037 シャルルの変化①
シャルルは優斗に触れられ自分が光に包まれたことは分かった。その後何故か魔法に関しての知識や剣術に関しての知識に格闘術に関しての知識などが分かる様になっている。しかし優斗が自分に何をしたのかは分からない。とても不思議な気持ちだった。
「優斗、私に何をしたの? 教えなさい」
優斗はシャルルを見てほほ笑んでいる。シャルルからしたら彼は何処か満足しているような顔に見えた。それが何も知らないシャルルにしたら何故か腹立たしい。それでも優斗はだんまりを決めている。なにもしゃべろうとはしない。
「本当に何をしたの?」
シャルルがそう言っても優斗は何食わぬ顔で相手にしてくれない。いつもの優斗と感じが違う。いつもならシャルルが尋ねると優しく何でも教えてくれるのに今日の優斗は意地悪だ。
「今は内緒です。シャルルさん、片づけは俺がやっておきますので先に風呂に入ってきてください。その後でいろいろと話しますよ」
「いまじゃダメなの」
優斗はシャルルをからかって面白くなってきた。そのためシャルルに何を行ったかなかなか話さない。その方が楽しいと思ったからだ。
シャルルはそんな優斗の態度が腹立たしく思うが、なかなか真実を語ってくれないのでどうしようもなくなる。
「今はだめです。サプライズ的なことを期待したいので……」
シャルルは優斗が何をしたのか言わないので少しむくれた顔になる。どうしても優斗は話そうとしない。
「サプライズってなによ。聞いたことのない言葉だわ」
「サプライズと言うのは俺の国の言葉です。内緒にして相手を驚かせるという意味です。なので全て内緒です」
「私に何をしたのか今教えても良いじゃない」
シャルルはだんだんと腹立たしさが増してくる。「本当にいじがわるいなー」と優斗のことを思うようになってきた。そんなシャルルの態度を見てほほ笑む優斗。
「それはだめです。さあ、早く風呂に行ってください。風呂に行かないと話しませんよ」
優斗はシャルルが風呂に入り鏡を見て驚くことを想像して笑顔になる。その優斗の笑顔を見てシャルルはますます不機嫌になる。
「本当にどうしたのよ。優斗はそんな意地悪なこと私にしたことが無いのに。分かったわよ。風呂に入ってくるわ。その後にちゃんと説明してよ」
「はい分かりました。さあ、早く風呂に入ってきてください。話はそれからです」
「私が何を言っても無理なようね」
「やっとそのことに気が付きましたか。さあ、お風呂場に行って下さい」
優斗は煽り立てるようにシャルルに風呂に入る様にせかす。シャルルは追い立てられるように風呂場に向かった。彼女の顔は明らかに不満顔だった。
シャルルは今日の優斗の素振りを不思議に思いながら風呂場に向かう。そして、シャルルは脱衣所で服を脱ぎいつもより急いで風呂場に入る。
「早く入って優斗に何をしたのか教えて貰うんだから……」
風呂場に入って体を洗い石鹸を水で洗い流した時にいつもより肌が水をはじくような感じがすることに気付いた。そして良く自分の肌を観察する。昨日よりも肌がきめ細かいような感じがした。
「今日はお肌の調子が良いわね。水を弾いているわ」
シャルルは気のせいだと思い頭を洗う。それが終わると湯船につかる。そして息を吐く。心なしか体の調子が昨日よりもいいように感じる。今日の疲れが感じられない。そのことを疑問に思う。
「優斗は私に何をしたのかしら。いつもと体の感じが違うような気がする。気のせいかしら?」
そしていつものように長いこと湯船につかる。シャルルはRoomで初めてお風呂に入った時からお風呂の虜になっていた。湯船に1時間以上浸かるのはいつものことだった。でも今日は優斗が自分に何をしたのかが気になる。そのせいもあって30分ほどで湯船を出て脱衣所に向かう。
「早く風呂を上がって優斗をとっちめてやるんだから」
そして全身を拭いて魔道具のドライヤーで髪を乾かそうとドライヤーを手に持ち鏡を見た。そして鏡に映る見知らぬ女性を見て。
「えっ!? えーーーっ!?」
そして驚きの声を上げる。鏡に見たこともないような15,6歳に見える美しい少女が写っていた。鏡に手を伸ばすと鏡に映った少女も手を伸ばす。目の前の鑑に映っているのが自分だとシャルルは認識した。
「何が起こったのよ!!」
シャルルは思わずそう叫んでドライヤーを持ったまま脱衣所を出る。そして一目散に優斗の下に向かう。リビングでお茶を飲んでくつろいでいる優斗に走り寄る。
優斗は慌てて駆け寄ってくるシャルルに驚いた顔をする。優斗が驚くのも当然のことだった。
「優斗、これはどういうことよ。ちゃんと説明しなさい」
優斗はドライヤーを片手に迫りくるシャルルを見て目を大きく開いた。そしてシャルルから顔をそむける。優斗の顔は真っ赤に染まっていた。
「シャルルさん、落ち着いてください。とにかくあっちに行ってください。そして服を着て来て下さい。話はそれからです」
シャルルは優斗が何を言っているのか聞き取れないほど興奮していた。そして、そして、シャルルは優斗の言う事に耳を貸さない。
「何を言っているのよ。説明が先でしょ」
シャルルは自分の変わりように驚いていて優斗を責め立てる。シャルルはそれほど自分の変わりように驚いていた。自分が服を着てないなんて全く気が付いていない。
「シャルルさん、先ず自分を見てください。今あなたは何も着ていません。服を着てください」
「えっ!!」
今度はちゃんと優斗が何を言っているのかシャルルは理解した。そして顔を下に向ける。そこには何も着ていない自分の裸が見えた。そして昨日は確認できなかった大きくなった二つの膨らみが見えた。
「きゃーー!!」
シャルルは頭がら湯気が出るような感覚と羞恥心で顔が真っ赤になる。そして慌てて胸と下腹部を手で隠して振り返り風呂場に走り去った。
「あれほど驚くなんて思っていなかった。シャルルさんには悪いことをしたな」
優斗はそう呟いた。そして先ほどのシャルルの美しい裸体が頭に浮かんできた。そして頭を振るう。シャルルのあられもない姿を忘れようとする。でも初めて見た女性の裸はなかなか忘れることは出来なかった。
脱衣所に戻ったシャルルは鏡に映る美しい自分の顔を見てうっとりしていた。しばらく鏡を眺めた後に優斗をとっちめるために服を着て風呂場を後にした。
「まったく、酷い目にあったわ。優斗をとっちめてやらなくては……」
シャルルは恥ずかしさを通り越して優斗に怒りが湧いてくる。しかし鏡をもう一度見て今の自分の姿に見惚れる。女性のシャルルが見ても見惚れるほどシャルルは美しい少女になっていた。
「これが本当に私なの?」
シャルルは今自分に起っていることがなかなか信じられなかった。そして自分の頬を両手でパチンと叩く。すると痛みが感じられる。鏡に少女も同じ行動をしている。間違いなく鏡に映っているのが自分だと確信する。
「優斗はいったい自分に何をしたの? そして優斗は何者なの?」
シャルルは優斗が自分に何をしたのかと言うことと、優斗が何者なのか気になった。人の容姿や若返らせることが出来る人なんて聞いたことが無い。そういう御伽噺も伝説も知らない。優斗はシャルルからしたら未知の存在だった。
そして、落ち着いてくると急にシャルルは優斗に裸を見られたことを思い出して恥ずかしくなり顔を真っ赤に染めた。




