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009 トカ村

優斗がシャルルに出会って森を出るとそこには草原が広がっていた。シャルルに案内されて草原を40分ほど歩いて進むと目の前に木で出来た塀に囲まれた村が見えてきた。村の入口の門は閉ざされている。


「シャルル、一緒にいる男は何もんだ?」


門の上で村の出入りを見張っているのだろう。30代の男が声を掛けてきた。その男はとても横柄な態度だった。優斗が好きになれないタイプだと直ぐに分かった。赤城たちと似たような雰囲気をその男から感じた。


「この方は優斗さんです。私がゴブリンに襲われていたところを助けてもらったんです。お礼をするためにつれてきました。通してください」


シャルルの返答の何がおかしかったのか男は突然笑い出した。とても失礼な笑い方だった。普通、同じ村の人が魔物に襲われたと聞いたら心配するのが当たり前だ。優斗はますますこの男が嫌いになった。


「ハハハハ。これは久しぶりに面白い話が聞けたな。ブサイクなシャルルでも一応は女なんだな。ゴブリンに襲われるなんてよ。良かったじゃねーか。いくら魔物でも女だと認められてよ。相手が盗賊だったら使い物にならない女だと殺されていただろうな」


男は何食わぬ顔でシャルルをけなす言葉を吐いてきた。シャルルは俯き悲しそうな顔をする。シャルルはけして可愛い顔はしていない。だがそんなことで彼女を侮辱する男を優斗は許せなかった。


まるでシャルルが赤城たちに虐められている優斗のように思えた。この男を叩きのめしたい気持ちにかられる。


「おい、シャルルさんになんてことを言うんだ。門を開けろ」


「おい兄ちゃん。口の利き方がなっていないんじゃないのか? ただじゃおかねーぞ」


男は優斗に怒りをあらわにする。しかし、ウィンドウルフ以下の威圧に優斗が屈することはない。


「ふん。お前みたいな醜く加齢臭がするような男にシャルルさんをバカにするような言葉を吐かれたくないんだよ。口を慎め」


優斗のその言葉に男は目くじらを立てて怒りを表した。


「お前―!! そこで待っていろ! 今からぶちのめしてやる!」


男は門の上から降りて直ぐに門を開けた。そして優斗の前にずかずかと近づいてきて優斗を威嚇する。そしていきなり優斗に殴り掛かってきた。優斗は男の拳を避けて男の腹を蹴り上げた。男は白目をむいて気を失った。


優斗の怒りはそれでも収まらない。男が死なない程度に顔を蹴り上げた。そしてどうにか怒りを収めることができた。シャルルは優斗の行動に驚きを見せる。しかし、優斗は何の罪悪感も見せることはなかった。


優斗の顔はシャルルをバカにした男への怒りを感じさせるものだけだった。


優斗は闇魔法で男の記憶を操り。今の出来事を彼の記憶から抹消した。


(記憶を消しておけばトラブルに巻き込まれることもないんじゃないかな?)


(大丈夫ですよ。良い考えです。マスター)


優斗と男のやり取りを見てシャルルは唖然としていた。優斗のとった行動に言葉が出なかった。そして優斗の強さにあこがれを抱いた。


「優斗さんは強いんですね。これでもガンズさんは村では一番強い方なんですよ」


「この男はガンズと言うんですか?」


優斗は地面に転がっているガンズを一瞥するだけでもう興味は持っていなかった。


「はい、この村の門番です。オークに勝つような人なんですよ。そんなガンズさんを一撃で気絶させるなんて……」


「厄介な男は片付いたみたいだしこのまま村に入りましょう」


「ガンズさんに暴力を振るったんですよ。大丈夫でしょうか?」


シャルルは困ったような顔をする。人の容姿をからかってくる奴だ。そんなやつを優斗は許せなかった。今まで優斗自身も醜い容姿で虐められてきたのだからしかたがない。


ましてやシャルルは女性だ。女性の顔を悪く言うなんて男の風上にも置けない奴だと優斗は思った。ガンズが優斗にやられたのは当然の報いだった。優斗は一切罪悪感も持っていなかった。


「大丈夫ですよ。何か言われたらその時は俺が対処しますから」


「分かりました。私の家に行きましょう。すこし遅いですがお昼ご飯を作ってご馳走しますから」


「それは楽しみです。よろしくお願いします」


優斗はガンズを門の中に横たえて門を閉めた。シャルルは門が閉まるのを確認してから歩き出す。その後を優斗が歩いてついていく。村の中に入ると木でできた粗末な家がいくつもあった。


マップで確認すると人口は400人以上いるようだ。優斗は村を見て異世界に来たことを再認識した。どう見ても現代的な作りではない家が見える。全ての家が木でできている。石造りの家など一軒もなかった。


畑には麦が植えられているのだろうか。まだ収穫時期には至っていないのだろう。青々としている。村は畑も木の塀の中にあった。魔物対策なのだと優斗は思った。


「小さい村だけですけど、ほのぼのとしていて良いところなんです」


「そうですね。ほのぼのとしていますね」


「私の家は少し奥の方にあります。行きましょう」


「はい」


シャルルは村の中を進んでいく。優斗がよそ者だからなのか村人がこちらを見ている。


「キャー! あの人見てかっこいい」


「わっ……。すてきなひとね」


「なんであんな醜いシャルルと一緒にいるのかしら?」


「そうよね。私たちと一緒の方が楽しいと思うんだけどな」


村人たちがシャルルと一緒に歩く優斗を見てひそひそ話している。特に若い娘たちが奇妙な反応を見せていた。シャルルと優斗を交互に見て頬を赤らめたり。優斗と目が合うと目をそらしたりするのだ。


「なんだかすごく注目されていますね」


「それは優斗さんの見た目が素敵ですから注目を集めているのだと思います。勿論内面も素敵だと思いますよ。私も優斗さんと話すだけで緊張しています」


そんなことを言いながらシャルルの頬は赤く染まる。全然お世辞を言っているようではない。シャルルは本心から優斗を素敵な人だと思っている。


「そんなに緊張しなくてもいですよ。シャルルさんの方が年上なんですから」


優斗は女性から素敵な人だと言われたのは初めてだったので嬉しかった。ダメもとで自分自身を創造して良かったと思った。よくラノベやネット小説で太っている主人公が痩せただけでかっこよくなるという話があるが実際にそんなうまい話があるはずがないと優斗は考えた。


それで創造で自分を根本から作り直したのだ。そのおかげで素敵だと言われるほど整った顔立ちを得たのだ。そう決心した自分の考えが間違いではなかったと優斗は思った。

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