第37話 転生者と元王女と元魔王と鬼と狐娘
1ヶ月もジャンル設定間違えていたせいでタイトルが暴れました。
「ガイア君。こんな時間に帰ってくるとはいい度胸だね。しかも君、授業をサボったそうじゃないか」
「すみませんでした。本当ならもう少し早く帰れたんですけど、ギルドで時間食っちゃって......」
俺が寮に帰った頃には、もう深夜も深夜。最早早朝とも言える時間になっていた。
理由は2つ。1つ目は天鬼のことだ。俺の新たな道を照らしてくれた天鬼と言い争っていると、もう既に日は落ちていた。
2つ目は、ギルドで大量のゴブリンの討伐証明と、持ち帰ったオーガの頭について、サブギルドマスターと話していたらこの時間になっていた。
ギルドを出たら、全速力で寮まで帰ったんだ。普通の人なら朝帰りだぞ、朝帰り。
「はぁ。君には罰があるから、覚悟しておくことだ」
「分かりました」
「それじゃあ、明日......というか、今日の朝──」
レイさんに罰の内容を聞かされた俺は、思いの外優しい罰に小さく笑ってしまった。
「笑うとは、まさか罰を増やされたいのか?」
「すみません」
「いいよ。それと......おかえり。無事で良かったよ」
眠たいだろうに、優しく微笑んで出迎えてくれたレイさんには、頭が上がらないな。
「ただいま戻りました。それでは、俺は風呂に入ってから寝ます」
「あぁ。おやすみ」
「おやすみなさい」
そして風呂に入った俺は、今から寝ても朝に起きるのは無理だと判断したので、天鬼から奪った......ごほん。本人は譲ると行ってくれたんだ、有難く頂戴した刀を持って外に出た。
「打ち合おう、天鬼」
『是非。ご教授願います』
それから、天鬼には刀の技や型など、元々持っている技術の木に枝葉を伸ばしてやっていると、朝日が昇りはじめた。
今日はちゃんと学園に行こう。
「ふわぁ〜あ。おはようガイア君」
「おはようユーリ」
「うん......え? ガイア君!? 帰ってきてたの!?」
「心配掛けてすまなかった。ごめん」
眠たげに目を擦っていたユーリは、俺が帰ったのを認識した瞬間にバッチリと目を覚ました。というか、目ん玉飛び出そうなくらい驚いてるな。
「いいよ。帰ってきてくれて嬉しいし。ハッ! まさか、自主退学す「しないぞ」......ふぅ、良かったぁ」
俺がレイさんに与えられた罰は、『朝、降りてきた皆に挨拶をする』という内容だ。
これはこの男子寮に住む全員に適応されるので、必然的に登校が遅くなるのは致し方ないだろう。
「おはようガイア。僕もサボりたかった」
「......チッ」
え、なに。ぜルキアと一緒に降りてきた男子生徒に舌打ちされたんだけど。俺、君に何かしたっけ?
「初めまして。それとおはようございます」
「どけ、邪魔だ」
「ガイア、その子は初めましてじゃないよ。確か、合格発表の時に絡まれたと思うんだけど」
「え?......あぁ! 俺の婚約者を横取りしようとした奴!!!」
俺は記憶の倉庫からぜルキアのヒントを頼りに思い出すと、大声で彼に向かって言ってしまった。
「その呼び方はやめろ!」
「ごめん。ところで君、名前は?」
「うるせぇ!」
「ガルド・ラスタだよ。ガイアと同じ、男爵家の出自さ。でも少し違うのは、彼は正当な後継者ってだけかな」
「なるほど。ぜルキアは仲良いのか?」
「そりゃあもう、準マブさ。ルームメイトだし」
「なるほどな。だったら、仲良しフレンドにもなるか」
部屋の立て札にも書いてある。『ぜルキア・アーレンツ』『ガルド・ラスタ』と。
っていうかコイツ、男爵家という理由でミリアに近付こうとしたのか? 政治的な面だと男爵家にしか利益が無いんだし、受け入れられる訳が無いだろうに......勇者かよ。
もしかして、ガルドが真の勇者じゃないのか?
「ガイア君。全員に挨拶終わったんだし、行こうよ」
「そうだな。待たせてすまん」
「謝らないで。『すまん』より、『ありがとう』を聞きたいな」
「ありがとう。待っててくれて」
「うん!」
ニコニコと笑うユーリは、何も知らない人が見たらただの美少女にしか見えないんじゃないか? ユーリはそこら辺の女の子より可愛い顔をしているから、男と知ってても狙う奴が居そうだ。
頑張れユーリ。お前は男だ。胸を張れ。
◇ ◇
昼休みに入ると、俺とミリアは学園内にある喫茶店でパンを買い、昨日アヤメに襲われたベンチに座った。
「昨日は冒険者してた」
「そうなのね。戦果は?」
「天鬼を仲間にした」
「天気? 雨でも降らすの?」
「違う違う。鬼神とか言われるらしい、最強の鬼」
「......え?」
俺は皆がするような質問をミリアがしないのを見越して、彼女が欲しい情報を渡した。
「待って。それって、過去の戦争でレガリア王国で1万人。ティモー帝国で5万人を殺した魔物って、昨日習ったのだけれど......本物?」
「どうなんだ?」
『はい、ガイア様。1万人と言ったのは、1日で殺した人数の話ですので、あの戦いでの合計戦果は6万弱かと』
「だってさ」
「......私、疲れてるのかも。膝貸してちょうだい」
「他に見られないようにな」
ポンっと俺の膝に頭を置くミリア。そのサラサラの白い髪を撫でてあげれば、可愛く頬を擦り付けてくれた。
「......他の女の匂いがする」
「アヤメかな。昨日殺されかけたんだ。その時、膝に座られたからさ」
「ソイツ殺した? 殺したわよね? ねぇ?」
ギロっと赤い目で見つめてくるミリアの体からは、金色のオーラが溢れ出ていた。
「ツバキさんの妹だから、暗殺者を辞めさせた」
「......チッ、あの女狐め」
「女狐って......俺はミリアしか愛さないぞ?」
「でも、ツバキはガイアのお気に入り。盗られるかもしれない」
「お気に入り? あ〜、でも確かに気に入ってるかも」
またモフりたいんだよな。あの狐耳。
「......次に会ったらあの女狐の耳を引き裂いてやる」
「やめんか! 別に恋愛感情を抱いてる訳じゃないんだし、今は放置でいいだろ?」
「ダメよ。敵は減らさないと」
「敵? まさか、お前にも暗殺者が?」
「ち、違うわ。私には来てない。この敵は言わば........................」
「溜めが長いな」
「お、思い付かない.....でも、ガイアが心配することじゃないから安心して」
気になる。ミリアにとっての敵とは何だ? 出来ることなら、俺も一緒に排除したい。幸せな生活を手に入れる為には、それだけの努力が必要なんだ。
その為には、行動しないとダメなんだ。
「やっほ、お2人さん。イチャついてるとこごめんね?」
「本当に悪いわね。今直ぐ立ち去りなさい」
「よっ、ぜルキア」
タイミング悪く訪れたぜルキアのせいでミリアが膝枕をやめ、普通にパンを齧り始めた。
心做しか頬が赤く見え、俺の心はキュンキュンした。
「天鬼、出てきていいぞ。但し、気配は出来る限り消せ」
『お心遣い、感謝致します』
俺の影が伸び、2人の前に初めて姿を現した天鬼は、何も言わずに刀を横に置き、跪いた。
おぉ、流石にぜルキアの魔力を見たのか、天鬼の体が僅かに震えている。
「紹介する。昨日出会って仲間にした、天鬼だ」
『ガイア様。お名前を付けても構いませんよ?』
「あ〜、ガイアに名付けは......」
「いいんじゃないかしら。素敵な名前を付けてくれるわよ? 彼は。私の名前だって、ガイアが付けてくれたし」
「えぇぇぇぇぇぇっっっ!?!?」
ぜルキアは声が大きいなぁ。ビックリするぐらい声が通る。誰か来たらどうする気なんだ?
『......ガイア様。何者かがこちらを見ています』
「多分アヤメだろ。天鬼......いや、ヒビキ。お前とも関係する人物だから、手を出すなよ」
俺は辺りを見回すと、俺達から離れた位置に生える木に隠れる、黒い狐の尻尾を見付けた。
可愛い尻尾だな。
「来い、アヤメ」
「ここに」
「「......え?」」
暗殺者というより、忍者のような登場の仕方に驚いた2人を他所に、俺はアヤメに視線を定めた。
「結果は?」
「組織の脱退は完了しました。ですが、昨夜から視線を感じます」
「予想通りだな。ヒビキ、最初の仕事だ」
『なんなりと』
「アヤメを守れ。敵は確実にアヤメを殺しに来る。だから、そのタイミングで敵を無力化しろ。だが殺すなよ? 後始末は俺がやる」
『御意に』
ヌルッとアヤメの影に入り込んだヒビキ。そしてどうやら、1度入った人物の影を共有出来るらしく、報告の為に俺の影から顔を出すことも可能のようだ。
強いオーガって、こんなことが出来るのか? どういう原理で?
「よし、後は俺の問題だけだな。友達作り、頑張るか」
活動報告にも書きましたが、第1話から36話まで、異世界恋愛として投稿されてました。もう、乾いた笑いしか出ませんでした。(´;ω;`)
次回『おフレンドの思し召し』お楽しみに!




