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020 異世界一週間め②

転移で村長であるダンテスの家の前に着くとシャルルがドアをノックする。するといつものようにダンテスの妻であるアンナがドアから出てきた。だいたい村長の家に行くとアンナさんが出てくる。


「今日もお疲れさん」


「「お疲れ様です」」


「今日も沢山薬草とゴブリンの内臓を取ってきたのかい?」


最近、シャルルがゴブリンの内臓や魔石を持ってくるのにアンナは驚いていた。今まではゴブリンからは逃げるようにしていたシャルルが自ら望んでゴブリンと戦っているのだ。アンナは優斗が陰でシャルルを支えていると睨んでいた。


「はい、沢山取ってきました」


シャルルは嬉しそうに答える。以前より森の奥に行くようになって薬草を取ってくる量が増えている。シャルルは籠いっぱいの薬草とゴブリンの内臓に魔石をアンナに手渡す。


「すごいね。以前の倍の薬草を採取してきているね。それに昨日よりもゴブリンを多く狩ったんだね」


アンナに褒められてシャルルは嬉しそうにこたえる。シャルルはこれまで薬草だけで食べ物を分けてくれる村長たちに感謝していた。今ではゴブリンの内臓や魔石も渡せるので嬉しく思っている。


「レベルも上がっているので以前よりもゴブリンを簡単に狩ることができるようになりました」


アンナはシャルルがレベルを上げるほどゴブリンを狩っているということに驚くが顔には出さない。シャルルの後ろで優斗は余裕の表情をしている。いかにもシャルルのレベルが上がるのが当たり前だという顔だ。


「シャルルはゴブリンとも戦えるようになったんだね」


「はい、優斗に剣を借りています。それだけじゃなく身を守る魔道具も貸してもらっています」


やはりシャルルがゴブリンを倒すくらい強くなっているのには、優斗が関与していることが分かった。いったいどのような魔道具をシャルルに与えたのかアンナは気になる。


「どんな魔道具を借りたんだい?」


「魔物の攻撃から身を守る魔道具です。結界のようなものが出るんですよ」


シャルルから出た言葉はとんでもないものだった。結界を張る魔道具なんて安くても金貨20枚はする品物だ。アンナはダンテスと一緒にあっちこっちに若い頃旅をしていたのでその魔道具の価値が分かる。


アンナとダンテスも安全に旅をするためにその魔道具を求めたことがあった。しかしアンナたちが求めていた魔道具は四隅に結界石を押して結界を張るタイプだ。決して自動防御ができる魔道具ではない。


自動防御の魔道具なんて金貨100枚はするだろう。ただ、その腕輪には10万の魔力が込められていて身体強化の付与までついている。その価値が金貨100枚で済むはずがない。そのことをアンナも作った優斗自身も知らない。


「それは良かった。これからも頑張るんだよ。野菜と小麦粉を持ってくるから少し待っていておくれ」


ゴブリンの内臓は薬に使われるので多少高く売れる。シャルルは最近多めに野菜や小麦粉が貰えるようになった。


「はい。これからも頑張ります」


暫く待つと野菜と小麦粉を抱えたダンテスが現れた。いつもならアンナが対応するのに今日は珍しくダンテスが出てきた。シャルルはなにか急用でもできたのかと思った。


「ダンテスさんお久しぶりです」


「お久しぶりですね。お元気でしたか?」


「おうよ、俺は歳をとっているが元気だけが取り柄なんだぞ。シャルルも優斗も久しぶり。元気にしていたか?」


「はい元気にしています」


「私も元気ですよ」


ダンテスは60代にもかかわらず筋骨隆々としていてたくましく思える。若い頃は魔物とも戦って村を守っていたという。


「それはよかった。これは今日の分の報酬だ。もっていけ」


「ありがとうございます」


そう言うとシャルルはダンテスから野菜と小麦粉を受け取る。そして優斗は前に出て準備してあったキングミノタウロスの肉の塊5kgと赤ワインをダンテスに差し出す。


「今日狩ってきたキングミノタウロスの肉と俺の故郷で作られた赤ワインです。どうぞ貰ってください」


ダンテスはキングミノタウロスという言葉に驚いた顔をする。そして優斗が差し出したキングミノタウロスの肉の塊をまじまじと見る。そして美味しそうに思い生唾を飲む。そして優斗に目を向ける。


「……優斗、お前キングミノタウロスを狩ったのか?」


「はい。キングミノタウロスがいたので狩ってきました」


優斗が躊躇いなく答えるとダンテスが優斗を見る目が変わる。普通、キングミノタウロスなんて普通の冒険者が狩るような魔物じゃない。S級の冒険者なら一人で狩れると思うがA級なら数人がかりで仕留める魔物だ。


それを怪我一つなく倒せる優斗はS級以上の冒険者と遜色のない強さを有しているということになる。ダンテスの目が光る。優斗はダンテスが何を考えているかなんて知らない。


「おいおい、簡単に言ってくれるな。この前のオークキングやミノタウロスの時も驚いたが……。今日はそれ以上の驚きだぞ。キングミノタウロスなんて普段耳にすることが無い魔物だ。名前からしてミノタウロスよりもかなり強い魔物でA級以上の魔物に違いないぞ。その魔物を一人で倒すお前は何者なんだよ」


「何者でもありませんよ。ただの旅人です。でも、キングミノタウロスには苦戦しましたがなんとか狩ることができました」


本当は剣を一振りしただけでキングミノタウロスの首を刎ね飛ばしたが、シャルルほど気を許していないので優斗はダンテスには嘘を言う。あまり自分の情報を他人に知られるのは良くないと思ったからだ。優斗はまだ心から人を信じるということができないでいる。


「それでも凄いじゃないか? お前には驚かされてばかりだ。これなら……」


ダンテスは優斗からキングミノタウロスの肉と赤ワインを受け取り暫く考え込んで優斗と目を合わせる。


「優斗お前に話がある。今から時間はあるか?」


「大丈夫ですよ。シャルルも一緒ですか?」


「シャルルはいい。優斗だけだ。中に入ってくれ」


ダンテスは真剣な表情になり優斗を誘う。優斗はダンテスの雰囲気が変わったのを見逃さなかった。それだけこの一週間での魔物との戦いで感覚が研ぎ澄まされてきたということだ。


「シャルルさん、そういうことなので先に家に帰りましょう」


「わかった。晩御飯を準備しながら待っているよ」


「ダンテスさん。シャルルの家に帰ってからまた来ます」


「ああ、待っているよ」


優斗とシャルルは家に戻った。そして優斗はRoomのドアを出して等価交換で得たスイートコーンの缶詰とじゃがいもとほうれん草をシャルルに手渡す。


「俺は村長の家に行ってきます」


「行ってらっしゃい」


そしてダンテスの家に向かった。


ダンテスの家のドアをノックすると直ぐにダンテスが現れた。


ダンテスは優斗が来るのを首を長くして待っていた。彼は決意した表情をして優斗を迎えた。

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