112 ダンジョンの新しい階層
優斗は食堂でシャルルと美香と別れた後に一人でソラと一緒にダンジョンコアの有る部屋に向かった。そしてダンジョンコアに触れる。
「最近、いろいろなものをダンジョンで生産しているのでDPが少しだけ減ってきています。優斗様、魔力の補充をお願いします」
DPは自然やダンジョンを訪れる人から魔力を吸って得ている。自然に増えるが最近は優斗の要望で果物や魚介類に野菜の生産などを始めたので自然に増えるDPよりも多くDPを使っていたので少し減り始めていた。
それでも深淵の森のダンジョンが出来て3,000年の歴史があるのでそう簡単にはDPは不足しない。それでもこれまでに溜めてきたDPの内、一割程度のDPがここ最近だけでなくなっていることは事実だった。
優斗には無限の魔力がある。魔力をDPとして利用するダンジョンとの相性はバッチリだ。有り余る魔力をダンジョンコアに注いでいく。そのおかげで1,000年かけて溜まるDPと同じだけのDPをダンジョンコアは得ることが出来た。それでも優斗の魔力はなくならない。
「ソラ、これでDPは確保できたから新しい階層を作っても良いか?」
優斗の申し出にソラが反対するはずがない。ソラはあくまでも優斗に忠実な僕なのだ。優斗のすることに協力はしても反対はしない。
「構いません。このダンジョンは優斗様のものですから」
「じゃあ、遠慮なく新しい階層を作ることにするよ」
優斗は今まであった地下二階から地下五階までの階層をそれぞれ地下一階ずつ下層に移した。そして新たに空いた地下二階に自分が創造している空間を作った。
そして地下二階にあった果樹園は地下三階に移動になり地下三階にあった農園は地下四階に、地下四階にあった農場は地下五階に地下五階にあった海と山は地下六階に移動になった。
「優斗様、どういう階層を作ったのですか?」
「それは明日までは内緒だよ。明日を楽しみにしていてね」
ソラはダンジョンコアの化身なので優斗に聞かなくても自分で調べれば優斗がどういう階層を作ったか理解できる。しかし、主である優斗が明日まで待つように言うのでその通りに待つことにした。
優斗は作業が終わると自分の部屋に戻り眠くなるまでタブレット端末に保存してあるラノベの続きを読んで眠くなると直ぐに眠った。本当に自由な生活をしている。
◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日、朝食をとると優斗はシャルルと美香を誘った。
「シャルルさん、美香。昨日言った通り新しい階層に遊びに行こう」
「お兄ちゃんがどんなところか楽しみだよ」
「私も楽しみにしているわ。遊びに行くと言う事だから楽しいところなんでしょ」
「うん、楽しめると思うよ。特にシャルルさんは驚くと思うな」
シャルルは優斗にそう言われて期待を大きくする。美香も新しい階層に行くのが楽しみになって来た。優斗はダンジョンマスターの特権でダンジョン内の行ったことが無い場所でも自由に行き来できる。
その能力を利用して地下二階に行こうと考えていた。ダンジョンは広いので歩いていくと何日もかかってしまうのだ。深淵の森ダンジョンを踏破するのに三カ月もかかったことからダンジョンの広さは理解できると思う。
地下の各階層がそれだけ広く作られている。特に新しく作った階層は今まで以上の広い階層だった。それだけ広い階層が必要だったのだ。
「それじゃあ、新しく作った階層に案内するよ。転移と同じ感じになると思うから気を付けて」
「うん、分かったわ」
「了解」
優斗はダンジョン内移動を利用して新しく作った地下二階に二人を連れて行った。
優斗達が移動した先は観覧席のようなところだった。そして、美香が初めに目にしたのはとても広いサーキット場だった。コースの端は見ることも出来ない。どこまでもアスファルトで出来た道路が続いていた。
「すごい、ここはサーキット場だよね」
「これがサーキット場と言うのね。車やバイクを走らせて競う場所よね」
シャルルはだだっ広いサーキット場を見て唖然とする。そして優斗がこのダンジョンのマスターだと改めて認識する。それにたいして美香の反応は薄いものだった。優斗なら出来て当たり前と思っているふしがある。
シャルルは「ダンジョンマスターなんて伝説の存在なのに……」と美香をたしなめたくなった。でも、無邪気に驚いている美香を見て、そういう事を言っても仕方がないと思った。お互いに生まれた世界が違うのだと諦めることにした。
「シャルル姉の地球の知識にもちゃんとちゃんとサーキット場の情報はあるんだね」
「もちろん、あるわよ」
「そうだぞ。ここはサーキット場だ。でも、普通のサーキット場とは違う」
「お兄ちゃん、どこが違うの?」
美香はサーキット場を見てこれから何がここで行われるか、楽しみで仕方がない。シャルルも優斗が何をしようと思っているのか楽しみにしていた。
「このサーキット場の距離は地球で一番長いサーキット場の3倍はある。それに景色が綺麗に見えるように配慮されているんだぞ」
優斗の言葉にシャルルと美香は首を傾げる。サーキット場の長さや風景が良くて何が楽しいのか分からない。
「それがどうかしたの? お兄ちゃん。美香たちに何か関係があることなの?」
美香の疑問は最もだ。優斗はまだこのサーキット場で何をするのか言っていなかった。そのため美香の反応は芳しくないのだ。
「俺たちは年齢的に日本で車の運転は出来ないけど、この世界では関係ないからな。一応俺の私有地でもあるしな。俺は車を運転して見たかったんだよ」
「そういうことだったんだね。お兄ちゃん。ここで車やバイクを走らせることが出来るんだよ。楽しみだね。シャルル姉」
「でも、私は車の運転の仕方を知らないわよ」
「美香も知らないや。お兄ちゃん、どうするの?」
「それは、俺に任せてよ。俺のスキルでどうにでもなるよ」
「流石、お兄ちゃん」
「優斗は何でもありなのね」
優斗はそう言うとスキル創造で運転技術Lv.10、操舵術Lv.10、操縦術Lv.10を作り出した。それをシャルルと美香に与えて行く。その時に車の運転や船の扱い方、飛行機にユンボなどあらゆる乗り物の操縦技術を叡智からインストールしてシャルルと美香に与えて行く。
こうして二人は車や船に飛行機に工作機械や戦車などの操縦技術と操縦の仕方が分かるようになった。
「さあ、サーキット場に降りてみよう」
優斗はそう言って二人を誘う。そして三人はサーキット場のスタート地点い移動した。
「お兄ちゃん、車はどうするの?」
「それも問題ない。車は俺が作る特別制だぞ」
優斗はそう言って腕を振るう。そしてスキル創造でスポーツカーをモデルにした魔力で走る車を創造した。シャルルと美香はその光景を見て驚く。優斗はこれまで剣や皿などの小さなものは創造してきたが車のように大きく複雑な構造のものは創造してこなかったからだ。
でも優斗のスキル創造はゴッドスキルと言われるだけあって非常に万能なスキルとなっている。優斗が構造やレシピさえわかれば神にしか許されていないもの以外なら何でも創造できる。
物の構造やレシピなどはスキル叡智があるのでなんお問題もない。地球の科学とリアースの魔法技術をドッキングさせて優斗は魔力で走る車を創造して見せたのだ。
「お兄ちゃん、凄すぎるよ。車まで作っちゃうなんて……」
「もう何も言う事は無いわ」
美香は優斗の力に感動して、シャルルはその力にあきれていた。シャルルはこれまでに何度も優斗に驚かされてきた。もう、このようなことが起きて驚きもしない。
優斗は恰好もそれらしくするためにレーシングスーツとヘルメットも創造してシャルルと美香に渡す。
「お兄ちゃん、美香は赤い色に変えて欲しい。車も赤いのに乗ることにするよ」
「なら、私は黄色がいいわ。優斗、私のレーシングシングスーツは黄色にしてね」
「分かったよ」
そう言い、優斗はレーシングスーツを二人が言った色に変える。そして二人をサーキット場の更衣室に案内して着替えてもらう。ユートはサーキットスーツを黒い色にした。
目の前には優斗が作った赤、黒、黄色のスポーツカーがある。美香は直ぐに赤いスポーツカーを選んだ。シャルルは黄色いスポーツカーを選んだので優斗は残った黒いスポーツカーを選ぶ




