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第14話 妹がブラコンになった

ちまちま更新です

 


 ──お兄ちゃん、遊ぼ!

 ──お兄ちゃん、魔法見せて!

 ──お兄ちゃん!




 俺、8歳。サティス、5歳。


 サティをずっと可愛がっていると、遂に発覚したのだ。例のアレが。


 これは昨日の話である。

 食事中の何気ない家族の会話のワンシーンだ。



「サティ。サティは将来、どんな人と結婚するんだ? パパか? パパと結婚するか?」


「ううん! お兄ちゃんと結婚する!」


「だってさ、ガイア」


「困るよ。僕はもう、好きな人がいるから」


「「「え?」」」


「あっ、しま──」

 


 はい。ブラコンなのはもう、周知の事実だった。

 今回発覚したことは、俺が既に好きな人がいるという事だ。



「ど、どこの子が好きなんだ!?」


「吐きなさい! 誰が好きなの!?」


「お兄ちゃん!?」


「いや、その......言えない」



 王女なんて口が裂けても言えない。

 赤ん坊の頃の俺に言った冗談が本気だなんて、両親には絶対に言え......言いたくない。


 そしてここで、父さんが全てを悟った顔をして言った。



「まさか......まさか?」


「うん......そうだよ」


「サティスが好きなのか!? ガイア!!!」


「え、違うけど」



 確かに俺はシスコンかもしれないが、サティを異性としては見れないし、ミリアが待っているんだ。他の人に目を移りかんかしたら......ミリアに殺されるぞ?


 ああ見えてミリアは愛情深いからな。裏切れば死が待っている。



「じゃあ誰なんだ? ほれ、パパに教えてみ?」


「嫌だよ。しつこく聞いてくるんだったら、嫌いになるよ?」


「ぐっ......はぁっ......!」


「お兄ちゃんお兄ちゃん。サティ?」


「だから違うって。サティに対する『好き』と、ミ......あの子に対する『好き』は違うから」



 あっぶね。普通にミリアって言いかけた。

 俺のサティ対する好きは『Like』であり、『Love』ではない。そこを履き違えてはいけないぞ、2人とも。



「ふふっ! ガイアはどんな子が好きなの?」


「可愛くて優しい、時々ツンケンした言葉を使っちゃうけど、基本的に柔らかい言葉遣いで話してくれる子」


「ぐ、具体的ね......本当に居るの? そんな子が」


「うん、居るよ。その為に僕は生まれてきたもん」


「「おぉ〜」」



 待っていてくれ、ミリア。まだ時間はかかるかもしれないが、必ずミリアを迎えに行く。お前の事だし、全力で俺を探し回っている可能性もあるが、絶対に逢おう。


 ......そして今度は、ちゃんとした人間として生きよう。



「むぅ〜! お兄ちゃんはサティが好きだもん!」


「はいはい。サティのことも好きだよ〜」


「お兄ちゃん!!!」



 適当に対応した俺をキッと睨むサティだが、優しく微笑んで頭を撫でてやれば、光の速さで笑顔になった。

 もう、俺が撫でれば無条件に喜ぶんじゃないか?


 流石にそれは無いか......いや、ありそうだな。まぁいい、可愛いし。



「それでガイア。誰なの? 力になりたいから教えてちょうだい」



 優しく、されど強く。母さんの発した言葉には逆らってはいけない気がした。



「王女。第3王女の、アミリア・デル・レガリア」



「「ほ............本気?」」


「本気本気。本気と書いてマジと読むよ」


「そうか......まぁ、無くはないからな。頑張れ」


「うんうん。ガイアなら、多分いけるよ!」



 信じてない、というより信じられないか。


 それもそうだよな。だってまだ、ミリアの姿も見ていないし、どうやって王女を好きになったのかすら分からないだろうから。


 でも、これはやり遂げねばならぬ。

 アミリアと出逢い、結婚せねばならぬ。



「あ、そうだガイア。10歳になったら学園に入れようと思うんだが、問題無いか?」


「学園って?」


「王立学園。あそこならガイアの魔法の才能が分かるかもしれないし、友達も作れるかもしれない。ガイアはあまり、同い年の子と仲良くないだろ?」


「まぁね。サティを虐めるような奴ばかりだし」


「あぁ。だから是非、この機会に友達を作ってくれ」



 学園か。ミリアは......アミリアも入学するのか?



「そこはアミリアも入学するの?」


「アミリア“様”だ。言葉遣いには気を付けろ」


「ごめんなさい。それで、アミリア様も入学するの?」


「ん〜、どうかな。多分入学すると思うぞ? 一応、王国にある学園で最高峰の環境だし、それこそ友達作りの為に来るかもしれん」


「じゃあ行く。いつから?」


「気が早いなぁ。多分、ガイアが10歳になって、2ヶ月くらい後だ」


「分かった」



 学園に入るメリットは、大きく分けて3つ。

 1つ、ミリアやゼルキアと出会える可能性がある。

 1つ、俺の持つ、ありとあらゆる実力の程度が分かる。

 1つ、サティの兄離れが出来る。


 俺の頭に勉強や友達作りなんて思考は存在しない。

 全ては前世で出会い、俺という、確かな人間の心に刻まれた、大切な約束の為に行くんだ。


 例え出会えなかったとしても、アミリアは絶対に落とす。きっと沢山の人との奪い合いになるだろうが、絶対に勝ってみせる。


 その為なら俺は......全力を使うことも吝かではない。



 そして翌日。



 この日から俺は、農場の前で父さんに剣の指導をして貰うことになった。その理由としては、『学園では剣術も習うから』とのこと。



「まずは、この木剣で父さんに打ち込んでみろ」


「いいの?」


「あぁ。全力で来い」


「......本当にいいの? 怪我するよ?」


「大丈夫だ。ガイアの力で怪我をする程、父さんは弱くないぞ」



 マジで? マジで言ってます? 全力で身体能力を強化すれば、この木剣はそこらの真剣よりも強くなるぞ?

 ......さ、流石に手加減はしよう。それに、本来の肉体を全力で動かさないと、基礎力が身につかないからな。



「いくよ!」


「おう!」



 父さんは片手で剣を握ると、姿勢を低くして構えた。

 良い構えだ。その型はレガリアでも流行っていたからな。オーソドックスと言えばそうだが、定着するには訳がある。


 この型は基本、正面からの打ち合いには強い。

 きちんと正眼に見ることで、相手の剣もよく見えるから。


 ただし、弱点もある。


 それは圧倒的なまでに後ろからの攻撃に弱い。

 あの構えで不意を突かれた場合、足を回転させて体の向きを変えないといけないから、どうしても対応に遅れる。


 まぁ、これはきっと、学園で習うだろう。

 基本こそメリットとデメリットが分かりやすいんだ。

 教えるには絶好の教材になる。



「せいっ!!」



 ガンッ!!!



「重っ!」



 右足を軸に、左足を踏み込みながら斜めに振り下ろすと、剣の重みと全体重をかけられるので、見た目以上のパワーが出る。



「そこ!」


「ふっ! おぉ、やるなガイア! 才能があるぞ!」


「ありがとう。でも、これはまだ誰でも出来るよ」



 これは理論だ。文系、理系、筋肉系。この内の誰もが出来る、簡単な打ち込み。


 才能と言うのは、実戦でこそ現れるものなんだよ。



「よ〜し。大体の力は分かったぞ。ここからは父さんも剣を振るから、受けれそうなら剣で受けて、それが無理なら避けろ」


「はい!」


「良い返事だ。戦いに於いて1番大切なのは、体に傷をつけられないことだからな」


「分かった!」



 知ってます。あの毎日毎日戦争を繰り返すウンチみたいな時代を生きた俺にとって、腕に1本の傷を作っただけで前線から引いた事もあるからな。


 戦場は土が舞うからな。病原菌が入ったら終わりなんだよ。



「頑張れ、お兄ちゃん!」


「はいよ」



 おっと、ここでサティスが来たが、どうやら本当に応援する気のようだ。

 あのお兄ちゃん大好きワガママっ子のサティスが黙って見るとは思えないが、今回ばかりは違うらしい。


 だって、真剣な眼差しをしているから。



「サティス、邪魔しちゃダメだからな」


「応援するだけ!」


「ならいい。サティスもよく見ておけ」


「うん!」


「じゃあ、始めるぞ」



 コクっと頷いて応えると、父さんはゆっくりと足を前に出し、優しく振り下ろした。


 ......が、俺は妹の前ではカッコイイところを見せたくなるお兄ちゃんなので、父さんの剣を軽く弾き、左手で父さんの剣を奪い取ると、右手の剣先を首元に当てた。



「ガ......イア?」


「真剣にやってよ」



 サティにカッコイイところを見せられないだろう?



「す、すまない。もう一度だ」


「うん」



 次は中々な速度で剣を振り下ろしてきたが、速いということは重いということ。振り切った先の剣を左足で踏みつけると、またもや簡単に一本が取れてしまった。



「お兄ちゃん、凄い!」


「だろう? お兄ちゃんはな、強い父さんの息子だから強いんだぞ。そしてそんな父さんの娘であるサティも、強いはずだ」


「サティも強いの?」


「当たり前さ。優しい母さんと強い父さんの娘なんて......最高の存在だろう」



 優しくて強い。それに可愛いも合わされば無敵だ。


 あの可愛い熊の耳もトレードマークになるし、サティの可愛さは全世界に広まることだろう。うん。きっとそうに違いない。



「父さん。父さんが教えたい剣術って何?」


「どういう事だ?」


「そのままの意味。実際の戦闘で使うような剣術なのか、打ち合い稽古みたいな剣術なのか。剣にも色んな道はあるでしょ?」


「まぁ......よく知っているな」


「父さんがいっぱい頑張ったんだって、母さんが言ってた」


「母さんが......そうか!」



 よし、落ち込みかけてた父さんの救助に成功した。

 これで明日からも打ち合いと読み合いの相手になってくれるだろう。


 久しぶりの剣だ。いっぱい楽しまなくちゃ。




 そうして毎日、雨の日も風の日も俺と父さんは剣を打ち続け、サティスはそれをじっと見学する日が1年も続いた。


 ほぼほぼ全勝で終わらす姿に、サティスのブラコンは着々とレベルを上げた。

今回から前書きとか書いていきます。

ここまでは一気に投稿してたので書いてませんでした。


次回も楽しんでくれると嬉しいです!

ブクマ・☆評価等よろしくお願いします!

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