103 シャルルと美香のレベル上げ⑪
シャルルと美香は今日も同じ部屋で眠るためにシャルルの部屋に集まっていた。二人はシャルルの部屋にあるベッドにもぐりこんでいる。どの部屋のベッドも大人3人が余裕で眠れるぐらいの大きさがある。
シャルルと美香が一緒にベッドに入ってもまだ余裕があるので狭くて寝にくいなんてことはない。
「今日の作戦は大成功だね。お兄ちゃんの驚く顔が見られて良かったよ」
「美香のおかげで私は綺麗になれたわ。ありがとう」
シャルルも優斗が驚いているのが分かった。そして自分のことを少しでも意識してくれると良いなと思っていた。
「綺麗なのは元々でしょ。シャルル姉の素材がいいから化粧をしても見栄えが良いんだよ」
美香はついこないだまでシャルルの容姿が人にばかにされていたなんてことを知らない。シャルルはそんな美香に過去のことを告げるつもりはない。シャルルは生まれ変わったと思ってこれからの人生を楽しむつもりでいた。
そして優斗にどこまでもついて行くと心の中で思う。そうおもうと胸のあたりがきりきりする。そして優斗と一緒にいるととても楽しいと感じるようになっていた。
そんなシャルルに美香は化粧を勧めてくれた。化粧を美香にしてもらって鏡を見たシャルルは驚いた。化粧をするだけで顔の印象が全く違って見えた。
「美香、これからも化粧の仕方を教えてね」
「それくらい簡単なことだよ。でも日本に肌が白いシャルル姉にあった化粧品があるかが分からないんだよね。日本人の肌はそれほど色白じゃないから。シャルル姉は北欧系の顔をしているし肌が白いからね」
「どうにかならないかな。化粧を覚えても使える化粧品が無いんだったらどうしようもないわ」
美香は母親の和子がアパレル関係の仕事をしていることを思い出した。アパレル関係で和子が白人のモデルの知り合いがいるかもしれないと思った。もし和子に白人のモデルの知り合いがいたらその人から化粧品の情報を仕入れてみようと考えた。
それがだめなら優斗に頼んでスキル創造か等価交換で白人が使うような化粧品を手に入れてもらえばいいと思った。
「うちの母親に頼んでみるよ。シャルル姉みたいな白人の女性の知り合いがいるかもしれないしね。日本に行ってから考えようよ。どうにかして、美香がシャルル姉にあった化粧品を探してあげるよ」
「有難う美香。協力してね」
「うん」
二人が話すことは女性のファッションや化粧についてのことが多かった。二人は話に夢中になり直ぐに時間は過ぎていく。いつのまにかシャルルと美香は眠っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
レベル上げ三日目もいつものように朝食を食べてからダンジョンに向かった。魔物をマップで見つけてから三人で移動して魔物を見つける。今回の魔物はオークキングが率いているオークナイトやオークメイジの群れだった。
「美香、魔法でオークメイジを先に潰しましょう。それから剣で戦うことにしたいわ」
「シャルル姉の言うとおりにするよ。先ずはオークメイジからだね。了解」
「ロックランス」
「アイスランス」
シャルルと美香は先ず、「ロックランス」「アイスランス」の魔法でオークメイジが魔法を放つ前に頭を射殺した。そしてオークキングが統率して軍隊のように動くオークナイトを各個撃破して最後にオークキングを美香が単独で首を刎ねて殺した。
それから、度々オークキング率いる群れを退治することになったがシャルルと美香はなんの問題もなくオークキングの群れを殺していく。3時間ほどしてオークキングのテリトリーを抜けることが出来た。
太陽が真上に来ていたので三人でいつものように、お昼を取ることにした。今日は優斗が依頼して、うな重をコックのミゲルに作ってもらっていた。
家でも洋食が主だったし美香のリクエストで魚介類の話が出たときに、優斗は無性にうな重が食べたくなったのだ。
「美香、今日は俺がリクエストして、うな重を作ってもらったんだぞ」
「えー!? 本当なの? うな重なんて何年ぶりだろう。5年ぶりかな?」
家族でうな重専門店に言って以来うな重を食べたことが無い。スーパーで売っているかば焼きのウナギは食べたことがあったが本格的なうな重は久しぶりだった。
「優斗と美香が楽しみにしているなら、期待が出来そうな料理なのね」
「うん、凄く美味しいよ。シャルル姉も気に入ると思うよ」
優斗は早速、昨日作ったテーブルと椅子を亜空間倉庫から出す。そしてうな重を三つ亜空間倉庫から取り出す。そして二人に手渡す。
「飲み物はどうする?」
「うな重だから今日は緑茶で良いよ」
「緑茶って言う飲み物は私は飲んだことが無いわね。私も美香と同じものにするわ」
「了解。ちょっと待っていてね」
優斗は等価交換で高級な茶葉を使った緑茶を買って二人に渡す。それが済むと早速、うな重のつまった重箱の様な弁当箱を開けてみる。すると甘く美味しそうなたれの匂いがあたりに漂う。
「美味しそうな匂いだな」
「匂いだけでよだれが出るよ」
「良い匂いね。早速、食べてみるわね」
「いただきます」
シャルルは直ぐにお箸でうな重を食べてみる。そして甘く香ばしいウナギの味が好きになった。直ぐにもう一口うな重を食べる。
「これは美味しいわね。私はこの味が好きになったわ」
「「いただきます」」
美香もうな重を頬張る。それに続いて優斗もうな重を食べる。
「この味だよ。本当に美味しいよ。お兄ちゃんありがとう」
「本当に美味しいな。前に食べたことがあるウナギ屋さんのうな重より美味しいぞ。レベル10のスキル料理は馬鹿にできないな」
「母さんたちにも食べてもらいたいね」
「そうだな。俺もそう思うよ」
美香はこんなに美味しい料理があるなら両親にも食べてもらいたいと思った。そして一つの疑問がわいた。
「お兄ちゃん、贅沢するために高級レストランに行くって言っていたけど。そんなお店に行くよりもダンジョンの城で食事をした方が美味しい料理が食べられるんじゃないかな?」
美香の疑問は当然のものだ。スキル料理Lv.10を持っていない料理人が作った料理よりダンジョンの城のスキル料理Lv.10を持っている料理人が作った方が美味しいに決まっている。でも、優斗はそう言う考えは持っていなかった。
「たまにならダンジョンでご飯を食べるのも良いかもしれないけど、雰囲気も大切だろ。高級レストランの雰囲気を味わうのも良いと思うんだ。でも、美香の言うようにダンジョンのミゲルが作った料理の方が美味しいと思う。今度は父さんと母さんも連れてこようと思っているよ」
「そうだよね。こんな美味しい料理なら母さんたちにも食べさせてみたいもの」
「その時に私がお邪魔しても良いの?」
「シャルル姉なら大歓迎だよ。それに、レベル上げが終わったら日本に行くでしょ。その時に美香の母さんたちを紹介するよ」
「シャルルさんは気を使わなくても良いよ。ちゃんと両親に紹介するから。日本では俺の家に住むことになると思うから、うちの両親も宜しく」
シャルルは優斗と美香の言っていることが嬉しく思った。そして日本に行くのが楽しみになって来た。
「嬉しいわ。早く日本に行ってみたいわ」
「そうだなー。順調にレベル上げが終わるのは三か月後ぐらいかな。それまでは我慢して」
「分かったわ。我慢するわ」
美味しくうな重を食べてまた魔物を探してダンジョンの中心に向かって三人は歩き出した。




