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115 日本に行く前に①

優斗達はダンジョン内移動で食堂に着いた。


「今日は夕食後に日本に行くからそのつもりで準備するようにしてくれ」


「やっと日本に帰ることが出来るんだね。母さんたちに会えないのは少しだけ寂しかったんだよね」


「まあ、俺も寂しくはあるが母さんの手料理がはやくたべたいかな」


「私は日本に行くのが楽しみだわ。優斗たちの両親にも会ってみたいしね」


「それじゃあ、いつものように8時に食堂に集合してくれ」


「分かったよ」


「分かったわ」


三人はそれぞれのメイドを伴って自分の部屋に帰っていく。優斗は部屋になにもおいていない。全て亜空間倉庫(インベントリ)に入っているので帰る準備はする必要が無かった。風呂に入った後は何時ものようにタブレット端末でラノベを読んで時間を潰す。


シャルルと美香も似たようなものだ。部屋に荷物は置いていない全て亜空間倉庫(インベントリ)にしまってある。部屋に荷物を出すと片付けるのがめんどくさいし、どこに何を置いたか思い出すのに苦労するからだ。


その点、亜空間倉庫(インベントリ)にものを仕舞っていれば一覧表示で直ぐに欲しいものを見つけることが出来る。その便利さから二人は普段から亜空間倉庫(インベントリ)を利用していた。


城の部屋にドレッサールームがあるのに全く使っていなかった。まさに宝の持ち腐れ状態だ。メイド達もベッドメイキングをするくらいでこれと言って仕事らしいことは何もしていなかった。


ナツとアキは風呂上がりにシャルルと美香の髪を乾かしてあげたり髪をすいたり、城の中を付き添って一緒に歩いたりするぐらいしか二人の世話をしたことが無かった。


シャルルと美香は風呂に入り時間をつぶして食堂に向かった。三人が食堂に着くと執事のセルゲイが料理を運んできた。


「今日はシャルル様と美香様がダンジョンを攻略して日本に旅立たれる特別な日ですので、コックのミゲルが腕によりをかけたフランス料理のコースとなっております。先ずは突き出し(アミューズ)の柿のかぶ巻でございます」


今日はダンジョンから日本に旅立つ日と聞いてミゲルは本格的なフランス料理を作ったらしい。優斗と美香にシャルルは行儀作法Lv.10と知識を持っているのでマナーの心配はない。身内だけの食事なのでおしゃべりはしながら料理を食べる。


「お兄ちゃん、今日は楽しかったね。テーマパークよりも楽しかったと思うよ」


「そうだな、俺も楽しかったよ。テーマパークには行ったことが無いから分からないけどな。こんどシャルルさんを連れて泊りがけでマウスランドにでも行ってみるか?」


「私は地球の知識で知っているけど、一度はマウスランドに行ってみたいと思っているわ」


「美香も行ってみたい。お金は使わないとなくならないから思いっきり高いホテルに泊まろうよ」


「それは良いな。スイートルームとか予約して泊まりに行くか?」


「良い考えだよ。お兄ちゃん」


シャルルは村の生活で遊ぶということを知らないで育って来たので今日はとても楽しめた一日で満足出来た。生まれて初めての体験に興奮もした。特に空飛ぶ戦闘機を操縦できたことが嬉しかった。


そして二人が楽しそうに話しているマウスランドにも行ってみたいと思った。マウスランドの知識もシャルルにはある。ジェットコースターや3Dアトラクションも楽しいだろうと思えた。


「お兄ちゃん、美香は新しい階層にモトクロスのコースを作るのはどうかと思ったよ。バイクに乗るのはたのしかったけどただ走るだけじゃなくて、飛んだり跳ねたりしたいと思ったんだよね」


「ああ、俺もそれは思った。水上バイクで後方回転したり横回転したりするのは楽しかったもんな。モトクロス用のバイクでも同じことが出来ると思うからあの階層にモトクロス用のコースを作っておくよ」


美香と優斗は新しい遊び方を考えているようだ。シャルルも知識として知っているのでどんなコースが出来るか楽しみにしている。


話しているうちに次の料理が運ばれてきた。


「今度は前菜(オードブル)の牡蠣のオイル漬でございます」


皿の上には大きな身がプリプリとした牡蠣がのっていた。牡蠣だけでもいい値段がするだろうと思われる。


優斗は直ぐに牡蠣を食べ始める。シャルルと美香も食べ始めた。


「この牡蠣は美味しいね。美香は気に入ったよ」


「私はこの食べ物は初めて食べるけど美味しいわね」


「俺も気に入ったよ。家でも母さんに作ってもらおうか?」


「それが良いよ」


「でも、今日でこの城から出て行くのも寂しく感じるわね」


「その気持ちわかるなー。ナツとお別れするのは辛いよ」


「二人とも何を言っているんだよ。一週間に一度はこの城に帰ってくるぞ。その時は父さんたちも連れて来ような」


「そうだね。母さんたちにもこの料理を食べてもらいたいものね」


美香は城で毎日美味しい料理が出る度に修二や和子にも食べさせてやりたいと思っていた。それにこの世界にいる間にドアの時間設定を弄らなければ日本の時間は進まない。何日でも休みたい放題出来るのだ。


日本の学校で疲れた体をリアースでゆったりとしてすごして体を癒すのもありだと美香は考えていた。同じように毎日仕事で疲れている修二と和子にも長期休暇があげられるのではないかと期待している。


優斗も同じことを考えていた。日本で一週間過ごしてリアースで三日休んでまた日本に帰るような考え方を持っていた。そうすれば修二と和子も仕事を休まずに長期休暇が取れるだろうと考えていた。


シャルルは単純にリアースに帰ってきたら好きなだけ酒を呑むことしか考えていなかった。そしてこれから行く日本がどういうところか凄く期待していた。


話している最中にセルゲイが次の料理を運んできた。


「つぎはスープでございます。良いじゃがいもがありましたので、それをスープにしたとミゲルが言っていました」


スープから美味しそうな匂いがしてくる。三人はスープを飲むことに集中する。音を立てるのがマナー違反なので気負付けるために会話が少なくなる。


「次は魚料理(ポワソン)(ブリ)のホワイトソースがけでございます」


皿にはホワイトソースがかかった鰤の焼いたものがのっていた。鰤は脂がのっていてとても美味しかった。三人はミゲルが作った料理を堪能していた。


魚料理を食べ終わるころにセルゲイが次の料理を持って来た。


「次は口直し(ソルベ)でございます。美味しい桃がありましたのでそれをシャーベットにしたものでございます」


桃は優斗の好物だった。ダンジョンで桃が取れるのでソラから貰ったマジックバックから桃を取り出し一人で食べることもあった。とくにダンジョン産の桃は大きくて甘くとても美味しい。


三人はシャーベットに夢中になる。特にシャルルは甘いお菓子やアイスクリームが大好きで食べるときは無口になる。美香も甘いものは好きなので言葉数が少なくなった。


ソルベを食べ終えるころにセルゲイがやってくる。セルゲイが現れるタイミングは完璧だ。長年執事をこなしてきたような手際の良さがある。


「次は肉料理(アントレ)でございます。ミノタウルスキングとポテトのリヨネーズでございます」



ここでミノタウルスキングの料理が出てきた。ただでさえ美味しいミノタウルスキングの料理をミゲルがすると更に美味しくなる。


「美味しいよ。ミゲルさん、いい仕事をしているね」


「本当に美味しいわ。発想が良いわよね。同じ料理Lv.10なのに凄いと思うわ」


「ミゲルは料理専門のミミックスライムだから料理のことだけを考えているからだと思うよ。時間があればシャルルさんも美香も作れるようになるよ」


美香は優斗に言われて自分も料理のスキルを持っていることに気づいた。そしてなぜ今まで料理をしてこなかったのだろうと後悔した。


「美香も料理のスキルを持っているんだった。ダンジョンにいる間に料理の練習もしておくんだったよ」


「そんなことを思っていたのか。だったら日本に帰ってから作ればいいじゃないか。料理のレシピは教えただろ」


優斗は美香にスキルを与えるときに料理の知識を覚えさせていた。美香が作ろうと思えば一流のシェフ以上の料理が作れるだろう。


「日本に行ったら料理を作ってみるよ」


「私も手伝うわ。ただで優斗の家に厄介になるのは気が引けるもの」


「それだと母さんが楽が出来て喜ぶと思うよ。俺も協力するよ」


料理を食べ終わるころを見計らったかのようにセルゲイがやってくる。

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