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最終話 未来に羽ばたく


 アインが産まれてから8年が経った。


 白に薄い空色のグラデーションがかかった髪を短く切り、キリッと勇ましい青の双眸を輝かせたアインは、家の前で剣を振っていた。



「朝から鍛錬か。アインは元気だな」


「父様! 今日、街に出ていいんですよね!?」



 大きな欠伸をしながら家から出てきたのはガイアだ。

 まだアインより少し背が高いくらいだが、生きた年月は他の人間と比べ物にならない。


 安倍くんを呼び、ラフラの実を与える姿はアインの憧れだった。


 そして安倍くんが朝ごはんを食べ終わったタイミングで、これまたガイアと同じ、歳を一切感じさせない姿のミリアが扉を開けた。



「もうそんな時なのね。時間が過ぎるのはあっという間ね。アイン、私からは一言よ。楽しみなさい」


「だな。幸いにもアインはハイエルフだ。並の人間は相手にもならないし、エルフであっても一筋縄ではいかないだろう。但し、これだけは肝に銘じろ。己を過信するな。過信した者は死ぬ。これは絶対だ」



 優しく送り出すミリアに、厳しく律するガイア。

 今日はアインの8歳の誕生日であり、彼の独立の日である。

 圧倒的に恵まれた環境で育ったアインは、同年代の子どもと比にならないほど強くなり、見る者が見れば国のお抱えとなるだろう。


 そんな未来を危惧してか、ガイアとミリアはアインの独立を渋っていた。


 国がアインの翼を折るんじゃないか。

 周囲がアインに枷を付けるのではないか。


 他にも様々な心配事を抱えていたが、自分達の考えこそがアインの枷になると判断した二人は、アインの意思に任せることにした。



「のうアイン。ドラゴンには近付くな。よいか?」


「はい、エメリア母様。危ないから、ですね!」


「そうじゃ。幾らお主でも、余の足元にも及ばん。己を過信しそうになった時、余とパパと戦った時を思い出すのじゃ」


「......はい。過信しないと、そう誓います」



 続いて出てきたエメリアのお腹は大きく膨らんでいた。アインの妹になる、ドラゴンと人間のハーフが宿っている。


 お腹を摩り、子と共にアインを送り出す寸前、黒い影が跳ねた。



「はぁ、はぁ......間に合いましたか!?」


「アヤメさん! 丁度今行くところです!」


「間に合った......良かったぁ」


「学園教師は忙しいですな。ちっとも休めない」



 背が伸び、大人の魅力溢れる姿で現れたアヤメ。

 ガイアを前にした時に尻尾を振る癖は直らず、今もブンブンも勢いよく風を起こしている。


 そんなアヤメだが、今回はアインを王都に案内する仕事を任されている。無論、ガイアに、だ。


 いきなり世界を旅するのではなく、王国で学生生活を送ったり、冒険者として活動する楽しみを知ってからの方が良いと判断した結果、最低でも10歳から王国を出ることが許された。


 強さだけが生き方じゃないと、そう3人の親が言ったからだ。



「もう、ガイアさんには後で王都で最高級のパフェを奢ってもらいますからね?」


「ほらよ、金貨10枚。好きに使え」


「わ〜い! って、そうじゃな〜い!!!」



 空色の魔力を使い、高品質の薬草や薬品を売ることで得たお金を投げるガイア。あまりの効能の高さ故に、国の重要人物しか買えないのだが、その売り上げは破格の金額だ。


 金貨10枚程度、気安く投げれるくらいには。



「アイン、パフェで残った金で装備を揃えろ。あと宿も取れ。2年なら余裕で暮らせる金額だからな。計算して使うように」


「に、2年どころか一生遊んで暮らせますが......」


「そこ、黒猫! ガイアが喋ってるでしょ!」


「あひん! すみません!」



 ツッコミを入れたアヤメの尻尾を掴むミリア。

 年々ミリアの魔力制御技術は向上しており、視界の中ならば転移すらも出来る。

 森の主に相応しい力を持っているが、ガイアはそれ以上だった。



「最後に、何かあったらこのペンダントを持って全力で叫べ。例え世界の裏側であっても、俺が駆け付ける。安心しろ、お前の父親は転移より速いからな。絶対に助けてやる」



 身体強化は一種の壁を越え、転移を超える力を与える。これは長い時間を魔力制御に費やし、育児と生活に挟まれた極限状態で生み出された究極の技だ。


 効率化に効率化を重ねすぎた結果、人間の......いや、生物の限界を超えた、神に等しい力。

 妹である女神イリスも調整を図ったが、愛しのガイアの前では強く言えなかった。



「そう言えばガイアよ、ゼルキアが呼んでいたのではなかったか? ほれ、帝国の火山龍を鎮めたとか何とかで」


「確かに呼ばれてたな。鎮めたっていうか、肉片にしたんだ。だからきっと、行っても怒られるだけだしパスする」



 そう言った瞬間、ガイアの背後からぬるりと手が伸び、肩を掴んだ。



「──出来ると思ってるのかなー?」


「うわでた」


「不快害虫が出た時みたいな反応やめてくれる?」


「細かいなぁ。それより皇帝にはお前が会っとけ。俺はこれからアインの見送りなんだ。というか全然進まないからアインも困ってるぞ」



 次から次へとイベントが起き、アインも苦笑いだ。

 ここまで殆どガイアが起因の問題だが、王都に出ればアインがそのポジションに成り代わるだろう。

 アインもまた、ガイアの血を引き継いだ美少年であるから。



「それじゃあ行ってこい。世界を楽しめ」


「はい! 行ってきます!」



 アヤメの隣を歩くアインの姿は、立派であった。



「ふふっ、後ろ姿は貴方にそっくりね」


「......かもな。自慢の息子だ」


「あら、それじゃあもう1人子どもが欲しいわね」


「そっちの元気じゃねぇ! でも......そうだな。アインを驚かしてやるのも悪くない」



 いつの間にか頭に乗っていたセナを降ろし、ミリアを抱きしめるガイア。ムッとした顔で寄り添うエメリアを見て、呆れたように溜め息を吐くゼルキア。


 いつもの4人に、ほんの少しのスパイスが加わった結果、4人の人生は幸せに溢れていた。



「さて、謁見したら僕も帰ろうかな。愛しの妻が待ってるからね!」


「結局ハーレムは諦めたのか?」


「ん〜、まぁね。今の彼女を見てると、彼女だけを幸せにしたくなってさ。それに公爵に妾が居たら何言われるか分かんないし」


「貴族は大変だな。まぁ、息抜きにまた来い。今度は王女も連れて来るといい。全力でもてなそう」


「本当かい? それは嬉しい。じゃあ、次は一緒に来るよ」


「あぁ。じゃあな」



 パッと姿を消したゼルキアを見送った3人は、再度アインが歩んだ軌跡を望む。

 我が子が歩む道を見たい気持ちに押されながらも足を動かさないのは、アインに対する信頼からだろう。


 早くして親元を離れる寂しさは大きく、ミリアはずっとガイアの手を握っている。

 そんなミリアの手を優しく、力強く握り返すガイア。

 

 春に飛び立つ鳥を思い、見上げた空はどこまでも澄んでいた。


 

 ──この世界は、お前が幸せになる為の世界だ。楽しまないと意味が無い。



「え?」



 渋い声が聞こえたガイアは、更に首を上げた。

 しかし、再度その声を聞くことは出来なかった。


 あの言葉は誰の言葉か。

 世界を管理する神の言葉か、はたまた世界を創った存在の思いか。


 淡く輝く空色の魔力を飛ばしたガイアは、振り返って二人を抱きしめた。



「俺は幸せだ。この世界に生まれて、二人と出会えて最高だった。二人と過ごす時間は本当に楽しい。ありがとう」



 突然の言葉に、二人は驚いた。



「もう、どうしたの? でも、そうね。私も貴方と、そしてエメリアと出会えて良かったわ。最高の生を謳歌していると思う。ありがとう」


「うっ......ぐすっ、余も、余も感謝しておる......! ガイアにちょっかいをかけて、ミリアに叱られ、笑い合う生活が最高じゃ! ありがとう!」




 ガイアという存在の妻であるミリア。

 泡沫の命を輝かせた、夢の世界から来たエメリア。

 神の子として生まれた異質な人間のガイア。


 どこかおかしい三人の出会いは、女神の手繰る運命すらも書き換え、独自の道を歩み始めた。




「さぁ、残りの人生を楽しもう。いつ死ぬか分からない世界なんだ、今を楽しめる狂人になろう」

以上、空色魔力の転生者でした。

い、言いたいことは分かります! ですので、暫くファンタジーは勉強して、それからリベンジします。絶対に! 絶対に!!!


次回作は原点回帰のVRです。既に1話は完成しているので、10話くらい書き溜めたら放出します。

こっちでは毎日更新が出来ませんでしたが、次回作ではまた毎日更新したいと思います。

.....クオリティ向上の為にお休みするかもしれませんが。


では、またどこかで。人生を、楽しんで!!!

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