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043 妖魔

優斗は学校で赤城たちに仕返しをしたことで満足して学校の校門を出た。そして宝くじを買う為に駅を目指して足を進める。ところがすれ違う人たちが優斗を可哀そうな者を見る目で見てくるのに気付いた。


優斗はいい気分で学校を出てきたのに変身でもとのカッコいい優斗ではなく醜いままだった。もう以前のように優斗は他人に見下されるのは嫌なので変身するために近くの公園を目指した。公園のトイレで変身しようと思っての行動だった。


近くの公園に着くとその公園からなにか特別なものを感じた。


(マスター、これは人払いの結界です。中に魔法を使うような何者かがいると思われます)


(地球でも結界の様な魔法を使う者がいるんだね)


(一応、私の知識では数は少ないですが魔法のようなものを使えるものがいるみたいです)


(そうなんだ。俺以外に魔法が使える者がいるとは思ってもみなかったよ。いちおう、マップで悪意がある者か確認してみるよ)


優斗はマップを展開する。すると公園内には悪意ある者を示すオレンジの〇印ではなく魔物を示す赤い〇印と人を示す白い〇印が二つ確認できた。〇印はレベル180の魔物に相当する大きさを示している。白い人のしるしはレベル150とレベル190くらいの大きさだった。


人と魔物が公園内で戦っているのだろう優斗は思った。レベルで人の方が強いと判断したが地球に存在する魔物の正体が気になり公園の中に入っていく。誰が張ったか分からないがレベル255の強さを持つ優斗に人払いの結界なんて効くことはなかった。



◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「はぁ、はぁ、はぁ」


公園の中では少年が白い縄のようなもので簀巻にされて地面に転がっていて少女が煌びやかな刀を両手で持ち息を荒げて魔物に対峙していた。白いブラウスに赤いネクタイにチェック柄のスカートでどこかの高校の制服を着た少女だった。


黒い髪に黒い瞳。身長は165cmはある。黒くて綺麗な髪は肩甲骨あたりまで長く伸びている。肌は透けるように白く、可憐な美しい少女だった。そんな美少女が魔物と対峙している姿は異様なものに見えた。


その少女が相対しているのは上半身が美しい女性の姿をしていて下半身が蜘蛛の姿をしている化け物だった。少女たちはその化け物を総称して妖魔と呼び、目の前の妖魔は女郎蜘蛛と呼ばれる妖魔だった。


女郎蜘蛛は巨大だ。体長は3mを超え大きさは全長4mもある。口には鋭い牙があり足にはかぎ爪が存在する。赤く爛々と光る赤い八ツの目がついている。その目が目の前の少女をとらえている。少女は女郎蜘蛛から圧を感じて後退さる。


妖魔。それは普段は魔界にいる生き物で普段はそこに生息している。かつて神々が地上にいた時代にはこの世界には人が住んでいるところに妖魔も住んでいて人々を襲っていた。その時代は神々がいたので妖魔を地上に住まう神々が退治していた。


しかし神々がこの地上をさり天界に移るときに地上に住む妖魔を魔界に閉じ込めて人が住む地上を人間界として妖魔が住む場所を魔界とした。しかし、人間界と魔界との境界にずれが生じるときがありそのずれの隙間を通り魔界から妖魔が人間界に訪れるときがある。その妖魔を退治するのが退魔師の役目となった。


美しい少女はその退魔師だった。少女は女郎蜘蛛に追い詰められていた。


(まずいですね。このままではいずれ追い詰められてしまいます。一馬を連れてきたのは失敗でした)


少女自身は退魔師としてはかなりの使い手で女郎蜘蛛とは何度か戦い勝ったことがある。しかし少女の家の分家の一馬は力はあるが女郎蜘蛛を相手取るほど強くは無かった。実家からは一馬の経験になるから連れていけと言う命令があり彼を伴って妖魔退治に来たのだった。


それが間違いだった。女郎蜘蛛に会って早々一馬は女郎蜘蛛の威圧に委縮して動きに精彩を欠き動きが鈍ったところに女郎蜘蛛が攻撃を放った。少女は攻撃を受けそうになった一馬を庇って負傷したのだった。その一馬は女郎蜘蛛の糸により簀巻状態にされている。


その女郎蜘蛛も、偶然この世界に出現した存在である。人が消えるような行方不明事件が複数発生してその事件が人為的なものではなく妖魔が関係する事件だと判明して少女がその事件に派遣された。


本来であれば直ぐに片付くような案件だった。今日は一馬がいて本当に運が悪かった。少女は自分だけだったらと考える。まさか一馬が足手まといになるなんて思ってもいなかった。


一馬は初めて妖魔をみたことでいつもの力の半分も出せずに意識を飛ばされて女郎蜘蛛の糸でグルグル巻きにされている。今は何もできない状態だ。


(まさか、一馬が早々にリタイヤするなんて……)


少女は先ほど一馬を庇って女郎蜘蛛の攻撃を受けたときに毒にやられてしまっていた。強力な妖魔の毒は少女の体を蝕んでいく。じゅくじゅくと痛むと同時に腕の感覚が消えていく。その分、攻撃に回す霊力がかけてしまう。


また毒自体もかなり強い。少女の浄化では完全に毒を消し去ることは出来なかった。少しは浄化出来たので体はかろうじて動く。女郎蜘蛛の毒は餌にする獲物を捕らえるための神経毒なので毒を受けても命にかかわるようなことはない。


しかし毒は少女の体力を奪っていく。そしてそれに伴い少女の霊力が減っていく。体力が減った状態ではいくら少女が女郎蜘蛛よりも強いと言っても勝つことは出来ない。少女は途方に暮れる。


「キシャー!!いい気味だ。小僧はもう動けない。後はお前を始末するだけだ。覚悟はいいな?」


不気味な奇声を上げて女郎蜘蛛は少女を威圧する。知能の高い妖魔は言葉もしゃべることが出来る。公園の木々の茂っている方には女郎蜘蛛の巣が見える。そこには簀巻にされている攫われた人たちが見える。そこには無数の卵が植え付けられているのも確認できる。


女郎蜘蛛からしたら少女も一馬も同じような餌のように見えているのかもしれない。霊力を持っている者は妖魔にとっては御馳走だ。霊力を持っている者を食べると妖魔の妖力が増す。ますます妖魔は強く成る。


「申し訳ありませんが食べられるつもりはありません」


服から一枚の霊符を取り出して女郎蜘蛛に向かって投擲する。霊符は火の玉へと変わって女郎蜘蛛を包み込む。そして女郎蜘蛛を焼きつくす勢いで燃え上がる。そして炎は女郎蜘蛛を包み込んだ。


爛々と燃え上がる炎。並みの妖魔なら焼き尽くすほどだ。しかし少女の目の前にいる女郎蜘蛛は一段進化した個体だった。


「キシャー、キキキキ。こんな火は何ともない。お前の妖力はその程度か? 情けないな」


「そんなー!?」


炎が消えても傷一つついていない女郎蜘蛛が少女の目の前にいた。少女は声を荒げて叫ぶほど冷静さを欠いていた。少女は毒を受けたせいで火の玉にいつもの様な力が無かった。


少女が戦意を失くした隙を女郎蜘蛛は逃がさない。さらに少女を追い込んでいく。女郎蜘蛛は急速に接近して少女をその足で叩き飛ばした。少女は何とか刀で防いだが大きく後ろに飛ばされて木に背中を叩きつけられた。


「うっ!」


痛みに少しうめき声をあげ苦悶の表情を浮かべる。少女の体は思うように動かない。叩かれて吹きとばされたときのダメージもあるが毒の影響もある。先ほどの攻撃も少女は避けるつもりでいたが避けきれなかったのだ。


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