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026 シャルルの戦い

シャルルは冒険者だった両親と一緒に森に入り薬草や野草の採取の仕方を学んできた。薬草を採取しているときは両親との幸せだったころのことを思い出し嬉しくなる。そうやって悩みを発散させる。


薬草を採取しているときに奥の方から魔物の声が聞こえてきた。村人たちのことでイライラした気持ちを持っているシャルルの前に現れた魔物は彼女の良い鬱憤のはけ口になってしまった。


「グギャ」

「グギャギャギャギャ」


声からゴブリンだと分かった。優斗に会う以前ならゴブリンの鳴き声が聞こえたり魔物の気配がしたら逃げていたシャルルだが今は優斗から借りている自動防御と身体強化が付与してある腕輪があるので逃げたりしない。


シャルルは森の木々に隠れながらゴブリンに近付いていく。ゴブリンの内臓は滋養強壮の薬の材料として使われている。高くはないが村長に渡せば行商人に売ってくる。それでシャルルは村長から野菜や小麦粉を得ることが出来る。


シャルルが木に隠れてゴブリンを見ると5匹のゴブリンがいた。ゴブリンたちは手に棍棒を持っている。獲物を探しているのだろう。シャルルは以前つかまって殺されそうになった時のことを思い出し身震いする。


そして右腕の手首に嵌っている腕輪に左手を当てる。


「だいじょうぶ。この腕輪が守ってくれる」


そう呟き気合いを入れる。優斗から預かっている剣を抜きゴブリンたちに斬り掛かる。ゴブリンたちは直ぐにシャルルに気付いて横一列になってシャルルを待ち構える。シャルルは自動防御で守られることは知っているがゴブリンに囲まれると恐怖を感じるので右端のゴブリンめがけて走る。


ゴブリンが剣の間合いに入ると素早く剣を袈裟切りにする。ゴブリンはシャルルの剣の素振りの速さに驚くがどうにか棍棒で剣を受け止めることが出来た。そのことに安心して次の動作が遅れてしまう。シャルルは下段から剣を切り上げてゴブリンの股を裂く。


「グギャギャ―――!!」


斬られた痛さでゴブリンが叫び転げまわる。他のゴブリンはシャルルを囲むような動きをしながら棍棒を振り下ろす。神剣術Lv.10をシャルルは持っているしステータスはシャルルの方がゴブリンより高いがゴブリン4体の同時攻撃は避けることが出来ない。


二匹の攻撃を武技見切りでかわすが残り二匹の攻撃を受けてしまった。ゴブリンの攻撃の反動で体が右に流れてしまう。それでも自動防御のおかげでシャルル怪我一つ負っていない。シャルルは直ぐに体勢を立て直して突きを放つ。


剣はゴブリンの眉間に突き刺さった。剣が突き刺さったゴブリンは後ろに倒れて動かない。残り三匹に囲まれない様にシャルルはゴブリンたちの間を走り抜ける。いい感じでゴブリンと距離を取ることが出来た。


シャルルはまたゴブリンに向かって走り出す。今度はゴブリンも用心していて棍棒を構えた。シャルルは左端のゴブリンの棍棒に向かって剣を振りぬく。ゴブリンは棍棒が手から離れない様に強く握る。その時に腕が左にずれる。シャルルは上段に構えた剣をゴブリンに向かって振り下ろした。


ゴブリンは袈裟切りに斬られて倒れる。二匹のゴブリンがシャルルに攻撃してくるが二匹程度の攻撃なら神剣術Lv.10の武技見切りで容易く躱すことが出来た。シャルルは神剣術Lv.10を自分が持っていることを知らない。


優斗が勝手に与えたからだ。それでも自然と武技見切りが使えている。シャルルは体を捻り棍棒を躱すとゴブリンの腕を切り落とした。


「グギャー!!」


ゴブリンは無くなった手首を見つめて痛さで雄叫びを上げる。シャルルはその瞬間を逃がさない剣を横に振るう。するとゴブリンの首が地面に転がった。シャルルはなぜぎりぎりでゴブリンの攻撃がかわせるのか分からない。


それを知るために最後に残ったゴブリンでシャルルは見切りの練習をする。ゴブリンが振り下ろす棍棒をよく見てぎりぎりでかわす。自分で意識しなくてもどのように体を動かせばいいか何となくわかる。


右に左に体を捻りゴブリンの攻撃をかわす。そして見切りが体になじんだように感じてゴブリンに止めを刺す。ゴブリン首が刎ね飛ばされた。最後に股を斬られて転がって騒いでいるゴブリンに剣を突き刺し止めをさす。


ゴブリンをナイフで解体して内臓を取り出す。それを木の葉で包み背嚢へ入れる。そしてまた地面を見渡し薬草を探す。


今日も沢山薬草が取れた。優斗から貰った腕輪が守ってくれるのでシャルルは以前より薬草が取れる森の中まで入っている。それにゴブリンを9匹も狩ることが出来たので上出来だった。そう思った時に後ろからシャルルを呼ぶ声が聞こえてきた。


優斗がシャルルを迎えに来たのだ。


シャルルは優斗の顔を見て何か良いことがあったのだと思った。優斗の顔は一目でわかるくらいにやけていた。


「優斗、なにか良いことでもあったの?」


「聞いてください。コカトリスキングを狩ったんです。この前のブラックコカトリスでもあの美味しさでしょ。早く食べたくてウズウズしているんです」


シャルルもブラックコカトリスを食べたときに美味しくて驚いたことがある。シャルルの住む村では鶏のような家畜が飼われていないので鶏肉は猟師が狩ってきた野生の鳥の肉になる。鳥はそう簡単に猟師でも狩れないので鶏肉をシャルルは食べたことが無かった。


「本当にコカトリスキングを狩ってきたの? ブラックコカトリスでもすごく強い魔物だと聞いているわよ。コカトリスと目が合うと石にされるんでしょ。大丈夫だったの?」


まあ優斗が無事に戻ってきているのでケガなどをしている様子が無いのはシャルルにも分かっている。それでも優斗の身に何か良くないことが起ると考えると居ても立っても居られなくなる自分がいるのにシャルルは気付いた。それくらい優斗のことを身近に感じていると言うことだ。


「大丈夫ですよ。ちゃんと安全マージンは考えて魔物狩りをしています。少なくともコカトリスキングはどのようにして自分が死んだか分からないくらいの速さで俺に殺されたと思いますよ」


今の優斗は十分に安全マージンを取って魔物狩りをしている。それに、自動防御の腕輪があるので格上の魔物を狩るのに無理が効く。そう簡単に魔物にはやられない。


「でましたぁ。優斗のとんでも発言。本当に優斗は常識外れだと思うわよ。あなたみたいに魔物を一人で簡単に狩る人なんていないと思うわ。冒険者だってパーティーを組んで魔物と戦っているんだからね。あまり自分の力に慢心しないようにね」


シャルルの言っていることは正しい。普通、ソロで格上の魔物に挑むような冒険者はいない。ましてや優斗は冒険者じゃないと自分で言っている。彼の行動はおかしいとシャルルは思っている。しかし、一人で物凄く強い魔物を狩ってくるので尊敬はしている。


「分かりました。以後気をつけます」


「ほんとうかなぁー?」


「本当ですよ。いつも安全第一に行動しているので問題ありません」


「そこまで言うなら信じるわ。この前は唐揚げだったから今回はチキン南蛮にしようかな?」


コカトリスの鶏肉の時は照り焼きチキンだった。ブラックコカトリスの時は唐揚げとお肉の美味しさを生かした蒸し焼きチキンだった。シャルルは今回は中華で攻めようと思った。


「それは楽しみです。さあ帰りましょう」


コカトリスキングの肉は柔らかくとてもジューシーで美味しい肉だった。優斗は等価交換した肉以外に何匹かストックしようと心に決めたのだった。


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