日に話してくれることを期待します」


四人で話しているうちに公園の中に黒塗りのワンボックスカーが何台か入ってくる。その車から黒服を着た人たちが下りてきた。そしてストレッチャーに被害者たちを乗せて車に運んでいく。


「祈里さん、あの人たちはなんなの?」


「あの人たちは退魔師協会の人たちです。妖魔に襲われてケガをした人たちは妖気に侵されていることもあるので普通の病院では治療が出来ないんです。被害者は治療を専門にしている退魔師の方たちが行うんですよ」


妖気というものが人体に悪い影響を及ぼすと優斗は初めて知った。


「そうなんだね。俺は何も知らなかったよ。まるで映画のワンシーンを見ているような光景だ」


優斗は不思議な感覚で車に乗せられていく被害者たちを見ていた。被害者たちはまだ気を失っているようで動くような気配を見せない。


「被害者たちは退魔師協会の病院で治療をした後に記憶を消して家に帰すことになるんですよ。だから退魔師や妖魔のことは誰も知らないんです」


祈里の言ったことで一般人だった優斗が退魔師や妖魔のことを知らなかったことを納得できた。


「優斗さん、加奈さんと連絡先を交換しておいてください。加奈さんは成神家の分家なので私の親戚になります。妖魔に関してなにかあれば加奈さんを頼って下さい」


「それは嬉しい申し出だよ。加奈さん、連絡先を交換してくれますか?」


「いいよ」


そう言い加奈はスマホを取り出して優斗に向ける。優斗もスマホを取り出して加奈と連絡先を交換する。優斗は今日一日で家族以外の人の連絡先を二件も登録できたことを喜んだ。


高校に入学した時に友達が出来ることを期待してスマホを買った優斗だったが友達は一人も出来なかった。今まで連絡先の交換なんてしたことが無い。今日初めて他人と連絡先を交換する経験を得た。


「なにかあったら連絡してほしい」


「有難うございます。困ったときは連絡します」

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