108 シャルルと美香のダンジョン攻略②
シャルルと美香が優斗の顔を見て優斗が緊迫した表情ではなく戦いを観戦していたので自動防御で最上位悪魔の攻撃をしのげると判断していた頃。優斗は二人が思いのほか苦戦しているのを見て「やりすぎたかな?」と思っていた。
二人の為にレベル255の最上位悪魔を準備したのに互角の戦いが出来ていないことに少し考えが甘かったと反省した。でも自動防御がしっかりと働いて二人を守っているので最上位悪魔と二人の戦いを静観することにした。
優斗は自動防御が効いているのであればいずれシャルルと美香が最上位悪魔を倒してくれると予想していた。シャルルと美香の持っているスキルにはいろいろな力があると思ってのことだった。
シャルルはどのようにすれば最上位悪魔に勝てるか考える。シャルルが考えている間も最上位悪魔の攻撃は止むことはない。シャルルが少しでも隙を見せると最上位悪魔の槍の突きが放たれる。
シャルルはどうにか多重思考を使って攻撃が来ることが分かっていたので転移魔法で後ろに下がる。その隙に美香が『コキュートス』を最上位悪魔に放つ。最上位悪魔は『コキュートス』は脅威に感じたのか今回は魔法を受けることなく転移で魔法から逃げた。
その逃げた先には美香がいた美香はそのことをスキル未来見で知っていたのでシャルルのいる方向に転移する。
「シャルル姉、何かいい作戦はないかな?」
「今、考えているわ。もう少し時間をちょうだい」
「分かったよ。美香も頑張ってみるかな」
そうして美香は『コキュートス』をもう一度最上位悪魔に向かって放つ。最上位悪魔はやはり『コキュートス』の魔法を受けるのが嫌だっいたのか転移で逃げ出していた。そして美香とシャルルの目の前に現れる。
最上位悪魔が来ることはもうわかっていた。二人はそれぞれに一閃を放つ。そして転移でその場を逃げです。二人が放った一閃で最上位悪魔は両足を膝のあたりから斬り飛ばされて倒れ込む。
そして、二人から離れるように転移して逃げ出した。そこで、シャルルは多重思考と高速思考で今の二人の攻撃が通ったことを分析する。そして最上位悪魔は転移した後が一番隙があるという結論が出た。
シャルルは最上位悪魔にこの場の主導権を渡すことが良くないと思いスキル未来視で最上位悪魔の出現する場所を見つけ出す。そして最上位悪魔が転移してきた瞬間を狙ってシャルルはその場所に転移して最上位悪魔の腹に剣技三段突きを放つ。
最上位悪魔は突然現れたシャルルに驚きを見せる。次の瞬間に攻撃を受けて立つことが出来なくなり地面に膝をつく。その隙にシャルルは剣技一閃で最上位悪魔の胸を斬り裂いた。しかし、最上位悪魔の再生能力は常識を通り越していた。
シャルルが最上位悪魔の胸を斬り裂く間になくなったはずの両足が再生していた。そして突きで穴をあけた腹も再生しかけている。最上位悪魔は直ぐに立ち上がり槍を振り払いシャルルを吹き飛ばす。今回も自動防御がシャルルを守った。
シャルルは直ぐに立ち上がり美香に念話をする。
『美香、スキル未来視は攻撃を避けることだけに使うスキルじゃないわ。最上位悪魔が転移して現れるところを未来視で見て最上位悪魔が現れた瞬間に攻撃すれば奴に攻撃を当てることが出来るわ』
『シャルル姉、良いことに気が付いたね。美香も挑戦してみるよ』
シャルルは直ぐに転移して最上位悪魔に攻撃を加える。しかし先ほどのシャルルの攻撃を気にしていた最上位悪魔は転移でその場を離れる。しかし、転移した場所に美香が現れた。
美香は剣技一閃で最上位悪魔の腕を斬り飛ばした。そこにシャルルが転移してきて最上位悪魔が槍を持っている腕を斬り飛ばす。
最上位悪魔は両腕と武器を失い、慌てて転移で逃げる。しかし、その場所にシャルルと美香が転移して現れた。美香は剣技三段突きで最上位悪魔の心臓目掛けて攻撃をして最上位悪魔の心臓を貫いた。
シャルルは剣技一閃で最上位悪魔の首を刎ね飛ばした。そして最上位悪魔は地面に横たわった。二人は暫く最上位悪魔を見る。マップ上で最上位悪魔の反応が消えた。新しいスキルの使い方を利用して二人は見事に最上位悪魔を倒すことに成功した。
「やったね。シャルル姉」
「ええ、良くやったわ。美香」
二人は抱き合って自分たちの成果である地面に横たわる最上位悪魔を見つめる。そして最上位悪魔を倒したことを喜び合う。
「これでレベル上げは終ね。明日は日本に移動することになるのかしら?」
「お兄ちゃんはダンジョンを攻略したら日本に行くって言っていたよ」
二人で話をしていると頭の中に声が聞こえてきた。
『最後のボスである最上位悪魔が倒されました。ダンジョンはクリアーされました』
シャルルと美香にはそう言う言葉が頭に響いた。
『ダンジョン攻略者に経験値を与えます』
そう頭の中で声が聞こえるとシャルルと美香の二人は体に力が沸き上がるのを感じた。二人は自分のステータスを確認する。そしてシャルルはレベル248になっていて美香はレベル246になっていた。
一度の戦いでレベルが20以上も上がっていた。このダンジョンを踏破したのは二番目だったことと二人でダンジョンを踏破したのでダンジョンを攻略した時に貰える経験値が半分になった。そのため二人のレベルが優斗の時のようにカンストしてレベル255になることはなかった。
それでもシャルルと美香が想像した以上にレベルは跳ね上がった。二人ともそのことが嬉しかった。そしてさらに頭の中に更に声が聞こえてくる。
『ダンジョン攻略は二番目です。二人はダンジョンマスターへの挑戦権が与えられます。ダンジョンマスターに挑戦しますか?』
このダンジョンのマスターは優斗だ。優斗と戦う意味を二人は見い出せなかった。
「ダンジョンマスターと戦うことは遠慮したいわね」
「美香もダンジョンマスターとの戦いは拒否します」
『それでは、転移の魔法陣を発動します。転移の魔法陣で好きなところに転移できます』
頭の中にそう言う言葉が響くとダンジョンの中心に転移の魔法陣が現れた。通常ならこの転移の魔法陣でダンジョンの外に出て行くのだろう。
優斗はダンジョンマスターの権限で転移の魔法陣を消した。そしてシャルルと美香の下に駆けつける。
「二人ともよくやった。かっこよかったよ」
「ありがとう優斗、何とか最上位悪魔を倒すことが出来たわ」
「お兄ちゃん、最期はシャルル姉の作戦で勝つことが出来たよ」
「見ていたよ。スキル未来視で敵が現れるところを予測して攻撃する。あの新しい攻撃の方法は今後も役に立つときが来ると思うよ。いい考えだった。シャルルさんは凄いね」
シャルルは優斗に褒められて嬉しそうな顔をする。そして頬を赤く染める。
「ありがとう優斗、優斗に与えられた力を存分に使うことが出来るようになって嬉しいわ」
「美香ももっと強く成る様に頑張るよ」
「二人ともそのいきだよ。さあ、帰ってお祝いをしよう」
優斗は最上位悪魔の死体を亜空間倉庫に仕舞うとダンジョンの城に転移した。




