119 シャルルとお買い物①
修二たちの部屋を拡張した後は修二と和子は部屋にこもってパソコンをいじっていた。優斗がダイニングにつくと美香とシャルルが話をしていた。優斗に気付くと美香が振りむいた。
「お兄ちゃん、今日時間があるから原宿に行こうよ」
「優斗、私も原宿に行って買い物をしてみたいわ」
美香とシャルルが声を合わせて原宿に行きたいという。優斗もこれといって今日は用事が入っていないので一緒に行くことを了承する。
「いいぞ、これから行こうか。美香たちは準備は良いのか?」
「美香とシャルル姉は着替えと化粧をするから少し時間が欲しいよ」
「じゃあ、その間俺は部屋にいるから準備が出来たら声をかけてくれ」
「分かった。シャルル姉、部屋に行こう」
「うん、美香。化粧はお願いね」
「まかせてよ。誰が見ても可愛く見えるように仕上げるよ」
そう言って美香とシャルルは部屋に行った。美香はシャルルの日本デビューに向けて気合が入っていた。
シャルルはこれから行く原宿という街に興味を示していた。どうしても地球の知識では知っていても実際に自分の目で日本の町並みを見たいという願望が抑えきれない。
優斗は二人が準備している間は暇だったので何時ものようにタブレット端末で異世界もののラノベの続きを読んで時間をつぶすことにした。
美香とシャルルが準備を終えて部屋から出て来て優斗の部屋に訪れるまでに1時間半もの時間がかかっていた。
(美香たちが準備をしている間にラノベを読んで時間をつぶしていて良かった。どうして服を買いに行くだけなのにこんなに時間をかけて準備をするのか分からないよ)
まさか美香たちが服を着換えて化粧をして出てくるまでにこんなに時間がかかる者だと優斗は思ってもいなかった。
「ごめん、優斗、待たせたわね」
「シャルルさん、気にしなくても良いよ。時間も惜しいから早く行こうか?」
「そうね、そうしましょう」
「お兄ちゃん、美香が丹精込めてシャルル姉をきれいにしたのになんか言葉はないわけ?」
「シャルルさんごめん」
優斗はあやまり直ぐにシャルルを頭からつま先まで見て確認する。美香が言うようにシャルルは気合いが入った様な化粧をしていた。服は優斗がダンジョンであげたものだった。
(女性は得だよな。化粧の仕方一つで見た目が随分と変わるもんな。今日のシャルルと美香は気合いが入っているな)
「シャルルさん、とても綺麗だよ。今日の服のコーディネートもいかしていると思うよ」
「ありがとう、優斗にそう言われると照れるわね。さあ、もう行きましょう」
「そうだね、お兄ちゃん。早く行こうよ」
そうして三人は家を出る。シャルルは優斗の家を出て周りの景色を見た。そしてあたりに大きな木が無くて地面は土が見えない。すべてコンクリートかアスファルトで舗装されている。
その光景を見て知識では知っていたがシャルルはびっくりした。リアースでは地面は土ばかりだったのでその違いに驚いたのだ。
「優斗、知識では知っていたけど地面が全てアスファルトやコンクリートで覆われているなんて実際に見たら寂しく思うわね」
「俺はそういう世界で育って来たから何とも思わないよ。でも、トカ村で自然豊かな環境でしばらく暮らしていると、あの環境が羨ましく思えるよ」
「美香もダンジョンの森にいたときは森にキャンプに来た感覚だったよ。自然豊かな森のダンジョンは空気がきれいで過ごしていて気分が晴れやかだったよ」
次にシャルルは優斗の家の隣に隙間なく家が建っていることに驚いた。周りを確認すると道を挟んで向かい側にも家がずらりと並んでいる。その家の数にシャルルは驚く。
シャルルは知識でしっているのと実際に目で見て確認するものとでは大分受ける印象が違う気がした。そして実際に目にした街はリアースの田舎にあるトカ村よりも温かみに欠けるようにシャルルには思えた。
「道に沿って立っている物が全て人の住む家なのよね」
「そうだね。トカ村では広い土地に小人数の村人が住む家が建てられていたから家同士の間隔が広かっただろうけど日本の都会ではそういう訳にはいかないんだよ。多くの人々が住んでいるからね。この土地に住みたいという人よりも土地の方が足りない位なんだよ。だからああいうアパートやマンション何かが建てられているんだよ」
優斗はそう言い住宅街にある12階建てのマンションを指さす。シャルルはそのマンションを見てこんなに高くそびえている建物を人が作ったんだなと感心する。
道を歩いていると自動車や原付バイクとすれ違う。こういう面では地球は便利な世界だとシャルルは思う。リアースでは馬車や獣車しか移動手段はない。ダンジョンで実際に車に乗ってその早さと乗り心地を体験したシャルルには車やバイクの有用性が理解できていた。
そして大通りに出て道を走る車やバイクの多さにシャルルは驚く。あのような乗り物を多くの人が所有しているという事実にシャルルは感心していた。そのうえ大通りを歩いている人の多さにも驚いていた。
シャルルには見る物すべてが新鮮だった。大通から見上げるほど高いビルにシャルルは驚いていた。さっき見たマンションよりも更に高くそびえたっている。それらはシャルルが知っている草原にある岩山よりも高いと感じていた。
この様に高い建物を人の力で立てられることが信じられなかった。でも優斗に覚えさせられた記憶で人が建てたことが証明されている。シャルルは科学の進歩という物が人に与えた影響が計り知れないものだと思った。
日本の風景に感心しているシャルルを見て道行く人々が彼女に視線を向ける。シャルルの容姿は日本ではよく目立っていた。銀色に輝く髪の毛が特に印象的だった。
そしてすれ違う男の人たちを虜にしていく。シャルルの容姿はそれくらい整っている。美香もシャルルに負けないくらい人目を集めていた。シャルルはトカ村という田舎育ちなのでこういう大勢の人の目にさらされることはなかった。
なので人目が気になり、凄く困惑していた。
「ねえ、美香。どうして私は注目を集めているのかしら? 私の格好は変に見えるのかな?」
「シャルル姉、そんなことはないよ。あの人たちはシャルル姉があまりにも綺麗だから見惚れているんだよ。あまり気にしない方が良いよ。シャルル姉は人目を集めるくらいに綺麗なんだから、これから毎日そういう目で見られると思うよ」
「そんなに私は綺麗なのかな? この視線に慣れるのは苦労しそうだわ」
シャルルは優斗に全身を作り変えてもらった今でも自分い自信が持てないでいた。たしかに以前の容姿よりは今の方が自信が持てる。それでも今までの習慣でどうしても人の目が気になっていた。
そうこうしているうちにシャルルは優斗と美香について行き大宮駅に辿り着いた。そして電車の切符を優斗に教えて貰い購入して改札を潜り駅の中に入って行く。プラットホームに辿り着いてその場所にいる人の数やプラットホームに入ってくる電車の大きさにも驚く。
家から駅に着くまでにシャルルは何度も驚き地球という文明の発達した世界に感心していた。
「電車という乗り物に乗ればこの国のほとんどの場所に行けるのね」
「そうだよ。電車が通っていないな場所だとバスやタクシーなどを利用すれば誰でも行きたい場所に行けるね。飛行機に乗れば海の向こうにある島や他の大陸にある国にも行くことが出来るんだ」
シャルルは優斗にそう言われて改めて地球の技術の高さに感心した。そしてこの地球では貴族ではなくともただの平民でもお金を出せば全ての乗り物が利用できることと平民が国を自由に行き来できることにも感心していた。
「シャルル姉、いつか飛行機に乗って日本以外の国にも行ってみようね」
「そうねこの前戦闘機にを操縦してみたけど多くの人が利用する旅客機にも興味があるわ」
シャルルは美香が言うようにいつか日本以外の外国にも行ってみたいと思った。でもその前に日本でも行ってみたいところはいろいろあった。
シャルルは海を見たことが無い。なので、海が綺麗な沖縄と言う所や日本の伝統的な建物が多く残っている京都や奈良などにも行ってみたいと思っていた。そう考えているうちにシャルルたちが乗る電車がやって来た。
「シャルルさん、この電車に乗るよ」
「分かったわ」
優斗に言われてシャルルは電車に乗り込む。そしてしばらくすると電車は走り出した。電車はとても大きく馬車の様に揺れることはない。そして大勢の人が電車に乗って移動しているのをシャルルは目の当りにする。
(一度にこれだけの人数の人を運ぶことが出来るなんて凄いわね。リアースでもこういう乗り物があれば楽なのに)
電車に乗って池袋駅で電車を乗り換えて40分ほどで原宿駅に到着した。それからラフォーレ原宿にシャルルたちは向かった。原宿駅に降りてからラフォーレ原宿に向かう道にいる人の多さにシャルルは驚く。その道にはシャルルの住んでいたトカ村の何十倍もの人々が道を歩いていた。
「すごいわね。いつもこんなに人がこの場所を訪れるの?」
「平日は流石に今日よりも少ないと思うよ。今日は土曜日だから人がいっぱいいるんだよ」
美香の応えにシャルルは納得する。道沿いにはいろいろなお店が軒を並べている。その全てにシャルルは興味を示す。道を歩いていると美味しそうな匂いが漂ってくる。
優斗と美香はその匂いに誘われること無くラフォーレを目指していた。シャルルは道沿いにある店などに興味は惹かれるが今日は服を買いに来たのだと思い優斗達について行く。
そして三人はラフォーレ原宿に到着した。その建物の中の人の多さにもシャルルは驚いていた。ビルにはいると多くの服を売るテナントが目に入って来た。シャルルは店頭に飾られている服を見て今までトカ村で着ていた服がみすぼらしく思えた。
「シャルル姉、先ず下着から買いに行こうよ」
「そうね。いつまでも胸に布を巻きつけているだけの恰好には問題があると思っていたわ。ブラジャーというものとパンティーというものを買いに行きましょう」
そう言いシャルルと美香は目に入ったランジェリーショップに入って行こうとする。そこで優斗は慌てだす。
「おい、美香。さすがに俺はランジェリーショップに入る度胸はないよ。俺はそこの店の前で待っているからな」
「分かったよ。お兄ちゃんはそこで待っていて」
美香はそう言いシャルルを伴ってランジェリーショップに入って行った。




