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033 進化

優斗はシャルルと朝に分かれた森の中に転移した。そして自分のステータスを確認した。


― - - - - - - - - - -


名前:九条優斗

種族:ハイヒューマン

性別: 男

年齢:16歳


― - - - - - - - - - -


エンブリオの実を食べたことで種族がハイヒューマンになっていることが確認できた。これで寿命が500年と伸びたことになる。しかし本当はエンブリオの実を食べなくても優斗には寿命を延ばす方法があった。


しかしその方法を使うと優斗の子供たちにも同じ方法を用いてよいのか迷うところがあった。子供を同じ方法で寿命を延ばして孫やその孫の子供にその方法を用いることが躊躇われた。


しかし子供やその番までもがハイヒューマンやハイビーストと言った長寿種になるのならその方が良いと優斗は思った。なぜなら優斗の長寿になる方法と神聖魔法Lv.10のどんな病気でも直せる『パーフェクトトリメント』を使うとほぼ永遠に生きることが出来るようになるからだった。


優斗は自分と自分の伴侶はその方法を使って長生きしようと考えていたが子供たちやその子孫まで同じ方法で長生きさせていいものか悩むところだった。ソラからエンブリオの実を貰ったことでその悩みは消えた。


「これで、悩みは消えたな。俺だけ長生きするのは気が引けたけど、子供たちが長寿種になるのは悪くない。ソラに会えたのも良かった。いい従者に恵まれたな」


優斗はダンジョンを思わず攻略してしまったが結果的に優斗にとって大きくプラスに働いた。今ではダンジョンをもっと早く攻略していれば良かったと思っているくらいだ。


(叡智もそう思うだろ。ソラはいい従者になると思うよな)


(はい、私もそう思います。この世界でマスターのお世話を任せるのになんの心配もいりません。マスターに従順なところが良いと思います)


(叡智にも体があれば良かったのにな)


(私はスキルなので体を欲しいとは思いません。今のままで十分です。その方がマスターと常に一緒にいることが出来ますから)


叡智が言っていることは本心だった。叡智はスキルなので体を持つことが煩わしいと思っていた。お腹もすかないし眠る必要もない。そんな状態で主人である優斗と24時間共にいられることが叡智にとっての幸せだった。


「レベル上げも終わったし、今日の夜に日本に帰って赤城たちに復讐が出来るぞ」


優斗はやっと日本に帰ることが出来ると喜んだ。そして優斗はシャルルを迎えに来たことを思い出した。


優斗はいつものようにマップでシャルルを探す。直ぐにシャルルを見つけることが出来た。そして、この二カ月近く続けてきたようにシャルルのところに行く。10mくらい近づいたところでシャルルが優斗の存在に気づき振り向く。


シャルルはこの二カ月ゴブリンと戦う為に気配探知のスキルを獲得していた。そのスキルで優斗が近づいてきたことが分かったのだ。シャルルも少しは成長している。優斗はシャルルの成長を喜んでいた。


「シャルルさん、そろそろ帰りましょう」


「そうね。そろそろ帰る時間ね。優斗はいつも同じような時間に迎えに来るわね。優斗の時間に関する感覚は正確ね」


優斗は視界の端に今いる位置の時間が表示されているのでいつもその時間に合わせて行動している。そのため時間に関しては誰よりも正確さを持っていた。この世界の住人であるシャルルには同じ機能が無いようだ。優斗はそのことだけが不思議だった。


「体内時計が正確なんですよ。さあ村に帰りましょう」


「わかったわ。いつものようにお願い」


優斗はいつも転移でシャルルと一緒に村に帰るのでシャルルもそのことを普通に思っていた。今ではシャルルは転移の魔法ぐらいでは驚かない。いつもそれ以上に優斗が凄いことをやらかすという理由もある。


「それじゃあ転移します」


優斗がそう言うとシャルルは体が浮くような感覚に襲われる。そして次の瞬間には村長の家の前にいた。


「いつも思うけど転移の魔法は便利ね。前は森まで1時間もかけて歩いていたのよ」


「俺といるときはいつでも頼って下さい。好きな時に行ったことがあるところならいつでも転移できますから」


「優斗が王都のような都会に行ったことがあるのなら連れて行って欲しいのだけど……」


「すみません。都会には縁が無かったので連れて行くことは出来ません」


「それは残念」


そう言いシャルルは肩を落とす。この世界の平民は冒険者とかにならない限り生まれた村を離れると言うことはない。一生生まれた村を出たことが無いものが殆どだ。


シャルルは冒険者だった両親から村以外のいろいろな土地の話を聞いていたのでいつか自分も他の土地を見てみたいと思っていた。


もし、シャルルの両親が健在ならシャルルは薬草集めなどをせずに父親に剣術を習って冒険者になっていただろう。そして村を出ていろいろな土地を回って旅をしていたに違いない。


しかし、25歳になるまでその機会が訪れることは無かった。機会があったとしても貧乏なので旅をするのに必要な物をそろえることなんてできなかった。シャルルはそのことを今更残念に思った。


そして気を取り直して村長の家のドアをノックする。するとドアが開きいつものようにアンナが顔を出した。


「今日もお疲れ。薬草はいっぱいとれたかい?」


「はい。今日も絶好調でした。ゴブリンもいつもより多く倒せましたよ」


シャルルはそう言い背嚢ごとアンナにわたす。アンナは背嚢の中を覗いてシャルルの成果を確認する。


「少し待っていな」


アンナは家に入って暫く二人を待たせると野菜と小麦粉を持って現れた。


「これは今日の分ね」


「有難うございます。頂きます」


「遠慮しなくてもいいのよ。最近はゴブリンの内臓もあるから妥当な報酬よ」


優斗が来る以前までは村長たちはシャルルが持ってくる薬草の報酬以上の野菜や小麦粉に服を与えていた。その頃のことをシャルルは思い出してアンナやダンテスに感謝する。


「そう言ってもらえると助かります。それじゃあ失礼します」


「ああ、また明日も宜しく」


「はい」


アンナと別れて優斗とシャルルは家に戻る。この二カ月いつもと変わらない行動を二人はしている。優斗はこの世界の人たちは生活するのに精いっぱいで遊ぶ余裕もないんだなと感じていた。


まあ、時間があっても村の外に出て行くのは大変なことだ。魔物がいるし盗賊もいる。簡単には村の外に出ることは出来ない。優斗はまだそのことに気づいていない。

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