014 Roomと優斗の料理
優斗とシャルルは二人でRoom内を調査する。まず各部屋の扉を開けて中を見る。部屋にはベッドやクローゼットが揃っていた。なにも準備する必要はない。
「シャルルさん、ドアはそれぞれ部屋になっていますから好きな部屋を使うと良いですよ。部屋には机と椅子にベッドとクローゼットが備え付けられていますから、すきなように使ってください」
シャルルが部屋のドアを適当に選んで開けると20畳ほどの部屋になっていて高級そうなダブルベッドがあった。シャルルには机と椅子も高そうに思えた。
「ベッドには常にきれいにする魔法がかかっています。だから汚れることはないですよ。安心して使ってください」
「優斗さんにはおどろかされてばかりですね。私はこの部屋を使わせてもらいます」
優斗は風呂場に行きスキル創造で日本で使っていたのと同じシャンプーとリンスにボディーソープを作り出した。バスタオルやフェイスタオルもスキル創造で作ることができた。風呂の使い方は地球の風呂と同じようになっている。トイレにはトイレットペーパーが備え付けられていた。
「シャルルさん。ちょっとこっちに来てますか?」
優斗はシャルルを呼ぶ。
「少しじっとしていてください」
そう言い優斗はシャルルの頭の上に手をのせた。シャルルはすこし戸惑う。
「今から風呂や台所とトイレの使い方を魔法でシャルルさんに覚えてもらいます」
そして優斗は闇魔法の洗脳する魔法を利用して優斗が持っている知識をシャルルに教え込む。それで優斗は風呂の入り方やトイレの使い方や台所の魔道具の使い方やついでにお箸の使い方をシャルルの脳に直接記憶させた。
シャルルはなにも痛みなどは感じなかった。不思議なことにこのRoomの設備の使い方が頭の中に入ってきて記憶していく。シャルルは一瞬でRoomの設備の使い方が分かるようになった。
「これは凄いです。台所の魔道具を使うといろいろな料理ができるんですね。お風呂も素晴らしいです。水洗トイレも良いと思います。さっそく台所で料理をしますね」
シャルルは新しい台所で料理ができることを喜んだ。しかし優斗が待ったをかけた。
「シャルルさん、張り切っているところ悪いけど晩御飯は俺が作ります」
(その方が良いですね。等価交換で料理を出すより料理Lv.10を取得してマスターが料理を作った方が美味しい料理ができますよ)
(やっぱりそうか。俺の考えが正しかったんだね。早速、料理Lv.10を取得しよう)
優斗は直ぐに創造で料理Lv.10を取得した。
(叡智、料理のスキルは取得したけど料理を作ったことがないんだけど……)
(それは任せてください。今から地球の料理各種の情報をインストールします)
しばらくすると優斗の頭の中に地球の料理の作り方が浮かんできた。今の優斗なら和食や洋食に中華、韓国料理からベトナム料理まで様々な料理が作れるようになっている。
「優斗さんが料理を作るのですか?」
「はい、この設備を利用した料理をシャルルさんは分からないですよね?」
「確かに設備の使い方は理解しましたがどのような料理を作っていいか分かりません。優斗さんにお任せします」
「任せてください。シャルルさんは俺が料理を作っている間にお風呂にでも入ってゆっくりしてください」
「嬉しいです。お風呂に入るのなんて初めてです。直ぐに入ります」
シャルルはRoomから出ていって着替えを持って帰ってきた。そしてお風呂場に入っていった。
「よし、俺は料理をつくらなきゃな」
優斗は亜空間倉庫に余っていたオーク肉を取り出して晩御飯のメニューを考えた。そしてかつ丼と豚汁を作ることにした。等価交換で交換して得たポイントを使い足りない素材や調味料を同じく等価交換スキルを利用してそろえた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
1時間ほどしてシャルルが風呂から出てきた。シャルルは風呂がよほど気に入ったのか結構長風呂だった。その間に優斗は料理を作り上げていた。ダイニングにシャルルがつくと美味しそうな匂いが立ち込めていた。シャルルの腹が「グー」と鳴った。
シャルルは恥ずかしそうに俯く。優斗はそんなシャルルに微笑む。
「シャルルさん、椅子に座って待っていてください。直ぐに料理を運びます」
シャルルが椅子に座ると優斗はどんぶりに入ったカツ丼をシャルルの前に置いた。そして豚汁を運んでくる。冷蔵庫から出した冷たい麦茶も準備してある。そして二人分料理を運び終えた。
「さあ、召し上がってください。お箸の使い方は分かりますよね」
「さっき覚えました。知っていますよ」
シャルルはカツ丼を食べ始める。そして余りの美味しさに顔をほころばせる。
「おいしいです。こんな美味しい食べ物を初めて食べました」
地球で食べる豚のカツ丼よりも魔力を保有しているオークのカツ丼の方が美味しいに決まっている。優斗はシャルルの喜ぶ顔が見れて良かったと思った。
「それはそうでしょう。今までシャルルさんが食べたことのある料理は塩味だけだったのですから。この料理には様々な調味料が使われています。どうぞ豚汁も食べてみてください」
シャルルは豚汁に口をつける。そしてその美味しさに驚く。
「この汁も美味しいです。初めて食べた味です。凄く美味しいだし汁が出ています」
だし汁にはこの世界にない鰹節と味噌が使われているので優斗しか手に入ることができない。シャルルはそのことを知らない。カツ丼にもこの世界にないみりんや貴重な砂糖まで使われている。シャルルが知ったら驚いただろう。余った調味料は冷蔵庫に仕舞っている。
シャルルは美味しそうに一口一口味わいながら料理を食べ終えた。優斗は約束通り等価交換で得たチョコレートケーキと紅茶をシャルルの前に出した。ケーキまで作る時間が無かったのでケーキは等価交換で出した。
「これはチョコレートケーキという食べ物です。飲み物は紅茶を用意しました。紅茶には砂糖を好きなだけ入れてください。普通は匙で二杯ほど砂糖を入れると良いですよ。この黄色い果物はレモンと言います。これを紅茶につけると酸っぱくなりますが紅茶がより美味しくなりますので試してみてください」
「これが砂糖ですか? 高級品です。たしか紅茶も高かったような気がします」
優斗は気が付かなかったがお茶の葉自体がこの世界では高級品扱いだった。シャルルは恐る恐る砂糖を匙ですくい紅茶に混ぜてレモンを一切れ入れた。そしてそれを飲む。
「美味しい」
その一言が全てを物語っていた。
「この黒いものが食べられるのですか?」
シャルルは黒いチョコレートケーキを見て食べられるか心配になった。今までに真っ黒い食べ物をシャルルは食べたことが無かったからだ。今までに食べたことがある真っ黒い食べ物と言えば焦げた肉くらいなものだ。
「美味しいですから食べてみてください。俺が先に食べてみますよ」
優斗はそう言いチョコレートケーキを食べ始める。優斗がケーキを美味しそうに食べるのを見てシャルルもチョコレートケーキを口に運ぶ。
「美味しいです。黒いのに焦げた味がしません。甘くてとても癖になる味です」
そしてシャルルは美味しさの余韻にひたる。
「それは良かったです。このケーキを用意した甲斐がありました」
「甘い、美味しいです。こんな美味しいものを食べられるなんて幸せです」
シャルルは一生分の幸運を使ったのではないかと思ったほどチョコレートケーキは美味しいと思った。
「それは良かった。明日も晩御飯の時にデザートを用意しますね」
「デザートとはなんですか?」
「デザートとは食事の後に出すお菓子のことです。明日も用意します。楽しみにしておいてください」
「楽しみに待っています」
食事を終えると優斗はシャルルに歯磨きするように言い自分はお風呂に入った。着換えは金貨1枚をポイントに変えて等価交換でそろえた。そしてその日は寝ることになった。
シャルルはフカフカのベッドに横になって今日あった出来事を夢のように思いながら眠りについた。優斗は明日からのレベル上げについて考えながら眠った。