指名依頼
ピアスが落ちないことを確認し、ギルドへ入り受付へ向かう。
「こんにちは。先日ギルドマスターに呼び出された者ですが。」
「レイ様ですね、お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
前と同じ部屋に案内され、扉に近いソファに腰掛ける。
「お待ちしておりました。まず、先日はお忙しい中長い時間引き止めてしまい申し訳ありません。」
ランク試験に出る前、私は気絶したクロをいち早く安全な場所に移動させたくて相当イラついていた。それを隠そうともせず表に出していたから、悪いと思って謝罪をしてくれたようだ。ただ、謝罪するくらいなら早く返して欲しかったという思いの方が勝つ。が、それを言うと話が進まないため黙っておく。
「気にしないでください。それで、私達に何の用事ですか?」
「はい、実はラモンの隣の街で2週間後に闇オークションがあるのです。その開催者はすでに分かっていて捕縛したいのですが、守りが頑丈すぎまして。そこで貴女様方に守りを崩して頂きたいのです。」
「つまり、ボスが中々出てこないから囮になれと?」
クロがギルドマスターの話を簡単に言い換えると、マスターは若干眉を寄せながら頷く。
話を聞いてみれば、前々から奴隷でもない人間や凶暴な魔物をオークションに出品し、会場で魔物の拘束を解き客を血祭りにあげたり、人間を見せ物に殺したりと残虐な行いを続けていた。街が主催者の尻尾を掴もうにも雲隠れが上手く、空振りが多かった。そこでギルドに頼み込み冒険者を潜入させ、顔と名前や規模が分かったものの潜入に気づかれ殺されてしまった、と言う事らしい。
私達なら安心だと思った理由が分からないが、そろそろラモンを離れようと思っていたし、ついでに受けるのも良いかもしれない。
「とりあえず、依頼の内容を教えて頂けませんか?」
「おぉ、そうでしたね。依頼内容はオークション会場を荒らしてもらいたいというものです。人や魔物を殺さなければ荒らし方は問いません。ギルドの役員も潜入しておりますので、部屋から出てきた主催者を役員が捕らえれば依頼は完了となります。しかしそう簡単にいかないのは分かっております。なので報酬は前払い、奴らに逃げられてしまった場合後日、また依頼する可能性があります。捕らえられれば、追加報酬という形になります。いかがでしょうか?」
マスターは奴らに相当怒っているみたいだ。殺さなければ良いなんて、余程な事がなければ言わないだろう。
内容も特に変な所はない。人嫌いのティアには殺さないようにと注意しておかなければいけないが、ただ暴れればいいという簡単な依頼だ。指名依頼だし、成功か失敗かなんて関係ないようなもの。
(受けようと思うけどどう?)
(良いんじゃないか?役員の護衛とかじゃないし、楽だろ。)
(ドッチデモイイー)
「では、依頼を受けます。」
2人から了承を得てから依頼を受ける。ティアからの返事は了承か分からないが、嫌な事ははっきり嫌と言ってくれる子だから本気で受けても受けなくても良いという返事だったのだろう。
私の返事にマスターはパッと顔を明るくして、書類を取り出す。
「ありがとうございます!ではこちらに署名をお願いします。」
目の前に出された書類に一通り目を通し、依頼内容がおかしくないことを確認し署名欄にレイと名前を書き、マスターに返す。名前を確認したマスターは、書類をしまい立ち上がる。
「それでは、オークション会場に行ってもらう際のドレスをこちらで用意させて頂きますので、採寸をさせて下さい。レイ様はお隣の部屋へお願いします。クロウディア様とティア様はこちらで測らせて頂きます。」
マスターに言われるがまま受付嬢について隣の部屋へ行き、下着姿になる。受付嬢は身体中の傷跡に一瞬怯んだが、そのまま何も聞かずに測り始めてくれた。ありがたい。
首周り、肩、腕、バスト、ウエストに腰回り。色んなところ測られた。足元にいくにつれて受付嬢の手の震えが増している気がするが、気にしないでおく。
「お待たせ致しました。測り終えたので服を着てからマスターの部屋へお願いしますー。」
そう言うと顔を青くしながら部屋から飛び出していった。傷はあるが健康体だぞ、失礼な。
コート以外を着てネクタイを軽く締めてから隣の部屋へ戻る。受付嬢がなにやらクロに耳打ちしていたが、内容が聞こえないしクロの視線が痛いので知らないふりをする。
マスターがティアの採寸をしようとしていたようなのだが、マスターがメモリを見る寸前でわざと動くため全然進んでいない。今は元の姿のため体も大きいし、何より魔物という事で怖がっているのがティアに伝わっているのだろう。それを分かってティアはマスターで遊んでいる。
(ティア、遊ばないの。)
(エー…、ダッテコノ人達嫌イ…。)
遊んでもいたが、触られるのが嫌で動いていたのか。
会場についたら影に入れればティア用の服を用意する必要はないが、綺麗な服を纏うティアの姿がちょっぴり見てみたい気持ちもある。それにこのままではいつまで経っても終わらない。
「変わります。どこを測るのか教えて下さい。クロも手伝って。」
明らかに嬉しそうな顔をしたマスターからメジャーを受け取り、ティアの採寸を始める。多少の身じろぎはするが、さっきよりもおとなしい。もう少し早めに変わっておけばよかった。
言われた場所にメジャーを巻きメモリを読み上げていく。体高は130センチ、体長290センチ。なるほどデカい。アンデッドハウンドから進化してさらにデカくなったから、私が少し目線を落とせばティアと目が合うくらいの大きさだ。成長したね。
測り終えてティアを撫でながらメジャーを受付嬢に渡す。
「お疲れ様。ちゃんと我慢できたじゃん。」
(レイトクロナラ平気!)
偉いでしょと胸を張るティアを再び撫でてソファに座る。マスターからどんなデザインがいいかだの、何の色がいいかだの、好きなシルエットはあるかだのいろいろ聞かれたが、暗めの色で動きやすいのでいいと一言言って、あとは全て任せると言って終わらせた。
「ラモンを出る時に一声下さい。オークション会場のあるフィラジエールまで馬車を出しますので。」
「いえ、結構です。オークションまでに間に合わせますので。」
マスターの提案を却下する。もうあの揺れで頭を打ちたくないし、身体中が痛くなるから馬車はもう嫌なのだ。ティアもクロも同じことを考えていて、マスターが馬車を出すと言った瞬間に眉を寄せた。
もし間に合いそうになかったらクロの背に乗せて貰えばいい。竜化したクロはティアの5倍くらいの大きさ。2人乗ってもスペースが余るくらいだと思う。重さも大したことないだろう。
「そうですか。ではフィラジエールのギルドマスターに話を通しておきます。そこで報酬を前払いさせて頂きますので、街についたらギルドへお願い致します。それでは、お気をつけて。」
マスターに出口まで見送られギルドを後にする。
ここからはいつもの準備タイムだ。前と同じようにクロが食料を、私が回復薬等の補充と換金を、そして今回ティアはクロと一緒に行動してもらう。
ティアにはクロが気を失っている時に出たあの勇者を見かけたら、すぐにその場を離れるように言っている。攻撃をしてきたら容赦しなくていいとも。ただティアが人を襲う魔物として捕らえられるといけないから、反撃するなら人がいない所でと教えている。クロもいるからそこは安心だ。
2人と一旦別れ、私は換金屋に向かった。
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