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110 シャルルと美香のダンジョン攻略パーティー②

三人は席に着くと早速、食事を始めた。どの料理もコックのミゲルが腕によりをかけて作った料理なのでとても美味しい。三人が料理に満足していた。


「やっとレベル上げは終わったね。お兄ちゃん、この後はどうするの?」


「そのことについては父さんたちも交えて話をしたいと思っているから、その時に話すよ」


優斗はこれからのことをどうしていくか両親を交えて話をしようと考えていた。なので、二度手間になることは嫌だった。美香には悪いと思ったがその時まで待ってもらうことにした。


「同じ話を二階も聞くのは嫌だもの。その時に聞くことにするわ」


「シャルル姉がそう言うなら美香もそうするよ」


「それよりダンジョン攻略はどうだった」


「思ったよりも、たいしたことはなかったわね。ドラゴンも剣一つで倒せたしね」


「美香もそう思ったよ。ドラゴンなんて物語に出てくる最強の魔物だわ。そんなドラゴンを簡単に倒せて驚いたわよ。あと悪魔は気持ち悪かったわね」


シャルルと美香の言っていることは分かる。優斗もドラゴンの首を簡単に剣で跳ね飛ばすことが出来たときは驚いたものだった。これで何者にも負けないと思ったところで転移させられて最上位悪魔との戦いになった時のことを思い出した。


あの時はスキル限界突破が無ければ死んでいただろう。シャルルと美香は途中で転移されること無くダンジョンの中心にまで行けたから最上位悪魔とも互角に戦えていた。優斗はソラに頼んで最上位悪魔に転移させられない様に手を打っていたからだ。


そうでなければ短時間でダンジョンを攻略するような力を持ったシャルルと美香は最上位悪魔に目をつけられてダンジョンの中心に転移させられていたことだろう。


「でも、最上位悪魔は流石に強かったと思うわ。あの魔物に弱いうちに会っていたら自動防御を破られて死んでいたわね」


「美香もそう思ったよ。自動防御が破られたときは驚いたよ」


「実は俺も驚いていた。自動防御の結界を二枚も破られるとは思っていなかったよ」


優斗は最上位悪魔のレベルがいくらカンストしていると言っても自動防御の結界が二枚も破られると言うのは想定外のことだった。一応、一枚くらい破られることは想定していた。


「お兄ちゃんは自動防御が破られることを知っていたのね。なんで、いつも前もって説明しないのよ。今回は本当に驚いたんだからね」


「ごめんよ。俺も自動防御の結界が二枚も破られるとは思っていなかったんだよ。でも、全ての結界を破ることは出来ないと言う自信はあったんだ。現に自動防御で美香はまもられていただろ」


そう言われると美香は優斗に何も言葉を返せない。たしかに自動防御の結界はシャルルと美香を最上位悪魔の攻撃から守っていた。それでも美香は優斗に一言ぐらいは言っておかないと腹の虫がおさまらなかった。


最上位悪魔に自動防御が2枚破られたときはさすがに美香は恐怖したのだ。3枚の自動防御が残っていてもそれは気休め程度にしか感じなかった。


「お兄ちゃんはいつも都合の良いことばかり言うんだから」


「まあまあ、美香。おちついて。最終的に勝てたからいいじゃない。いい経験になったわ。私は最上位悪魔と戦えてよかったと思っているわよ」


「美香も最上位悪魔との戦いは面白かったから良しとするよ」


シャルルと美香は最後に鬼気迫るような戦いが出来たことを喜んでいた。その前は伝説に出てくるようなドラゴンを簡単に倒していたのでシャルルと美香は魔物との戦いにやる気をなくしかけていた。そんな時にあの最上位悪魔に出会ったのだ。


自動防御を2枚も破るような攻撃を初めてくらってシャルルも美香も最上位悪魔に勝てるのかと心配するほどだった。そんな時に涼しい顔で二人と最上位悪魔との戦いを観戦している優斗を見て二人は最上位悪魔に勝てると確信したのだった。


「赦してくれてありがとう。でも最上位悪魔以上の敵が出てくるかもしれないから気を付けるんだよ」


優斗はこのリアースの世界にリミテッドブレイカーという存在がいることを叡智から教えて貰っている。それらの者は魔物とは違い神獣と呼ばれる者たちと言うことだった。彼らはレベル255を超えた力を持っていると言う事だ。


それに日本で妖魔と戦うときに妖魔のレベルは表示されない。レベルの枷が妖魔には存在しないことを優斗は危惧していた。強い妖魔はレベル255を超えているかもしれないと言うのが優斗の考えだ。


まだ、そのような妖魔を見たことが無いので何とも言えない。叡智はレベル255超えの妖魔がいると断言していた。これから退魔師としてやっていく以上は強い敵を想定して動かないといけないと優斗は思っている。


「分かったよ。お兄ちゃん。美香はもっと強くなれるかな?」


「レベルの上限が決まっているからなー。一応叡智に相談してみるか」


(叡智、レベル255を超える方法はあるかな?)


(マスターのスキル創造でレベル255を超えるようなスキルを創造すれば良いのですよ)


(分かった。作ってみるよ)


優斗はレベル255を超えるようなスキルを作ろうとした。そしてレベルリミテッドブレイクというスキルを作り上げた。そしてそのスキルをシャルルと美香にも与えて行く。


「美香、これ以上強くなるにはレベル255以上を目指すしかない。頑張ってみるか?」


「うん、最上位悪魔を一人で倒せるくらい強くなりたいよ」


「美香がそう言うなら私も強くなりたいわ」


「それじゃあ、最上位悪魔にいつでも挑戦できるようにしておくよ」


「ソラ、俺たちがレベル255を超える手伝いをしてくれるか?」


「はい、優斗様がそう望むのでしたらいくらでもお手伝いいたします」


優斗はソラに3人のレベル上げを手伝ってもらえるようにお願いした。ソラは快く優斗の提案を受け入れてくれた。


「ダンジョンでレベル255を超える魔物を生みだせるのか?」


「それは無理と言うしかありません。そのかわりに倒すと10倍の経験値が得られるレベル255のラッキーモンスターを生みだすことは可能です。そのモンスター2を何十匹と倒せばレベルは255を簡単に超えて行くと思います。


「分かったよ。その方法でレベルを上げていくことにするよ」


「私も一緒にレベル上げをするわよ」


「シャルル姉がやるら美香もやるよ」


そう言って二人はやる気を見せる。優斗はそんな二人を見てとても嬉しそうにする。優斗はシャルルと美香が自分から率先してレベル上げをおこなうことに意欲を見せていることが嬉しかった。


これまでは優斗が望んでいるからしょうがなく二人がレベル上げをおこなっていると思っていた。でもこうして自分からレベルを上げたいということは二人ともレベルを上げることを求めているということだ。優斗はシャルルと美香がなぜレベルを上げたいのか理由までは知らない。


シャルルは単に両親を殺した魔物に負けるのが嫌だったので強くなりたいと思っていた。だから限界まで強くなることを望んでいた。


美香は優斗においてけぼりをくらわない様に強くなりたいと思っていた。それに異世界で将来生活するときに優斗の世話にならないくらいの力をつけておきたかったという理由があった。


アキがシャルルの空いたグラスに赤ワインを注ぐ。それを美香が羨ましそうに見ている。今までもダンジョンの城でシャルルが酒を呑んでいるのを美香は見たことがあるが今日は一段と興味を持っているようだ。


「シャルル姉、今は15歳でしょ。酒を呑んでも良いの?」


「美香、私が住んでいるウクライーナ王国は15歳で成人なのよ。15歳の私は大人の扱いを受けるの。酒も15歳から呑めるのよ。いままでも酒を呑んでいるところを見たことがあるじゃない」


「そうなの? お兄ちゃん」


「俺もお付き合いで酒を呑んだことがあるぞ」


美香は優斗の言葉に目を輝かせる。美香も酒に興味を持っていた。いつも美味しそうに酒を呑むシャルルを見ていてうらやましかったのだ。今日を逃せば異世界にいつ来るか分からない。なので、美香は必死になっていた。


「美香も呑んでみたい」


「酒は美味しい飲み物じゃないぞ」


優斗は酒が美味しいとは思えなかった。甘口の日本酒は美味しいと思ったが、赤ワインは美味しいとは思えなかった。ビールなんてただ苦いだけの飲み物だと思っている。


「それでも飲んでみたいよ」


「それなら、ジュースみたいな酒があるからそれで我慢しろよ」


優斗は等価交換でジュースの様な一瓶459円の酒を購入してナツに手渡す。ナツはグラスを用意して酒を注いで美香に手渡す。


「ありがとう」


美香はナツにお礼を言って酒を呑む。


「美味しい。ほんとうにジュースみたいな味がする」


「これは、そういう酒だからな。一応、赤ワインを呑んでみるか?」


「うん、飲んでみたい」


ナツは赤ワインもグラスに注いで美香に渡す。美香は赤ワインを呑んでみる。


「うげー、美味しくない。酒ってもっと美味しいものだと思っていたよ」


「美香、酒はね。呑んで慣れてから美味しく感じるものなのよ。子供が飲む飲み物じゃないわ」


「シャルル姉も子供じゃない」


「私はこれでも25歳なのよ。大人の女性よ」


美香は赤ワインを呑むことを諦めてジュースの味がする酒を呑んで楽しんだ。


「美香もこれに懲りたら酒を呑むのを諦めるんだな」


「私はジュースの酒を呑むようにするよ」


「日本で酒を呑んだ話はするなよ。お父さんたちに怒られるぞ」


「分かっているよ。ここだけの内緒にするよ」


三人は食事を終わらせて飲み物を飲んで休んでいると執事のセルゲイが優斗に耳打ちしてきた。

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