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出発

 換金屋に着き、今までに狩った雑魚魔物の素材をカウンターに置き鑑定してもらう。希少な素材や状態が良ければ良いほど値段も上がる。あまり傷を付けていないから良い値が着くはずだ。


「うん、どれもいい状態のものばかり。それに今じゃ回収出来ない魔物の素材ばかりだ。全部で金貨30枚でどうだい?」


 ラモン周辺に生息していた魔物の素材と、ペリュトンの素材だけで金貨30枚。前の世界での通貨は円だった。換金すると大体30万円で、かなりの高額だ。店主の言っていた通り雑魚でも素材が回収ができずに流通しなければ、高額になるのも頷ける。


「えぇ、金貨30枚で。それでは。」

「毎度あり〜。」


 受け取った金貨を財布として使っている袋に突っ込み、薬屋に向かう。

 今のパーティは、私とクロが最前線で戦ういわゆるアタッカー、ティアが後衛で支援と攻撃のいわゆるサポートかサブアタッカーとなる。回復ができる子が居ないから、回復薬は必需品になる。今のところ困りはしていないが、また例の巨人のような魔物と戦う事になった時は相当苦戦しそうだ。


 薬屋で回復薬とMP回復薬を買えるだけ買い、2人と待ち合わせした場所に向かう。


「見つけたぞ、戦神の末裔よ!今度こそ俺らの仲間になってくれ!」


 歩き出してからしばらくして、後ろから声をかけられる。誰が仲間になどなるかと、振り返りもせずに歩き続ける。

 前絡まれた時は鉱山街で人がそんなにいなかったから殴り飛ばしたが、ラモンはどこに行っても人で溢れている。こんな所で殴り飛ばして騒ぎの中心になる事は絶対に嫌だ。撒くために集合場所近くをグルグル歩き続けているが、ずっと後ろをついてくる。

 さて、どうしたものか。叫び声を上げて周りを味方につけコイツらを周りに任せるのもいいが、集合時間まで後30分。周りに任せたら1時間以上はかかってしまう。建物に逃げ込む?ついてくるだろうな。逆に追い詰められるかもしれない。念話で呼び寄せるか?叫び声を上げるよりも絶対大事になる。


 そのままグルグルと歩き考え続けた結果、叫び声を上げて周りに任せ、どさくさに紛れて街から出ることにした。もうここから離れるんだから、ここでの騒ぎなんてどうでもいい。

 念話でクロとティアに街から少し離れた場所に先にいると伝え、歩く速度を遅め奴らと距離を近づける。


「な?あんな奴と関わっているより、俺らと来る方が絶対良いって!」


 何が「な?」なのかさっぱり分からないが、反撃をさせてもらう。肩に手を置かれ、無理やり体を回転させられた感じを装い、出せる限りの悲鳴をあげた。


「いやぁぁ!!」


 周りが何事かと振り向き、近くに居た背の高い戦士の姿をした女性が咄嗟に私を後ろに庇う。なるべく女性に近づき身を縮こませ、隠蔽を使って目に涙を溜めて体を震えさせる。

 異常事態だと勝手に判断した人達が、女性は私の周りに、男性は奴らを囲う。


「何があった?大丈夫?話せるか?」


 最初に庇ってくれた戦士の女性が私に目線を合わせるように屈み、状況を聞こうとする。特に何も考えていなかったから、適当にやり過ごそう。


「き、急に声をかけられて、腕、掴まれて…ろ、路地に…!」


 泣いてる時に出す声ってこんな感じだったはずと、適当に喋り目に入った暗く狭い路地を指差す。その言葉を聞いて私を囲んでいた女性達から奴らへ放っていた圧が一気に強くなる。奴らはさっきから「違う、誤解だ」と叫んでいるが、周りは聞く耳を持たない。

 周り全員の目線が奴らへ向かったのを確認し、影の中へ入る。周りが誰も気づいていないから、このまま逃げる。


(レイ、何があった?)


 影で移動している最中にクロから念話が飛んでくる。1度止まり振り返ってみると、奴らが取り押さえられている光景が目に入る。女の一声でここまでの大事になるとは。怖い怖い。


(厄介な奴らに絡まれたから対処しただけだ。)


 現場を見た奴も当事者である私もいないから、あいつらは直ぐに開放されるだろうが、これでもう街中では絡んでこないだろう。

 クロに念話を返し、再び移動する。ラモンの扉を抜け、フィラジエール側の道端で人が居ないことを確認し、影から出る。


 道端の室外機らしきものに腰掛け、ステータスを眺める。冒険者登録をしてから名前はリヤからレイに更新され、ステータスもスキル欄も大幅に変わっている。冒険者情報を更新したから当たり前なのだが。レベルの欄が文字化けのようにおかしなことになっているが、受付嬢は気づかなかったのだろうか?それとも良くあることなのか…。どっちにしろ、大した問題じゃないだろう。


「随分な騒ぎを起こしてきたな、お前。」


 巨人からいつの間にか手に入れたスキル、『鬼神化』の説明を読んでいたら上から声が降ってくる。顔をあげれば苦笑いしているクロと、少し後ろにティアがいた。呆れた顔をしているのが何となくわかる。


(前ノ奴ラデショ?執拗イ奴ラダネ。)

「前の奴ら?……前言ってた頭のおかしい奴らの事か?」

「そいつらだ。鬱陶しかったから、前にテレビで見た痴漢冤罪のやつを真似てみた。」

 

 そう答えるとクロはもっと顔を歪ませた。男として思うことがあるんだろう。呆れた顔をしていたティアは、どんな状況だったのか理解しため息をついていた。


「もう性別を盾に人を陥れる事はしないよ。」

「そうしてくれ…。」


 クロに要注意人物だと例の頭お花畑野郎ども(勇者パーティ)の事を説明しながら、フィラジエールに向けて歩き出す。


「そいつらがやばい集団なのは分かったが、勇者ってそう何人も居るもんなのか?前のあの熊の子も勇者って言われてただろ?」

「村人に言われてるだけで、実際は戦闘の才能があったただの獣人かもしれないけどな。」


 ランク試験で向かった村にいたメルディアは、村人から勇者だと呼ばれていたが、知り合いだったから鑑定もしていない為真偽は不明だ。


 勇者という職業が特殊な職業である事は、ウルティの図書館で本を揉み漁っていた時に知ったのだが、その本には勇者と対となる魔王という存在が産まれなければ勇者は現れないと書かれていた。

 もし仮にメルディアが勇者だとすれば、アイツを含め勇者は2人。魔王も2人は存在するという事になる。


 ……まぁ、私には何の関係もない事だ。のんびり気ままにダンジョンに潜ったりティアを愛でたりして、今後過ごせれば問題ない。それを侵害してくる奴らを潰すだけだ。


「すでに2人勇者がいるんだとしたら、別の場所にもいる可能性あるよな。勇者見つけたらすぐに言う事。いいな?」

「はぁーい。」

(分カッター!)


 瓦礫を避けて襲ってくる雑魚を片付けながら返事をする。

 魔法の練習だと思って私は遠距離で攻撃をし、ティアが前線で暴れ、クロが素材を集めながら進む。マザーの時暴れたりなかったのか、ティアが魔法を使わずに自身の爪と牙で雑魚を屠っている。しかし数が多くきりがない。


「ティアー、きりがないからサクッと片付けてくれー。」

(ハーイ!)


 元気な返事をした後に、タングルの群れを壊滅させた氷の雨を周囲に降らせる。私とクロの場所だけ降っていないから、だいぶ精度が上げたようだ。


 全員で素材を集めて移動を再開する。ギルドマスターの話ではフィラジエールまでは馬車で1日程度。のんびり歩いたら恐らく2日はかかる。やはり途中からクロに乗せてもらおう。

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