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023 シャルルとの一時

ダンテスの家を出てシャルルの家に向かいながら優斗はシャルルのことを考えていた。シャルルは優斗が物心ついてから今までで唯一まともに話のできる存在だ。日本にいるときは優斗の家族でさえ彼の存在が無かったかのように優斗を無視している。


ましてや学校などでは友達などできずに虐められるようになった。虐めをしてくるもの以外の者も優斗のことを無視していた。そういうことを思えばシャルルは優斗にとって特別な存在ともいえた。


ダンテスからシャルルの現状を聞いて彼女の今の状況をどうにかしたいと素直に思った。シャルルには幸せになってもらいたいという感情が優斗に湧き上がってきたのは事実だ。


ダンテスが言うように優斗と共にこの村を出たほうが今のシャルルより幸せになると優斗も思うようになった。それに優斗にはシャルルを幸せにする力があった。優斗はそのことを理解している。


(シャルルにこの村を出ていくときに一緒についてこないかと聞いてみよう)


優斗はそう決心した。



◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



シャルルの家に着くとシャルルの姿はない。そこにはRoomのドアがあるだけだ。優斗はRoomのドアを開けて中に入る。すると美味しそうな匂いがRoom内に充満していた。

ダイニングに着くとテーブルの上には料理が並べられていた。


「今からステーキを焼くね」


シャルルは優斗が帰ってくるまでステーキを焼かないで待っていた。そして優斗がダイニングに現れたのを見てキッチンに向かった。暫くしてステーキをシャルルが持ってきた。


「美味しそうですね」


「そうだね。ステーキを焼くときに肉汁が溢れてくるの。美味しいに決まっているわよね。アンナさんから貰った野菜はミネストローネにしてみたわ。レシピとは野菜の種類が違うけど工夫してみたのよ。冷蔵庫にトマトがあったから丁度良かったの」


「工夫は大事ですよ。俺の故郷にある野菜とこの国の野菜はぜんぜん違うんですから。昨日のポトフも美味しかったです」


「優斗にいろいろな料理のレシピを教えてもらったから作れたのよ。今では凄く料理も得意になったみたいだわ」


優斗がレシピを教えただけじゃない。シャルルの料理のレベルは優斗が10まで上げてある。シャルルの料理の技術が上がったのはその恩恵が大きい。シャルルはステーキののった皿をテーブルの上に置くとミネストローネの入った皿を持ってきた。そして優斗の向かいに座る。


「優斗、ダンテスさんの話ってどんなことだったの?」


「そんなたいしたことじゃないですよ。俺が貴族の子供かとか聞かれたり、あとどれくらい村に滞在するのか聞かれたりしました」


優斗はダンテスがシャルルの両親の話や彼女を一緒に連れていってほしいと頼まれたことは話さないことにした。シャルルが優斗に両親の話をしたときは真剣に受け止めて話を聞いてあげるつもりでいた。


「確かに優斗の着ている服はただの平民に見えないわよね。良い生地が使われているし仕立ても綺麗だし……」


シャルルはゴブリンに襲われていた時に優斗に助けてもらったので、その時は考える余裕が無かったから優斗の格好を見たときは何も思わなかった。しかし気持ちが落ち着いて優斗を見たときに品の良さそうな綺麗な顔立ちや丁寧な話し方や高そうな服を着ていることに気付き、優斗はどこかの貴族の御曹司かと思っていた。


「家が裕福なだけの平民ですよ。あまり気にしないでください」


「それで優斗はいつまでこの村で過ごすと答えたの?」


「自分の目標としているレベルまで到達するまで村にいますと答えました。今のレベルの上がり方だと二カ月くらいだと思います」


シャルルは優斗の話を聞いて悲しそうな顔をする。


「料理が冷めてしまいますよ。食べましょう」


「「頂きます」」


二人は早速キングミノタウロスのステーキをナイフで一口大に切り分けて和風ガーリックソースをつけて口に運ぶ。


「美味しいわね。こんなに美味しいのを食べたのは初めてだわ。この前食べたミノタウロスやキングオークとも全然違うし……。味が濃厚でこの和風ガーリックソースとよく合っている」


「美味しいですね。俺も生まれてからこれまで食べた肉でこの肉が一番おいしいです。シャルルさんが言うように肉の味が美味しすぎるのでさっぱりした和風のソースが一番合っているような気がします」


優斗もシャルルもキングミノタウロスのステーキを食べて顔がほころぶ。この肉を食べることができるのはキングミノタウロスを狩ることができるSランクの冒険者パーティーかお金持ちや上位貴族くらいの者たちくらいだ。


高いお金を払わないと手に入らない肉なので一般庶民が食べるような肉ではない。ただのミノタウロスですら一般庶民が口にできる肉じゃない。その肉の味は高級和牛の肉よりもさらに美味しい肉だった。


「こんなに美味しい肉を村の人たちが食べることができないのに私なんかが食べて良いのかなぁ?」


シャルルは今まで村で一番貧乏な生活をしていた自分がこんなに美味しい料理を食べていいのだろうかと卑屈になっていた。


「シャルルさん、そんなに自分を卑下しないでください。この肉を食べる権利は俺の世話をしてくれているシャルルさんにあるんです。他の人にその権利はありません。村長にも世話になっているので村長さんたちも特別です。だからもっと喜んで食べてください」


「そうだよね。優斗、ありがとう。もっと楽しんで食べるわね」


そう言いシャルルはキングミノタウルスのステーキをもう一口食べる。


「やっぱり美味しいわよ。優斗、ありがとう」


「どういたしまして。さあ、お酒もどうぞ」


優斗は等価交換で得た50万ポイント(日本円で50万)もした赤ワインをワイングラスと一緒に取り出す。そして魔法で赤ワインを冷やす。栓抜きでコルクを抜くとワイングラスにワインを注ぐ。そしてシャルルに差し出した。その後自分の分もグラスに注ぐ。そして二人はワインを飲む。


ワインを飲んだことがない二人はワインの色を楽しんだり匂いを楽しんだりすることはない。シャルルはワイングラスに入っている赤ワインをエールを飲むように一気に飲み干す。優斗は酒自体をこの異世界に来て初めて飲み始めたのでチビチビ飲んでいる。


二人の飲み方は対照的だ。優斗はシャルルの空いたワイングラスに赤ワインを注ぐ。二人は赤ワインを飲みながらステーキをまた食べ始める。


「ステーキには赤ワインが合うと聞いたことがあるので赤ワインを選んでみましたが、どうしてステーキに赤ワインが合うのか分かりませんね」


優斗は日本にいるときにテレビの料理番組などで得た知識でステーキには赤ワインを選ぶものだと思っていた。でも酒の味もろくに分からない優斗にはなぜステーキに赤ワインなのか理解できなかった。


「そういう理由で赤ワインを出したのね。私も酒に詳しくないからこのステーキに赤ワインが合うか分からないわ。でもこの酒が美味しい酒だということは分かるわよ。こんな酒を呑んでいると雑な味のエールを飲むことができなくなりそうよ」


「俺はエールを飲んだことがないので分かりませんが、俺といる間は美味しい酒を提供しますよ。明日はエールと似たビールという酒を出してみましょうか」


「それも飲んでみたい。よろしく頼むわ」


「忘れているかもしれませんが今日もデザートがありますよ」


優斗は今日出すデザートを何にしようかと昼間の家に考えていた。今まで食べたことのないものを優斗も食べたかったからだ。叡智と相談してルージュベリーのアントルメグラッセというアイスケーキにした。叡智が見せてくれた見た目で決めた。


ルージュバリーのアントルメグラッセというアイスケーキは、イチゴと生クリームを挟んだスポンジケーキの上にアイスクリームとブルーベリーとラズベリーをトッピングした、見た目でも美味しそうなケーキだ。それと一番聞いたことのあるアールグレイという紅茶を選んだ。

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