034 シャルルへの最後のお誘い
そして家に入ると直ぐにRoomの中に入る。シャルルの住むウクライーナ王国は大陸の南側にあり夏の3の月だというのにまだ暑い。Roomの中は常に23度に室温が保たれているのでRoomの中が過ごしやすいからだ。
「今日はアンナさんから貰った小麦粉が余っているからパンにしようと思っているけどそれでもいいかな?」
優斗が等価交換で野菜やお米を購入して出すので、いつもアンナさんから貰う野菜や小麦粉が余る様になっていた。そのためたまにお米ではなく小麦粉を利用したナンのようなパンやスパゲッティーなどを作って消費するようにしている。
「自分はご飯でもパンでも気にしませんよ」
「それじゃあパンにするね。おかずはコカトリスキングの肉とオークキングの肉が余っていたからコカトリスキングの肉のトマト煮込みにオークキングの肉を使ったホワイトシチューにするわ。楽しみにしていて」
優斗がシャルルにスキル料理Lv.10を内緒で与えてから彼女の料理の腕は上達していた。それに使う素材も貴族でも手の出ない高級な魔物の肉が使われている。優斗は毎日彼女が作る晩御飯を楽しみにしている。
「じゃあ俺は先に風呂に入ってきます。料理はお願いします」
「それは任せて。でもデザートはお願いね」
今でもシャルルは晩御飯の後にデザートを欲しがる。ついでに冷たいビールなども欲しがるので優斗はシャルルが遠慮しない様に前もってテーブルの上に出すようにしている。
「デザートはいつものように準備しますよ。お酒はビールで良いですか?」
「今日は暑かったから冷えたビールが良いわ」
「今日も楽しみにしていてください」
晩御飯の調理はシャルルに任せて優斗は先に風呂に入る。そしてレベルあげが終わったのでそろそろこの村を出て行こうと言うことをどのようにシャルルに伝えるか風呂につかりながら考えた。その時にシャルルにも一緒に来て欲しいと優斗は思っていた。
優斗がそんなことを考えていることはシャルルは知らない。いつものように晩御飯の料理を作る。ここ最近、自分が作る料理を優斗が美味しそうに食べるのを見ることがシャルルの楽しみになっていた。今日も優斗を喜ばそうとシャルルは腕を振るう。
優斗が風呂を出ると晩御飯の準備が整っていた。テーブルの上には料理が並んでいる。優斗はいつものようにいつの間にか決まった席に腰を下す。そして最近シャルルがお気に入りの冷えたビールを等価交換で得てそれをテーブルの上に出す。
するとシャルルもいつの間にか決まった席に腰を下ろす。そして瓶に入った冷えたビールをグラスに注ぐ。
「いただきます」
シャルルはそう言いビールを一気に飲む。優斗もそれに合わせるように「いただきます」と言いまず冷えたお茶を飲む。そして食事が始まる。この世界に来て優斗はシャルルの作るナンのようなパンをよく食べるようになった。
アンナから小麦粉を受け取るのでパンを食べないと小麦粉が余ってしまうからだ。それにこの村で取れる野菜もよく食べるようになった。シャルルはアンナから貰った野菜を使って優斗に覚えさせてもらったレシピを利用して新作料理を作って優斗に振舞っている。
そのおかげでアンナから貰った野菜も余すことなく料理に使っている。アンナから貰った野菜は中華料理になったりシチューになったりする。どれも美味しいので優斗はシャルルの作った料理に満足している。
今日の料理もパンにあってすごく美味しいと優斗は感じていた。シチューにはパンが合う。優斗はここでの生活でパンも良く食べるようになった。
「今日の料理も美味しいです」
「優斗に喜んでもらえて私は嬉しいわ」
シャルルはそう言ってほほ笑む。シャルルは誰かの為に料理を作るということの楽しさを知った。もう、一人だけで食事をするのは嫌だと思うようになっていた。
「本当にうれしそうですね」
「優斗に出会って誰かのために料理を作ることの楽しさをしったわ」
シャルルはそう言い美味しそうに料理を食べる優斗を見て幸せを感じていた。そしてまた喜んでもらえる料理を作ろうという気持ちになる。優斗もシャルルの作った料理がおいしくて食事が楽しい。まして誰かと会話しながら食べる食事がとても楽しいと感じていた。
「そう言ってもらえると俺も嬉しいです。シャルルさんの今日の収穫はどうでしたか?」
「今日は薬草もいっぱい取れたわ。それにゴブリンを16匹も狩ることが出来たわ。前までは5、6匹のグループで現れるゴブリンにたいして恐怖を感じていたけど最近怖くなくなったわ。それに多数を相手にする戦い方にも慣れてきたみたい。もうゴブリンの攻撃をまともに受けることはなくなったもの」
シャルルはそう言い誇らし気にする。一昔前のシャルルからは想像できないくらいゴブリンとの戦いになれているようだった。二カ月近く前にゴブリンに殺されそうになっていたとは思えない。それだけシャルルは強く成っていた。
「それは良かったですね。シャルルさんが無事にゴブリンを倒すことが出来るように俺も嬉しく思います」
「でも最近レベルが上がらないのよね。もうゴブリン相手だとレベルは上がらないと思うわ」
「シャルルさんはレベルを上げたいのですか?」
「両親が冒険者だったのよ。だから強くなって冒険者になりたいと小さい頃は思っていたの」
「そうなんですか。では、俺と一緒にレベル上げをしますか?」
「え!?」
突然の優斗の申し出にシャルルは驚く。いままで優斗からそのような誘いを受けたことが無かった。シャルルはどう答えようか悩み始める。
「実は今日、俺が目標にしていたレベルに到達しました。俺はこの村を近いうちに出て行こうと思っています。シャルルさん。前にシャルルさんに聞きましたよね。一緒にこの村を出てい行きませんか? 俺がシャルルさんのレベルアップに協力しますよ」
シャルルはとうとうこの時が来たと思った。でもまだ少し時間があると内心思っていた。優斗が目標としていたレベルがどれくらいか知らなかったがこれほど早く目標のレベルに達したことに驚いた。
以前から優斗のレベルの上がり方はおかしいとシャルルは思っていた。優斗が勇者だと思ったこともあるくらいだ。シャルルは優斗の申し出にどう答えようか迷った。そしてグラスにビールを注ぎ一気に飲み干す。そして自分の思ったことを正直に優斗に告げようと決意した。
シャルルはそう決意するまでに物凄く悩んだ。でももう時間はない。自分の気持ちに正直になろうと心に決めた。
優斗はシャルルがどのような判断をしても彼女の考えを尊重するつもりでいた。ダンテスは無理にでもシャルルを優斗に連れて行って欲しいようだが、それはダンテスの願いであってシャルルの願いではない。
優斗が優先しているのはシャルルの願いだけだ。いちおう覚悟してシャルルの言葉を待つ。




