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013 村長宅

ダンテスは村長で家は大きいが家の中には装飾品と呼べるものはなにもない。とても質素で生活必需品以外おいてないようだ。家に入ると直ぐにダイニングになっている。ダイニングと言っても木のテーブルと木の椅子がある程度だ。その奥が台所になっている。


優斗は椅子に案内され腰を下ろすとダンテスは優斗の向かいに座った。


「優斗君。どのくらいこの村にいる予定だね?」


「俺はこの村にいる間に魔の森で魔物を狩ってレベルを上げるつもりでいます。あるていど納得がいくまでレベルを上げてから街に行こうと思っています」


「それじゃあ目標にしているレベルになるまでシャルルの家にやっかいになるということだね」


「はい」


「シャルルについてどこまで知っている」


「なにも……」


「そうかい。それは仕方がないな。優斗とシャルルは今日会ったばかりだ。お互いに知らないことは多いだろう。そんな優斗はどうしてシャルルを頼ったんだ。この村に厄介になるなら村長の俺の所に来るのが普通だろう?」


優斗は知らなかったが旅人が村で宿泊するにあたって村に宿が無い場合は、村長の家に泊まるのが一般的だ。まあ、この世界にやってきて間もない優斗がそんな常識を知るはずがない。


「すみません。俺はあまり常識を知らないもので……。シャルルさんと会って直ぐに彼女の家に案内されたので成り行きで彼女の世話になることに決まったんです。悪気はないんですよ」


「すまない。変なことを聞いた。俺はシャルルの両親から彼女を預かっている身だ。シャルルのことが心配なだけだ。お前にシャルルが騙されていないか確かめただけだ。気を悪くしないでくれ」


ダンテスはすまなそうな顔をして優斗を見ている。優斗はなんでもないようなそぶりを見せる。優斗はシャルルのことを心配してくれているダンテスにあまり気を使ってほしくなかった。


「気を悪くするなんてとんでもない。ダンテスさんはシャルルさんのことを心配しているだけですよね。未婚の女性のことを心配するのは当然のことです。シャルルさんの両親に彼女のことを任せられているなら変な男が彼女に近付いたら心配するのは当たり前ですよ」


その言葉を聞いてダンテスはすこしだけ優斗に気を許した。


「優斗がそう言ってくれると助かるよ。たのむからシャルルに迷惑をかけることはしてくれるなよ」


「はい。迷惑はかけません」


「そうかそうか。それじゃあ親睦を深める意味で優斗が持ってきた酒を一緒に呑もうじゃないか? 優斗は何歳だ?」


「16歳です」


「見た目幼く見えるがもう成人しているんだな。なら問題ないな。呑むぞ」


ウクライーナ王国ではヒューマンは15歳で成人として扱われる。酒を飲めるようになるのもこの国では15歳からだ。優斗が酒を呑むのになにも問題はない。優斗は酒を一緒に呑もうというダンテスの勧めを断れなくなった。


「酒はあまり飲めないのでお付き合い程度で勘弁してください」


「分かったよ。呑めないよりはましだ。アンナ、コップを持ってきてくれ」


「あおよ。つまみも作るかい?」


「ああ、まかせていいか」


「すこし時間をおくれ」


アンナとはダンテスの奥さんのことだった。アンナは木のコップを二つ持ってきてくれた。ダンテスはコップに酒を注いでいく。


「ほら、優斗もコップを持て。乾杯だ」


「はい」


乾杯をして優斗とダンテスは日本酒を呑む。


「甘くて飲みやすい」


優斗が等価交換で持ってきた酒は甘口で飲みやすい酒だった。


「これは良い酒だ。酸っぱくない。優斗、こんなうまい酒を持っているなんて……。お前は貴族なのか? 着ている服も良いものだろう」



ダンテスたちからしたら優斗が着ているジャージは高級そうな生地でできている服に見えた。一般庶民が着ているような服ではない。優斗が貴族に間違われるのも仕方がないことだ。


「俺は貴族ではないですよ。それなりにお金を持っているだけです」


優斗はその場しのぎの言い訳をする。それでもダンテスからしたら優斗が貴族でなければどこかの御曹司にみえた。ダンテスは村長でありこの村では裕福なほうだ。そんなダンテスが着ている服よりはるかに良いものを優斗が着ているからだ。


下手をしたら領主である男爵よりも優斗は良いものを着ているようにダンテスは思えた。


「まあ良いや。この酒は最高だな。アンナにも飲ませてやろう」


こうしてアンナさんも交えて三人で酒を呑み始めた。太陽が西に傾き飲み会は終わった。優斗は夕食を勧められたが、シャルルに夕食の時にまたお菓子を食べさせると約束していたので、二人の申し出を断ってシャルルの家に帰った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



シャルルの家に着くとシャルルは椅子に座りなにか考え込んでいるようだった。


「シャルルさん、なにか困ったことでもあったのですか?」


シャルルは優斗が声を掛けたことで優斗が帰ってきたことが分かったようだ。それくらいなにか悩んでいるようだった。


「優斗さん。すみません。さっきまで気が付かなかったんですが、この家には部屋が一つしかなくて優斗さんを泊める部屋が無いんです。うかつでした」


優斗はシャルルが悩んでいたことが「そんなことなんだ」という顔をした。優斗はこの家に案内されたときにもうそのことは知っていた。優斗はこの村でシャルルの家にやっかいになっているという事実だけで事足りていた。


「シャルルさん、そのことなんですが悩む必要はありませんよ。俺に考えがあります」


「本当ですか? しかしどうするのですか?」


優斗は直ぐにスキル創造でネット小説で読んで知識として知っているRoomというスキルを創造しようと考えた。


(叡智、俺が考えていることがわかる?)


(はい、分かります。結論で言えばそのスキルは創造可能です。直ぐに創造してください)


「クリエイト『Room』」


優斗はスキルRoomを創造した。


「Room」と唱えると目の前にドアが現れた。シャルルはそのドアを見て目を丸くして驚いた。


「ゆ、優斗さん。そのドアはなんですか」


「このドアは俺のスキルでRoomと言います。シャルルさんも一緒に入りましょう」


「えっ?」


ドアしかないのに何に入るのかとシャルルは呆ける。優斗はそんなシャルルの表情を微笑ましく見ながらドアを開く。そしてシャルルを手招きして呼び寄せる。シャルルがドアの所まできてドアの中を覗くとそこは玄関になっていた。靴箱とスリッパがある。


優斗は先にドアの中に入ると靴を脱ぎスリッパに履き替えた。


「さあ、シャルルさん。中に入ってください。この中は土足禁止なので靴は脱いでスリッパに履き替えてください」


「わ、分かりました。凄いスキルですね」


「あははは」


シャルルは靴を脱いでスリッパに履き替えて中に入る。Roomの中は板張りのフローリングで入ってすぐの場所は30畳ほどの広いダイニングとキッチンになっていた。キッチンにあるのは魔道具の家電だ。すべてに創造で作られている。冷蔵庫に電子レンジにオーブン、炊飯ジャーにトースターに電気ポット、魔導コンロまであった。ピザを焼くのに便利な石窯まである。


ダイニングの奥には同じく30畳ほどのリビングがあり、大きなローテーブルを囲んで10人が余裕をもって座れるような真っ白いソファーがある。そして液晶テレビとブルーレイプレイヤーにゲーム機まであった。全て魔道具となっている。


壁には10もの扉がありそれぞれが部屋とお風呂にトイレになっている。これにはRoomを創造した優斗も想像通りになっていることに満足した。

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