101 シャルルと美香のレベル上げ⑨
優斗の考えていた通りシャルルと美香のレベルは上がっていく。シャルルのレベルが35で美香のレベルは33まで上がっていた。特に美香のレベルの上がり方が大きい。
もともと、レベル1だったのでそこの原因がある。レベル20以上も離れていた魔物と戦っていたのだ。一回の戦いで得られる経験値が半端なく大きい。そのせいで急成長した。今ではシャルルに迫る勢いがある。
シャルルももともとレベルが10だったので25もレベルが上がっている。二人の成長ぶりに優斗は満足していた。優斗はダンジョンで三カ月かけてレベル上げをして日本に行き退魔師の試験を受ける計画を立てている。
退魔師の試験までの間はFXで株を購入する考えだ。もう、株式売買するための口座は開いてある。優斗は株式売買でお金を儲ける考えを持っている。それに異世界で得たお金が50億円もある。
退魔師になれば所得の申告は必要なくなる。その50億を元手に不動産を購入して貸店舗やアパートに貸しマンションなどを手掛ける不動産会社を設立するつもりでいた。その計画もちゃくちゃくと前に進んでいる。
それは祈里から聞いたことで思いついた考えだ、退魔師には固定資産税や相続税などの税金が掛らない。そこで多くの退魔師が不動産会社を経営していると聞いている。優斗はそのことに目を付けた。
未来視を使えばお金はいくらでも稼ぐことが出来る。でもそのお金の使い道は決まっていない。そこで優斗は自分の子供や美香の子供のことを考えて不動産を残すことを考えていたのだ。
もう、日本でどのようにお金を儲けていくか計画は立ててある。あとは実行するだけになっている。
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三時のおやつも食べて美香は早く魔物と戦闘したいと考えて直ぐにマップを起動する。マップでは600mほど離れたところに魔物の反応がある。しかし、今回は数が多い。
優斗は勿論このエリアに住む魔物のことは知っている。でも敢えてなにも二人には教えない。
「600m先に魔物を発見したよ。そこに行こうよ」
「分かったわ。行きましょう」
優斗は何も言わず頷いた。美香は優斗の反応を見て魔物の方に歩き出す。しばらく歩くと千里眼で魔物が確認できた。そこにいたのは35匹のリザードマンだった。レベルは58もある。
今まで戦った魔物で最もレベルが高い魔物だ。でも優斗は何も気にしていない。シャルルと美香のレベルが低くてもステータスは四倍になっているのでレベル60くらいまでなら余裕で勝てると思っているからだ。
「美香、今回は魔物の中に突っ込むのはやめにしましょう。あの多さの中に突っ込むと攻撃を食らってしまうわ。自動防御が守ってくれるけど攻撃を受けること自体が面白くないわ」
「シャルル姉の言っていることは分かるよ。攻撃を受けたら死んだことになるからだよね。美香も攻撃は受けたくないよ」
シャルルは自動防御に守られていることに不満はないが魔物から攻撃を受けることに不満を持っていた。魔物の攻撃を一度でも食らえば人は簡単に死ぬ運命にある。だから攻撃を受けないで魔物を倒すことを真剣に考えている。
「ここはヒットアンドアウェイで外側から魔物を狩っていきましょう」
シャルルは優斗から地球の知識を知っているのでヒットアンドアウェイの意味を理解している。そのヒットアンドアウェイという知識は優斗がネット小説から得た知識が元になっていた。
「そうだね。シャルル姉も地球の言葉を大分理解してきたね」
「優斗のおかげよ。さあ、行きましょう」
シャルルと美香はリザードマンに近付いていく、そしてリザードマンは二人に気づいた。そのリザードマンは陣形を組んで二人を待ち構える。ここにきて知性の高い魔物に二人は初めて出くわした。
「シャルル姉、リザードマンが陣形を組んでいるよ」
「前衛の盾は厄介ね。魔法で盾を蹴散らすわよ」
「アイスランス」
「ロックランス」
二人の魔法が陣形を取っているリザードマンに襲い掛かる。盾を持っているリザードマンが魔法で吹き飛ばされる。その場所に穴が開く。そこに二人は突っ込んだ。
美香はここで初めて縮地のスキルを使った。すぐ目の前にいきなり現れた美香にリザードマンは驚いて後退る。美香はそのリザードマンに三段突きを叩き込む。リザードマンは顔に三段突きを食らって後方に倒れて動かなくなる。
その動きをシャルルは見ていた。自分も新しいスキルを使いたくなって美香を真似て縮地のスキルを使う。目の前に直ぐにリザードマンがいる。シャルルは剣技一閃でリザードマンの首を刎ね飛ばす。
二人はそれぞれ5匹ずつリザードマンを斬り飛ばしてから後方に下がる。決してリザードマンに囲まれないような位置取りを考えての動きだ。リザードマンたちは怒りをあらわにして二人に襲い掛かる。
美香は後方に下がると先頭を走ってくるリザードマンに向けて突っ込んでいく。美香とシャルルは連携と言う言葉は持っていない。それぞれが好きなように戦っている。先頭を走ってくるリザードマンに近付くと直ぐに首を刎ねた。
シャルルは美香が前から攻めるなら後ろから攻めようと考えてリザードマンたちの後ろに転移することを考えた。
「転移」
そして、リザードマンたちの後方に転移するとシャルルに背を向けているリザードマンの首を刎ねる。二人が魔物の首を刎ねるのは優斗に言われているからだ。魔物の革は素材になるのでなるべく体に傷をつけない様に言われている。
シャルルは無防備な後ろからリザードマンに攻撃していく。リザードマンは後ろからの攻撃に気づいて雄叫びをあげた。するとリザードマンたちが半数に分かれた。
半分が美香に向かって進み。半分が反転してシャルルに向かってくる。シャルルは深追いせずに一度下がる。そして敵の足並みが乱れるのを待つ。シャルルに向かってくるときにリザードマンは縦に長く列が伸びる。
これで、シャルルはリザードマンに囲まれることはないと判断した。直ぐに縮地で先頭を走っているリザードマンの前に飛ぶ。そしてそのリザードマンの首を刎ねる。それからの戦いは一方的だった。リザードマンは成す統べなくシャルルに殺されていった。
美香もシャルルに負けていない。先頭を走るリザードマンを切り捨てると神剣術の剣技、空歩で宙を蹴りリザードマンを飛び越える。そして後に続いてきたリザードマンと対峙する。
美香は試しにリザードマンの剣での攻撃を剣で受けてみた。リザードマンは美香よりもレベルで25も上なのにリザードマンの剣を彼女は難無く受け止めることが出来た。
美香は自分の力がリザードマンよりも強いと言う事を確信した。ステータス4倍の恩恵を物凄く力強く思った。そして受け止めたリザードマンの剣を力で押し上げて首に剣を突き刺す。
美香がリザードマンの剣を受け止めている隙に他のリザードマンが美香の死角に回り込んで剣を振り下ろしてくる。しかし、美香は慌てない。そのリザードマンが死角にいることもその動きもスキル空間把握で知っていた。
美香は振り向かずにリザードマンの攻撃を躱す。そして取って返してリザードマンの首を刎ね飛ばす。それからは美香がリザードマンを蹂躙していく。一切の攻撃を身に受けることなくリザードマンを美香は切り捨てた。
二人とリザードマンとの戦いは終わった。二人の完勝だった。シャルルと美香はハイタッチをしてお互いの成果を褒めあう。
「シャルル姉は戦いの中で転移を使ったんだね。いい考えだったと思うよ。今度は美香も試してみるよ」
「美香だって空歩を使っていたじゃない。もう神剣術の扱いにも慣れた感じじゃないの?」
「うん、レベルが上がったからだと思うけど、体が思い通りに動くんだよね。嬉しくなっちゃうよ」
「その気持ち、分かるわ。前だったらゴブリンにおびえていたのに今ではレベル58のリザードマンの群れと戦えるようになっているんだもの。私も嬉しいわ」
シャルルはゴブリンに襲われて死を覚悟した時のことを思い出す。そして、その時に優斗に助けてもらったことを思い出した。その時の優斗は白馬にのった王子様のように見えたのを覚えている。そして、シャルルの顔が赤くなる。
「シャルル姉、どうしたの? 急に黙って……」
「……な、何でもないわ。次の獲物を探していたのよ」
シャルルは誤魔化すようにマップを確認して次の獲物を探す。
「800m東に魔物がいるわ。そこに向かいましょう」
優斗は二人が話している間にリザードマンの死体を亜空間倉庫に仕舞う。そして二人のところに戻ってくる。シャルルは歩いてくる優斗に気づいて目をそらす。
優斗は今日朝からシャルルと目が合うたびに目をそらされるのを感じ取っていた。でも直ぐにシャルルが話しかけてくるので何でもないと思っている。
「優斗、この先に魔物の反応があるわ。そこに行きましょう」
「分かったよ。そこに行こう」
三人はシャルルに先導されて魔物の反応のある方向に向かう。魔物の反応は今回もリザードマンの群れだった。ここはリザードマンのテリトリーなのだろうとシャルルは思った。優斗はそのことを知っているが何も言わないでいる。




