100 シャルルと美香のレベル上げ⑧
さっきと今回のハイオークとの戦いでシャルルと美香のレベルは3ずつ上がった。格上の魔物との戦いはレベルを上げるのにはとても良い条件だ。優斗の思惑通り二人は強くなっていく。
「やっぱり剣での戦いの方が迫力があって楽しいよ」
「美香もそう思うんだな。俺も剣での戦いが好きなんだ。でも、空を飛んでいる鳥の魔物を弓で射るのも楽しぞ」
「私には剣があっているわ。お父さんも冒険者時代は剣を使っていたと聞いていたから剣に憧れみたいなものがあるのよね。でも弓にも興味があるわね」
シャルルは自分が剣で魔物を倒していることに満足していた。魔物を殺す度に両親の敵を取っているような気持になっていた。そして今、こうして魔物と戦える力を与えてくれた優斗に感謝した。
「さあ、次の魔物のところに行くぞ。500m先に魔物の反応がある。そこに行こう」
「うん、早く行こうよ」
「美香、そんなに慌てることは無いわ。ゆっくり行きましょう」
美香はさっきの戦いで魔物との緊迫した状態での戦いが気に入ったようだ。直ぐにでも戦いたくて仕方がない様子だった。シャルルも本当は魔物を一匹でも殺したいと思っていた。でも、年上の余裕を見せたかったので落ち着いているように装う。
シャルルは、はしゃいでいる美香が可愛く思えた。自分にも本当の兄弟がいたら孤独にならずに済んだかもしれないと思った。でも、今は優斗と美香がいるので満足している。
三人は優斗が見つけた魔物の反応をした方向に進む。今回の魔物の反応は今までよりも数が多い。10匹の反応がある。それでもシャルルと美香は魔物を恐れない。
何度かウィンドウルフの攻撃を受けたときでも二人を自動防御が守ってくれた。だから、攻撃を受けても傷つかないと言う自信があった。でも、二人は自動防御任せなのも嫌なので空間把握と神剣術の技である回避と見切りを使って攻撃をすべて躱すつもりでいた。
魔物まで50m近づいたところで美香とシャルルはハイオーク10匹の群れに突っ込んでいく。ハイオークは二人に気づきが数で優っているので慌てることなくシャルルと美香を待ち構える作戦に出た様だ。
10匹のハイオークの群れに美香が先に突っ込んだ。ハイオークたちは美香に攻撃をする。美香は直ぐに空間把握で攻撃を読み切って神剣術の回避と見切りの技で攻撃を避ける。そして目の前にいるハイオークの首を刎ね飛ばす。
シャルルも美香に加わった。シャルルもハイオークの攻撃を躱してハイオークの首を刎ね飛ばす。ハイオークの全ての攻撃を二人は見切っていた。ハイオーク10匹がかりでも二人に攻撃を当てることは出来なかった。
あっという間にハイオークの亡骸が地面にころがった。ハイオークたちは考える暇もなくシャルルと美香の餌食になった。
「もう、余裕だね」
「そうね、ハイオークは動きが鈍いから私たちの敵じゃないわね」
「二人ともご苦労さん。もうハイオークにはなれたみたいだね。早くこのエリアを抜けて次の魔物を見つけに行こう」
優斗はハイオークでは二人の相手にならないと分かって次の魔物のエリアに行くことを提案する。そして三人はダンジョンの中心に向かって進む。途中でハイオークに出くわすが全てのハイオークの攻撃を受けることなく二人はハイオークを狩っていった。
そして、森の中を進んでいくとまたハイオークの群れが現れた。二人はもうハイオークでは満足しない。だから普通の戦い方をしない。ハイオーク12匹の群れに二人はつっこんで行く。
そして先ほどの様に直ぐにハイオークを殺さないでハイオークの攻撃を躱していく。美香はレベルが上がって高くなったステータス値をいかしてアクロバティックな動きでハイオークの攻撃を躱していた。たまに体を捻って一回転している時もある。
シャルルも美香の戦い方を見て同じような動きをする。二人はハイオークの攻撃を躱すことを楽しんでいた。そして、十分楽しんだら。一匹ずつ首を刎ねていく。あっという間に12匹のハイオークは首から血を流して地面に転がっていた。
「二人とも、どんな調子だ」
「すごく楽しいよ。体力が上がっているからものすごくからだが軽く感じられるしスキル空間把握で敵の動きが手に取るようにわかるからアクロバティックな動きが出来るんだよ」
「私も見よう見まねで美香の様な動きをしてみたけど楽しいわね。次もこういう感じで魔物を狩ろうかしら」
美香は香港映画に出てくる俳優の様にカンフー使いのような動きをしていた。とてもアクロバティックで見応えがあった。優斗も美香の動きを見てカッコいいと思ったくらいだ。
「そろそろ、3時のおやつにしようと思う」
「今日はおやつまであるんだね」
「ああ、ミゲルが張り切って作ったものだそうだ」
そして優斗は亜空間倉庫からジャンボパフェを出した。それを美香とシャルルに渡していく。
「このパフェに使われている果物は全てダンジョン産のブランド品だ。そしてアイスクリームに使われているミルクもダンジョンで飼育している生乳を使っているそうだぞ」
「それは美味しそうだね。早く食べようよ」
「本当に美味しそうね」
「じゃあ、食べよう」
そうして美香とシャルルは我慢できずにパフェを食べる。するとアイスクリームの味が濃いのが分かった。生乳を魔法で殺菌しているだけのものを使ったアイスクリームのことだけはあると美香は思った。
シャルルもアイスクリームの美味しさに感動していた。以前に優斗が等価交換で購入したパフェをシャルルは食べたことがある。その時のパフェよりも濃厚なアイスクリームの味に興奮する。
「このパフェは美味しいわよ」
「美香もそう思った。これを日本で売ったらたくさん売れるよ」
シャルルと美香はパフェを食べて大絶賛する。
「日本では売ることは難しいと思うよ。仕入先とか聞かれても困るしね。でも、リアースでなら売れると思っているんだ。こういう食べ物を扱う店を出店しようと思っているところなんだよ」
「お兄ちゃん、これは行列ができるお店になるよ」
「私でも並んで食べたくなる味だわ。本当にリアースで作って売るの?」
シャルルはこういう食べ物を普通に売っているお店がリアースにあるのか気になっていた。シャルルは村から出たことが無いので村以外のことには詳しくない。でも優斗が取り出したパフェを売っているお店があるとは思えなかった。
「ああ、これだけじゃないよ。城で食べているものも食堂やレストランで売るつもりだよ。そういう商売をすることを考えている。そしてどこかに拠点を設けて、そこをミミックスライムに任せて自分は悠々自適なスローライフを楽しむ予定なのさ」
「お兄ちゃんはそこまで考えていたんだね。もう異世界での生活を考えているなんて思ってもいなかったよ」
美香は異世界のことを知ってまだ一週間ちょっとだ。それにエンブリオの実を食べて将来リアースに住まないといけなくなってからまだ2日しか経っていない。まだ美香はリアースでどう過ごそうかとか考えていなかった。
「美香は最近異世界のことを知ったからそう思うんだよ。俺はもう異世界で3カ月も過ごしているんだぞ。その間にいろいろ考えた結果さ。俺は商人になって成り上がるつもりなんだ」
「美香も一緒に協力させてね。異世界リアースでどう過ごすかまだ考えている段階だから、その間は暇なんだよね。お兄ちゃんを手伝うよ」
「分かったよ。美香、手伝ってくれ」
「それなら私も手伝うわよ。これから私は優斗と行動を共にするんだから当たり前でしょ」
シャルルは自分だけ仲間外れにされるのが嫌だった。それに優斗について行くと決めたのだ。優斗がやることならなんでも手伝うつもりでいる。
「そうだね。シャルルさんも手伝ってくれるとありがたいよ」
「これでリアースでどう過ごすか少しは楽しみになって来たよ。早くレベル上げを終わらせていろいろ楽しいことをしたいよ」
「私も美香と一緒よ。早くレベル上げを終わらせて王都に行ってみたいし、他のところも見て回りたいわ」
「俺もリアースのいろいろなところに行ってみたいと思っていたからちょうどいいな。シャルルさん、一緒に旅をして回ろうよ」
「そうね。優斗と一緒なら心強いわ」
「美香を仲間外れにしないでよね。美香も一緒についていくんだから」
こうして3時のおやつの時間を過ごして三人はまた魔物を求めて魔の森の中心に向かって歩き出した。




