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第12話 空色魔力の転生者



 暗く、暖かい感触の中で意識を取り戻した。


 自分は今どこに居るのだろうと思い、体を動かしてみるが......まぁ動かない。どうしてでしょうか。

 俺、前世で悪い事したっけなぁ。


 う〜ん............心当たりがありすぎる。


 いや〜、ね? 勇者は殺したよ? 殺したんだけどさぁ、正当防衛じゃん。あれは紛れもない正当防衛だろ?


 だって、何も悪い事をしていないゼルキアを殺し、壁塗りを手伝ってくれていた安部くんを殺し、挙句の果てには俺の大切な恋人も殺した。


 だから俺は、自分が殺されないように勇者を殺した。


 全く悪くない。俺は自分が生きる為に殺した。弱肉強食の世界と一緒だよ。生きる為には、殺さないといけない。


 ......うん、でも一切動けない状態で転生は酷くない?

 もしかして俺、岩にでも生まれ変わったか? それともなんだ、お風呂に浮かぶアヒルのおもちゃか?


 どちらにせよ、地獄みたいな生だな。



 っとと、なんか動きだしたぞ。うおっ、おぉ! 体がどんどん吸い込まれる! ヤバイヤバイ! 死ぬ!!!




「は〜い、元気な男の子ですよ〜」




 俺、誕生。


 どうやらお腹の中の赤ちゃんに転生してたみたいだ。

 先程まで動かしまくっていた体はママンの腹を蹴っていたようで、申し訳なく思う。


 スマン。ママン。


 今な俺は産まれたてホカホカの赤ん坊。動くことも出来なければ、喋ることも出来ない。ただあるがままに受け入れ、吸収していく存在だ。


 おや、何やら男の人の顔が見えた。


 ってお〜い! まだ目がよく見えんが、日本でも類を見ない超絶イケメンの姿が見えた気がするぞ!?

 もしかしたら俺、スーパーイケメンパパの遺伝子を受け継いだのかもしれん。


 あっ、目が見えてきた。やっぱりイケメンだ。


 はい人生勝ちました。顔が良ければ全てが許される、そんな日本で生まれたことのある俺は勝利を確信した。


 まぁ、モテたところでって感じだけど。

 だって俺、ミリア以外に興味無いし。もう心に決めた人が居るんだ。例えイケメンの子でイケメンに産まれても、女遊びはしない主義なのでね。えぇ。



「ガイア〜、ご飯の時間でちゅよ〜?」



 産まれてから数日経ち、俺は赤ん坊生活に慣れてきた。

 朝起きたらママンの乳を吸い、昼は編み物をしているママンの姿を見守りながら魔力の操作を練習し、ミスって魔力を漏らしたら泣いてママンに拭いてもらう。


 そして夜は、イケメンなパパに抱っこして頂き、イケメンパワーを注入され、寝る。


 俺もいつか、こんな生活を夢見ていたよ。

 寝て起きて食って寝て、また起きたら食って寝て......まぁ、食うって言っても乳を貰うだけだが。


 でもな、この生活にも欠点がある。それは──



いああ(ひまだ)



 そう、暇なのだ。思わず声に出してしまうほど、暇だ。



「ガイア〜、どうしたの〜? ミルクの時間?」



 おっと、ママンが俺に気付いてしまった。ここは黙って何もないよ〜アピールをしないと。



「ふふっ、可愛いわね。元気に育つのよ?」



 勿論さ、ママン。前世は6歳の体で成長が止まったが、今世は大丈夫だろう。前前世は17歳だが、その前には30秒で死ぬこともあったし、長い時で315年も生きたこともある。

 

 にしても、ママンもかなりの美人さんだ。


 金色の髪に海の様な青い目とは......競争率高そう。

 いや、競争率が高かったから、茶髪に赤い目をしたイケメンパパとくっ付いたのだろう。


 あ〜、鏡を見たい。今の俺、どんな姿だ?

 髪は? 目は? 顔は? 魔力の色はもう分かっているから、外見だけ確認させてくれよ。



 そんな思いで今日を過ごしていると、イケメンなパパが抱っこに来てくれた。



「ガイア。今日も元気だな! 周りの家族は皆、お前がよなきしないことに不思議がっているが、お父さん達は誇らしいと思っているぞ! お前は立派な息子だ!」



 パパン......迷惑かけないようにと頑張って抑えていたんだが、周りに変な印象を与えちゃった?


 ごめんよ。少しでも2人のストレスにならないようにと思ったのだが、かえって周りからのストレスになるようじゃ本末転倒だ。


 これから、少しは泣くようにしよう。元気のアピールにもなるし。



「可愛いなぁ。お前は将来、父さんのカッコ良さと母さんの可愛さを備え持つ、すんごい大人になるはずだ。

 もしかしたら貴族が狙うかもしれんが、幸せになるんだぞ」



 おい待てぇい! き、貴族だと!? ヤダヤダヤダ! 絶対に関わりたくない! 俺、レガリアで貴族社会を経験してきたもん!! 絶対に関わりたくない!!!


 だってさぁ、男して産まれたら強く賢くならないといけないし、女に産まれたら美を維持し続けるという、地獄のような日々が待っている。


 そして何よりも、どちらもイジメが酷い。


 ちょっとでも可愛くなければ複数人で罵倒され、剣術大会の予選で負けたらボロクソに貶されるあの社会......もう味わいたくない。



「もしかしたらガイアは、王女と結婚したりしてな。ハッハッハ!!!」


「もう、パパったら夢見すぎよ。この子なら多分、公爵家が御の字ね」


「そう言うな、母さん。自分達の子どもには、これぐらい大きくなって欲しいと思っているんだ」


「まぁ、それもそうね。ガイア、王女が誕生なされたら、落としに行きなさい!!」



 や、ヤベェ。俺のママンとパパン、俺に期待しすぎだろう。いや、本人達は願いだと言っているが、この2人の子どもなら普通にあるぞ......王族と結婚。


 いや、無いわ。この家はそもそも貴族の家系じゃないし、普通の平民として産まれたわ、俺。


 うん、貴族と関わらない、ハッピーライフを送れるぞ。




 そしてこの数日後、王女が誕生した。


 名前は『アミリア・デル・レガリア』というらしい。




 どうやら俺は、本格的に王女を落としに行かねばならないらしい。


 やったねガイアちゃん! 地獄を見れるね!!


 ......はぁ。しかもこの国の名前、何の因果か“レガリア王国”というらしい。でもどうやら、俺の知るレガリアという国ではないことが分かった。


 何故なら、俺の知るレガリアという国は、常に戦争を繰り返しているからだ。


 もうこれだけで安心よね。パパンの話じゃ周辺諸国も平和推進派だし、名前だけ聞けば怖い“ティモー帝国”も、レガリア王国と手を取る形で仲良しとのこと。


 嫌だなぁ。ミリア、どうして王族に産まれちゃったんだ? というかゼルキアはどうした? いやまぁ、ミリアの情報を知ったのが早すぎるのだが、アイツもアイツで有名になりそうだしな。



 とりあえず俺は、健やかに育ち、両親の手伝いをして大きくなろう。




 そんな決意を固めた俺の持つ魔力の色は、空色である。

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