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002 プロローグ②

優斗は暫く地面に大の字で寝て涙を流していた。そして体から痛みが引くと体育館の壁に背中を預けて地面に座る。


そして空を見上げた。


「なんでいつも俺だけこういう仕打ちを受けなければいけないんだ? 誰か助けてくれよ」


優斗がそう叫んでも誰も体育館裏にはやってこない、優斗は途方に暮れて地面に目を落とす。目からあふれた涙が頬から顎を伝い地面へと流れ落ちる。


優斗は暫く地面を眺めて自分の不幸を嘆いていた。そして、急に眠気が襲い意識を手放した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そんな優斗のことを見ている者がいた。それは天界にいる神だった。優斗は、かつて神が人間になりすまして地上で生活していた時に愛し合った女性との間にできた子供の子孫だった。


そのことが邪神にばれて邪神のたくらみにより不幸を背負わされたのが優斗だった。そのことを神はようやく突き止めた。


「酷いことになっているのー。しかし、地上に儂は直接干渉できぬ――」


邪神の嫌がらせが行われていたことを知った神はどうにか優斗を救いたいと思い考えを巡らせた。


「意識だけでも天界に呼んでみるかの」


そして、神は神力を使って優斗を眠らせて意識だけを天界に呼びよせた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



優斗が目を覚ますと洋風の庭園の中にある東屋にある椅子の上に座っていた。前の方を見るとテーブルを挟んで反対側に白い毛を長く伸ばし白い髭を伸ばしているお爺さんが座っていた。


そのお爺さんの後ろには後光がさしている。優斗はこのお爺さんが人ではないと直ぐに感じた。そして、ここはあの世で自分は虐めのケガのせいで死んだのではないかと思った。


「ここはあの世ですか? 俺は死んだのでしょうか?」


「ふぉふぉふぉ、お前は死んではいない。ここは天界ではあるがの。儂がお主の意識だけを天界に招いたのじゃ」


「どうして俺を……?」


「話せば長くなるからの。手短に説明しよう。先ずは儂の正体じゃがの。儂は神じゃ。神と言っても地球の神は多くいる。その中でも儂は原初の神と呼ばれておる。地球を作ったのは儂じゃ」


優斗は目の前のお爺さんが地球を作った神と聞いて驚く。優斗は全く神を信じていない無神論者だった。しかし、この状況を見て目の前のお爺さんが神様であることを信じる他はない。


「お爺さんが神様だということは理解しました。そのことと俺がここに呼ばれた理由は関係があるのですか?」


「そのことをこれから説明しようとしているところじゃ。お主は儂が人として地上に降りたときに所帯を持った時にできた子の子孫なのじゃ」


「えっ!?」


無神論者だった優斗が神の子孫だと言われて優斗は驚く。こんなことなら神を信じて助けを求めるべきだったと思った。


「驚くのも無理はないことじゃな。しかし神の子孫は地上に多くいるのじゃぞ。まあ、儂くらいになると地上にいる子孫はお主の家族くらいなものだがの」


「俺のご先祖様が神様なのですか?」


「そういうことじゃ。そのことが邪神にばれてしまっての。その邪神がお主に悪さをしたのじゃ。本来なら儂の子孫なら儂の加護が働いて幸せになるはずなのじゃが、お主は運悪く邪神に運の値をマイナスにされて不幸な体質になってしまったのじゃ」


優斗は神様の説明を聞いて今まで自分が不幸な人生を送ってきたのが邪神の仕業だと分かって怒りが湧いてきた。そして、その邪神が許せないという感情が湧いてくる。


「その邪神はどうなったのですか?」


「あいつは儂自ら出向いて捕縛しておるよ。今は常闇の次元に封印しておる。これ以上悪事は出来ないじゃろう。安心すると良い」


「安心はできましたが、今までの俺の人生が不幸だったことはどうなるのですか?」


「そのことなのだがの。儂は神じゃから地上に直接影響を与えるようなことは出来ない。今までお主が不幸になっていたことは儂は謝るしかない。儂がお主のことに気づいたのが邪神を捕縛した後だったのじゃ。今までお主のことを知らなかった儂にも責任がある。赦してくれ」


神様は頭を下げて優斗に赦しを請う。優斗は神様を責めても仕方がないと思い、今までのことは諦めることにした。どうせ過ぎたことだ今からこれまで味わってきた不幸な人生を覆すことなんて出来ないからだ。


「謝罪は受け入れます。ただ、俺はこれから幸せになりますか?」


「今のままでは無理じゃな。儂でも邪神がお主に与えた運の値をプラスにすることは出来ない」


優斗は神様の言ったことを聞いてがっかりする。そして悲しくて涙が出そうになる。それほど優斗は追い詰められていた。


「……そうですか」


「そう慌てるな。運をプラスに変える神器がある。それをお前にやろう」


「本当ですか?」


「ああ、この神器はニーベルリングと言う。ニーベルリングには無限の魔力と異世界へのドアがしまわれている。それとゴッドスキルが三つ宿してある。これは儂が神力を多く注いで作った神器じゃ。ただの神器ではないぞ。これを装着すればお主自身の力で幸福になることが出来るじゃろう」


神様はそう言って腕輪を優斗に差し出した。優斗はその腕輪を受け取ると腕輪に付与されている三つのゴッドスキルの使い方が頭に浮かんできた。そしてどうやったら自分が幸せになれるか理解した。


「有難うございます。このニーベルリングがあれば俺は自分の力で幸せになれると思います」


「そう言ってもらえると嬉しいのー。そろそろ時間じゃ。意識を体に戻すぞ」


「はい」


そして優斗の意識が薄れていく。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



次に優斗が目を覚ました時は体育館裏だった。そこで優斗は大の字になって地面の上にあおむけに倒れていた。優斗は自分の右手首に嵌っているニーベルリングに気が付いた。


「夢じゃなかったんだな」


優斗は顔の怪我は目立つが気にしないで家へ急ぐ。そんな優斗を目にした学校の生徒は優斗のことを誰も気にも留めない。学校の生徒にしたら優斗が虐められて怪我を負っている姿を見るのは珍しいことではない。もうその光景を学生は見慣れている。


学校で優斗の醜さは噂になっているし誰もが優斗が虐められていることを知っていて放置していた。優斗は電車に乗り家に帰る。流石に電車の乗客は怪我をしている優斗に憐れみの表情を浮かべていた。


しかし中には優斗の醜い顔を見て笑っている者もいる。家にたどり着き優斗は家の中に入る。リビングにたどり着くとそこには妹の美香がソファーに座ってテレビを見ていた。誰かがリビングに入ってきたことに気付いた美香が振り返る。


そして優斗と視線が合う。いつもなら美香はあからさまに汚物でも見たかのように顔を歪ませるのだが今日は違った。優斗を哀れむような目で見てきて申し訳なさそうな顔をする。


そして、いつもなら優斗に「汚い顔を見せないで、早くあっちに行ってよ」と言うような罵詈雑言を浴びせてくるが美香が今日は様子が違う。優斗のことを心配していたかのような言葉をかけてきた。


「お兄ちゃん。今日も遅かったね」


「いろいろ、あったんだよ」


優斗はいつもと違う対応をする美香に驚くがニーベルリングで運の値が上がって不幸体質から脱却できたのだろうと思うことにした。優斗は直ぐに二階にある自分の部屋に向かう。いつもとは違う美香の対応に嬉しくなる。そして、優斗は腕に嵌っているニーベルリングを見て笑顔になる。


「俺はこれから変わる」


優斗はそう呟くと靴を持って台所に行き2Lのミネラルウォーターと菓子パン三つを持って自分の部屋に入った。


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