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空色魔力の転生者 ─泡沫の命と魔法の世界─  作者: ゆずあめ
第2章 エデリア王立学園
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第47話 まなびちからテスト

ンッ!




 5月。春の暖かさを気持ちよく感じるようになると、アリス先生から恐ろしい言葉が放たれた。



「え〜、皆さん。学園生活が始まって1ヶ月が経ち、そろそろあのイベントの開催日が近づいて参りました。ええ、そうですね。学力テストと実力テストですね」



 終わった。まともに授業を受けてない俺、終わった。


 口をポカーンと開け、赤点を取った際にどのような勉強法を使うか脳内でシミュレーションしていると、いつの間にか午前の授業が全て終わっていた。



 ダメかも、1年生。



「が、ガイア君! その......テスト、大丈夫......ですか? その、いつも気持ちよさそうに寝ていますし、心配になりまして......」


「アリアか......俺はもう終わりだ。歴史も地理も魔法理論も、何もかもダメだ。あ、算術は出来るが」


「算術が出来るなら大丈夫ですよ! 私は、その......掛け算が分からなくて......でも、ガイア君なら大丈夫です!」



 大丈夫じゃないに決まってんだろ。



「大丈夫じゃないに決まってるでしょ? 1教科だけ出来ても他の教科の点数が低ければあまり意味がないわ。ガイア、これから勉強よ。私がミッチリ教えてあげる。0から100まで」



 流石ミリアだな。俺と全く同じ思考をしている。


 いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。何とかして点数を稼ぐ為に、切れる手札を用意しなければ。



「まあまあ。ゼルキア、未来視で問題を──」



「見れないよ。なんかね、2秒先くらいまでしか見れなくなっちゃった」



「......はい?」


「僕もガイアと同じことを思ったんだけど、僕が弱ったのかな。どんなに頑張っても5秒先が限界で、平常時は2秒先まで。それくらいしか見れないんだ」


「なんで?」


「分かんない☆」



 でしょうね。


 にしても弱った原因が分からないな。ゲームで言えば下方修正のようなものだが、ゼルキアの感覚的に『出来なくなった』ではなく『弱った』と言ったことから、未来視自体が弱った訳では無いと思う。


 う〜ん、まずいな。これで正攻法を取らざるを得なくなってしまった。



「ガイア、潔く私の特別授業を受けなさい......フフ」


「おい、エロいことしようとしてんの見えてんぞ。いつからミリアは、こんな積極的な子に変わっちまったんだ?」


「分からないわ。でも、気付いたらガイアのことで頭がいっぱいなの」


「恋だな」


「でしょ? それが原因かも」


「ん〜、なんか違う気がするが......いいや。喫茶店行こうぜ。アリアも来るか?」



 ガッツリ2人の世界に入っていた俺はアリアを引き入れると、アリアは顔を真っ赤にして頷くだけだった。


 これはアレだな。思春期だな!


 思春期だとすれば、ミリアが少し変わったのも辻褄が合う。うん、絶対に思春期だ。思春期女子だ。




「どれにしよっかな〜」


「あ......きょ、今日はこちらでお召し上がりで?」



 いつもは顔を合わすことが少ない、学園内喫茶店で働いているお姉さんに話しかけられた。


 普段はパンを買ってベンチで食べてるから、メニューを選んでる姿が珍しいのかな。



「はい。それじゃあ俺はこの、特盛りステーキセットで」


「私はBセットで」


「わ、私も」


「僕もBセットで」


「ボクも同じのをお願いします!」


「特盛りステーキセットが1つと、Bセットランチが4つですね。かしこまりました」



 カウンターで注文した俺達は、2つのテーブルをくっ付けて6人分の席を作った。


 1人分の空いた席にセナを出し、俺はセナの周囲に魔法で風の保護膜を作った。こうしないと、セナの毛が空間中に舞うからな。


 配慮をせねば。



「ワンちゃんですか? どうしてここに?」


「俺のペットだ。特盛りステーキなんて食べ切ったらお腹を壊しそうだし、セナにも分けてやるんだ」


『おにく......おにく?』


「そう、お肉だぞ」



 小型犬サイズでテーブルに両前脚を置いたセナは、犬が喋ったことに思考がフリーズしたアリアを一瞥し、俺の膝の上に乗ってきた。



「ガイア君のペット、不思議だよね」


「喋る犬ってだけで解剖する価値があると思う」


「魔王みたいな思考をしてるな、ゼルキア」


「だって魔王だし。あはは!」



 知ってるよ。前世ではちゃんと魔王として魔物を、魔人の国を治めてたのを俺とミリアは知ってるさ。


 それから数分すると、注文を取ったお姉さんが両手に大きなお盆を持ってやって来た。


 そしてテーブルに置いてくれたのは、開いた両手2つ分くらいの大きさのステーキと、切りそろえられたパンが4切れ、更にコーンスープとサラダが乗っていた。



「お待たせしました。特盛りステーキセットです」


「......思ったより少ないな」


「え?」


「いや、何でもないです。いただきます」


「は、はい。そしてこちらが、Bランチセット4つとなります......」



 なんと、お姉さんの後ろに4人分のランチが空中に浮いていた。風の魔法なのかな。軽く上下に動いており、スープ系が入っていれば零れそうな挙動をしている。



「魔法の扱いが雑ね。貴女の魔力なら、自身の体と魔法を繋げれば安定するのに。勿体ないわ」


「え、えぇ?」


「何でもないわ。いただきます」



 これは......ミラーリング!? まさかミリア、俺と同じことをして俺の気を引こうと......?


 あ、違う。視力を強化してお姉さんを見てるし、純粋なアドバイスをあげただけだじゃん。なんだ、俺ってばミリアに期待しちゃったよ。


 ん? 俺の方がミリアを意識してる?



『がいあ、おにく』


「はいはい。俺と半分こだぞ」


『いただき......ます............んふふ〜!』



 切り分けたステーキを小皿に分けてあげると、セナは俺の隣で美味しそうに食べ始めた。隣のテーブルの人達がギョッとした目で見てる気がするが、多分大丈夫だろう。


 だってお姉さん、何も言わなかったし。



「美味しいな。ミリアも食べるか?」


「1切れだけちょうだい」


「ほいよ......あ〜ん」


「あ〜ん......うん、美味しいわね。ワイバーンの肉かしら」


「へぇ、ワイバーンって食べられるのか」


「ギルドでも《純金級(ゴールド)》以上の冒険者なら、5人以上集めて討伐依頼を出してるじゃない」


「知らないな。それよりミリアのも1口くれないか?」


「いいわよ、お返しね。はい、あ〜ん」


「あ〜ん。うん、魚」


「美味しい?」


「美味しいよ」




 ハッ!!!! 


 気付いたらほぼ全員から注目を集めていた!! 遠く離れた反対側の席に座る生徒も、全員が俺とミリアのことを凝視している!



『ばか......っぷる』


「「違う!!」」


「どうかな? 沢山の人が居る中で、ここまで甘い空間を作り出しておいて、バカップルじゃないとは言えないでしょ」


「うんうん。ボク、かなり慣れてきてはいるけど、今の2人の空気は甘すぎたかな」


「あぅ......」



 やっぱりダメだな。俺とミリア、絶望的に外食に向いていない。隙あらば話し込んだり、食べさせあったりと、場違いなことをしてしまう。


 もうこの喫茶店で食べることは無いな。



『がいあ、おかわり』


「ダメだ。これは俺の。放課後まで我慢しなさい」


『む〜......わかった』


「セナ。ごちそうさまを言ったら影に入りな」


『ごちそう、さま......でした』


「よ〜し良い子だ。賢いぞ〜」



 セナのお世話を終えた俺は自分の分を食べ終えると、ちょうどアリアが食べ終わったのと同じタイミングだった。



「「ごちそうさまでした」」



 美味しかった。ワイバーンと聞けば今は亡きアヒル君を思い出すが、彼の来世は明るいこと間違いなしだからな。


 気が楽だ。



「さて、アリア。お前が感じる中で、テストで出そうな科目の問題を出してくれ。クイズ形式で答えたい」


「わ、分かりました......じゃあ、現在の国王は?」


「アルガス・デル・レガリア」


「正解です。では7×8は?」


「56」


「分かりませんが、多分正解です。では貴族の爵位は幾つでしょうか?」


「公侯伯子男の5つ」


「正解です。では、光を生み出す魔法の呪文は?」


「『光よ、我が魔力を糧に顕現せよ』」


「残念、違いま......え? どうして使えてるんですか!?」



 しまった。ついドヤ顔しながら魔法を使ってしまったが、呪文を間違えていたようだ。



「シーっ、静かに。それより正解はなんだ?」


「『我が身を照らせ、天上の光』よ。ガイアは詠唱に弱いということが分かったわね」



 俺はアリアに質問すると、ちょうど食べ終えたミリアが代わりに答えてくれた。



「へ〜、面倒臭い呪文だな。長ったらしい」


「人間は愚かよねぇ。非効率的なことに効率を求めちゃって」


「ホントにな」


「2人とも〜、色々と出てるよ〜」



「「う゛うん」」



 だって呪文とから要らないし。間違ってるとは言わないが、スマートに出来ることを伝えようとしないのは気に食わない。


 俺やミリア、ゼルキアが使う無詠唱魔法は、悪人に伝われば脅威的な殺傷武器になるだろう。それは分かっている。


 だが、使えると言ってしまえば社会のルールが壊れそうなんだ。これがもどかしくて仕方がない。



 俺達が原因で戦争勃発とか、即刻処刑されるぞ。



「詠唱は何度も唱えて覚えるしかありません。そのま......頑張りましょう」


「はぁ......頑張るしかないか」


「大丈夫よ。私がサポートするもの。頼ってちょうだい」


「......え?」


「どうしたの?」



 は、初めてだ。ミリアに『頼って』と言われたのは。


 本当に頼ってもいいのだろうか。俺がもたれかかったばかりに、2人で倒れるなんてことはないだろうか?



 違う、違うだろ。セナも言っていたじゃないか。『ガイアはミリアに頼りたい』と。もっと頼れ、ミリアを。



「頼らせてもらう。全体重をかけるから、受け止めてくれよ?」


「ふふ、任せなさい。夫を支えるのは妻の役目だもの」


「「「妻......」」」



 あっ、あらぬ所に被害が。すまん、御三方。許せ。



「さてと、午後の授業は真面目に受けるか。教科はなんだ?」


「剣術よ」


「よし、寝よう」


「ガイア。時に私は鬼嫁にもなるの」



 黄金の魔力を炎のように出したミリアの形相は、般若と言うのがしっくりくるほど、怒りに染まっていた。



「冗談だ。流石に真面目に受けるさ」


「手加減は忘れちゃダメよ?」


「勿論」



 俺の肩に頭を置いたミリアを撫でてから席を立った。



「放課後にイチャつけ、このバカップル」


「ハーレム王(笑)さんが何言ってんだか」


「ハッ! 僕に好意を抱いている女子、0人って話でもしてやる!」


「ユーリに聞かせてやれ。興味あるそうだぞ」


「じゃあユーリ、君に好意の何たるかを──」


「えっ! ひ、酷いよガイア君!」




 ズルズルと引き摺られるユーリを見送りながら、俺は5人分の会計を済ませ、教室に戻った。



 さぁ、テスト勉強に力を入れるか!

ファッ!


テストは学力と実力(実技)の2つです。つまり、そういうことです。(どゆこと?)


では、次回もお楽しみに!

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