121 美香が友達をシャルルに紹介する
ラフォーレ原宿に行った次の日の日曜日はシャルルは美香の友達と遊ぶ約束をしていた。
「シャルル姉、今日は美香の友達と遊びに行くけど、遊びに行く場所はカラオケボックスなんだよね。シャルル姉は日本の歌は知らないでしょ?」
「美香の言うとおりね。私は日本の歌なんて知らないわよ。まあ、トカ村でも歌を歌う事なんて無かったわよ。優斗に覚えさせられてカラオケの知識はあるけど、どうしたらいいか分からないわ」
「それなら大丈夫。美香も闇魔法が使えるから。美香が覚えている曲をシャルル姉に覚えてもらうようにすれば良いでしょ。少し頭を触るね」
美香はそう言い、シャルルの頭の上に手をおき覚えている曲を全てシャルルに記憶させていく。
「これで、シャルル姉も日本の曲を覚えたでしょ」
「曲をちゃんと覚えたわ。日本の曲ってすごくノリが良いのね。バラードも素敵な曲だと思うわ。リアースにはない文化ね」
シャルルは美香に覚えさせられた曲を思い起こして音楽に興味を持った。
「シャルル姉、どうせならお兄ちゃんに頼んで歌に関するスキルを貰ってからカラオケに行こうよ」
「それが良いわね。そうしたら歌が上手いって自慢できると思うわ」
二人はいい考えを思いついたと優斗の部屋に向かった。優斗は朝食を食べた後は何時ものように部屋でタブレット端末でラノベを読んで時間を過ごしていた。今日は一日休みにしようとシャルルと美香と決めていた。
そんな優斗の部屋にシャルルと美香がやって来てドアをノックする。
「入って来ても良いよ」
優斗の言葉を聞いてシャルルと美香は優斗の部屋に入る。
「お兄ちゃん、お願いがあるの」
「どんなお願いなんだ? 俺に出来ることなら協力するよ」
「実は今日これからシャルル姉を連れて美香の友達と一緒にカラオケに行こうと思っているの」
優斗はカラオケに行くのにどうして自分に関係があるのか考える。でも何ひとつ思い浮かぶことはなかった。
「それと俺にお願いすることが関係あるのか?」
「おおありだよ。どうせカラオケに行くなら歌に関するスキルをお兄ちゃんい造ってほしいと思ったんだよね。いい考えでしょ」
「そういうことか。それはいい考えではあるな。そんな事ならお安い御用だ」
優斗はそう言うと歌唱力とリズム感と楽器演奏というスキルを創造した。それらのスキルをシャルルと美香に与えた。
「一応、これで音楽に関するスキルは与えたからカラオケを歌うことに関しては問題ないと思うぞ」
「もし美香たちが望むなら洋楽も含めて新曲の情報も覚えさせようか?」
美香は今まで邦楽ばかり聞いてきたので洋楽には詳しくない。せっかく言語理解のスキルを持っているので洋楽にも挑戦したいと思った。それにシャルルは外国から来て九条の家の養子になったという設定がある。
それなら、シャルルが洋楽を知っていた方が都合が良いと考えた。
「お兄ちゃん、洋楽と日本の新曲も覚えさせてもらえるかな?」
「分かったよ。令和3年に流行った洋楽と邦楽の曲と今週の洋楽のベスト100の曲とと邦楽のベスト100曲を覚えてもらうよ」
(叡智、今すぐ令和3年に流行った曲と今週の洋楽と邦楽のベスト100の曲をインストールしてくれ)
(マスター、了解です。それではインストールします)
そうしてしばらくすると優斗の頭の中にいろいろな曲が思い浮かんでくる。そして叡智に覚えさせられた曲をシャルルと美香に覚えてもらう。
「これで、曲を覚えられたと思うよ」
美香は頭の中に浮かんでくる曲の数の多さに驚く。今まで知らなかった洋楽の曲も歌詞の意味が分かればより一層いい曲に思えてきた。
シャルルも優斗から得た曲の多さが思った以上にあったことに驚いた。トカ村にいたころはせいぜい4曲ほどの曲しか覚えていなかった。
「お兄ちゃん、ありがとう。これで思いっきり歌を歌いに行くことが出来るよ」
「優斗、ありがとう。正直カラオケに行くと言われて戸惑っていたけどこれだけの曲を歌えるのなら大丈夫だと思うわ」
「それなら良かった。シャルルさん、今日は存分に楽しんできたらいいから」
「そうするわ」
「お兄ちゃん。そろそろ美香たちは行くね」
「ああ、行ってらっしゃい」
美香とシャルルは昨日買った服を身に纏い家を出て行った。そして美香の友達と待ち合わせしている駅前のゲームセンターの前に向かう。ここに来るまでに美香とシャルルは通りを歩く人の目を集めていた。
美香はもともと地元では有名な美少女だった。そこに北欧系の美少女であるシャルルが加わったのだ。いくらでも人目を集めて行く。シャルルはトカ村育ちで人の目に晒されたことが無いので人の目が気になる。
昨日、買い物に行くときもそうだったがどうしても綺麗なシャルルと美香が一緒に歩くとどうしての多くの人の目を集めてしまう。
そうやって人の目を気にしながら歩いていくと30分ほどで駅近くのゲームセンターに着くことが出来た。そこには三人の少女が待ち構えていた。その少女たちの所に美香はシャルルの手を引いて歩いて行く。
「ごめん、待たせたみたいね」
「そんなに待ってはいないよ。美香、その人が昨日電話で話していた新しいお姉さんになる人なの?」
「樹の言う通りよ。紹介するわね。この綺麗な外人さんが私の新しい姉になるシャルル姉だよ。姉と言っても美香たちと同じ学年だから気軽にしてよ」
「美香に紹介してもらったシャルルです。今日は宜しくお願いしますね」
シャルルは美香に紹介してもらうと直ぐに自己紹介した。シャルルはトカ村では同年代の友達がいなかった。それどころか同年代のひとたちからは容姿のことを馬鹿にされていた。だから美香の友達と仲良くなりたいと思っていた。
「シャルルさんっていうんですね。私は相原樹です。宜しくお願いします。シャルルさんは日本語が上手に話せるんですね。凄いです」
「日本語は小さい時から話していたから得意なんです。樹さんたちが話していることも全て理解できるから安心してください」
「シャルルさんは凄いですね。感心しました。私は清水香織と言います。宜しくお願いしますね」
「香織さんね覚えました。宜しくお願いします」
「次は私の番ですね。白川昴です。宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
四人は自己紹介を終えた。樹たち三人はシャルルの美しさに目を奪われていた。美香には電話で綺麗なお姉さんが出来たと聞いていたがこれほど綺麗な人を連れて来るとは思ってもいなかった。
それに見た目が奇麗なので同じ年だと言われても信じられなかった。
「美香、シャルルさんは本当に綺麗な人なのね。どういう経緯で美香たちの家の養子になったの?」
香織の疑問は最もだ。外国人を養子にするような家庭はそうはいない。そこで美香は優斗とシャルルと打ち合わせした通りの回答をする。
「うちの両親が外国で困っている子供を救うというNPOに里親になるという登録していたのよ。それで今回シャルルさんがそのNPOに紹介されてやって来たって訳なのよ」
「美香の言うとおりです。私は戦争で両親を亡くした孤児なんです。そんな私のことを日本のNPO団体が保護してくれて美香のうちの九条家の養子になったんですよ」
「ごめんなさい。シャルルさん、嫌なことを思いさせてしまったことを謝ります」
そう言って香織は謝罪する。昴も樹もシャルルに申し訳なさそうな顔をする。
「そんなに気にしないで下さい。両親が亡くなったのは私が幼い時のことです。もう大分時間が過ぎているので両親のことを思い出して悲しむようなことはありません」
「そうよ、今日は楽しむために来たんだから湿っぽい話は無しにしようよ。それとシャルル姉は美香たちと同じ歳なんだから敬語で話さなくても良いと思うよ。そうでしょ、シャルル姉」
美香の言うとおりだとシャルルは思った。これから美香の友達と良い付き合いをしていきたいと思っているシャルルには美香の言っていることが有難かった。
「美香の言う通り私は普通に話すようにするわ。樹に昴、香織も敬語じゃなくて普通に話して欲しいわ」
「シャルルって呼んでも良いの?」
昴がそう聞くとシャルルは思いっきり嬉しそうにする。
「シャルルって呼び捨てで構わないわよ。私もすでに三人を呼び捨てにしているしね」
「分かった。シャルルって呼ぶことにするね。美香、そろそろカラオケに行かない? 昨日覚えたばかりの新曲を歌いたくて仕方がないの」
昴がそう言うと他の三人も同意する。そして駅前にあるカラオケボックスに5人は向かった。




