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白いカブトムシの噂

前作から2年半くらい期間が開いたので初投稿です。

「白いカブトムシを見ると、好きな人と付き合えるんだってー」

 同じクラスの女子の噂話を聞いた私はなるほどと思った。


 グラントシロカブトは米国に生息する白い体のカブトムシである。たかが虫一匹のために米国に渡って広大な茂みを捜索しようなどというバイタリティの持ち主ならば、さぞ異性、同性からを問わずに好かれるに違いない。

 

 もし、そのような方法で恋の願いを叶えたいというのならば、小学五年生の彼女らには主に経済力の観点から、大変困難な恋路になること間違いなしだが、私は陰ながらエールを送ってやりたいと思う。

 米国からグラントシロカブトを持ち帰った暁には意中の相手も君たちの虜となるに違いない。

 

 ちなみにグラントシロカブトの採集は禁止されているとかなんとか。


 自宅に帰った私は母にそのことを話した。すると母は懐かしそうに言った。

「お母さんとお父さんも白いカブトムシのおかげで結婚したのよ」

 

 母は36歳で私を産んでいるのでこの時47歳である。おまけにひどく太っている。そんな母の恋模様を想像するなど苦痛でしかなかった。私は耳を塞ぎたくなった。

「あと、黄色いカブトムシを見ると幸せになれる、って言うわね」

 

 耳寄りな情報のおかげで十数年前の両親の職場からコスタリカに想像の景色が移った。黄色い体のヘラクレスオオカブトは南米コスタリカに生息する。なるほどコスタリカのジャングルでヘラクレスオオカブトを鷲掴みにする行動力の持ち主ならば、既に幸せもつかみ取っていることであろう。

 幸せは歩いてこないと歌われていることからも納得できる。


「赤茶色のカブトムシだとどうなる?」

 気になって聞いてみた。

「赤茶色? 聞いたことないわねえ」

 考えてみればそうだ。ホームセンターに行けば売っているのだから。ゴキブリとほぼ同一の見た目の日本のカブトムシに願いを叶えるパワーなどないだろう。

 奴らは私がなむなむと手を合わせて祈っても悠然とゼリーを食っているに違いない。


 やはり国内で調達できるものと異国の珍しい虫との間には越えられない壁があるらしい。関係ないが、昔の米国の映画で日本製の機械は最高だなどと言うセリフがあったのを思い出した。


 そのうちに父が帰ってきて、母がカブトムシの話を振った。

「ああ、懐かしいな。高校時代に流行ってた」

 父の高校時代は30年近く前である。私が数々の虫の知識を得るきっかけになった昆虫相撲ゲームが流行したのは2、3年前だ。それとも流行は繰り返すというファッション業界の言葉は昆虫界隈にも当てはまるのだろうか。


「そうだ」

 夕食時に父が何かを思いついた。

「今度の夏休み、秋田でカブトムシ獲ろうか」

 私はこれをお断りした。秋田からのお上りさんである父とは違い私は根っからの都会っ子である。ゲームの中とは違い、昆虫と触れ合うというのは御免こうむりたかった。


 夏休みの帰省時には従兄とテレビゲームに興じることに去年から決まっているのである。

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