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新たな武器

 2人のドワーフはヴァルドに持たされたのであろう武器や装飾品を抱えている。

 武器を見せるからと、大テーブルが置いてあるスペースまで案内される。


「遅くなってすみません、報告が長引きまして。」

「そうかそうか。そんな事より。」


 私の謝罪をさらっと流し、ヴァルドは後ろのドワーフから大鎌を受け取り大テーブルに置く。前のと似たようなデザインだが、巨大な刃と小さい刃で柄を挟むように作られている。大きな刃は峰が鋸の刃のように変わり、小さい刃は竜の翼を思わせるようなデザインだ。私が縦に寝転がれるほどの大テーブルをはみ出す程の巨大な鎌。これを扱えというのかこのおっさんは。


「随分大きいですね。」

「あぁ。俺の固有スキルが『追加付与』っつースキルでな。武器やら防具やらに色々な効果を追加することができるやつなんだ。例えば、剣には攻撃力増加とか、杖には所持者の最大MP増加とかな。属性付与も出来るが、苦手だ。それで、作ってる最中楽しくなって追加付与をしまくってたら。」

「このデカさになった、と。」


 「そうだ。」と眉を下げて笑う。ドワーフ1人でも持ち上げられていたから、持たない事はないと思うが、彼は男で私は女だ。男女の力の差はどうしても出てきてしまう。持ち上げられても振り回せるかどうか。


「軽量化してあるし、軽くなる追加効果も付けた。お嬢でも十分振り回せるはずだ。ちょっと持ってみろ。」


 促され、テーブルの上に置かれた大鎌を手に取る。軽量化されているとはいえ重いのだろうと力をこめて持ち上げたら、ひょいと持ち上がり、体が後ろに反る。水がいっぱい入っているヤカンだと思って持ち上げたら、空だったみたいな感覚だ。

 持ち替えてみたり、軽く振ってみたりしたが見た目ほどの重さは全く感じない。前の鎌よりも軽いくらいだ。


「射程は広く長くなってるが、デカい分大振りになる。いつもと感覚が違うだろうが、そこはお嬢の力量なら何とかなるだろう。後は、大きい刃の方、峰を鋸刃にしてある。鉄でも簡単に切り裂ける。遠目じゃ峰と同じように見えるから注意しろよ、手なんかスパッと切れるからな。反対の刃型はいつも通りだ。よく手入れしろ。柄の反対についてる刃は、嬢ちゃんからもらったあの角を使ったから、毒が入ってる。鎌の注意はこんな所か。」


 足にも毒が入ってるのに、武器にも毒刃があるとは。もはや毒人間みたいになってきた気がする。お礼を言って鎌をバングルにしまおうとしたところで、待ったがかかる。


「もう一つ機能をつけたんだ。最初に鎌に魔力を流せば、自在にしまったり取り出したりできるってやつだ。ちょっとやってみてくれ。」


 言われた通り鎌に魔力を流し、手を離す。するとあの巨大な鎌が一瞬で消える。驚いてヴァルドを見ると「よしよし」と頷いているから、成功はしているんだろう。


「そしたら鎌が手の中にあるのをイメージしながら、手を握ってみろ。」


 目を閉じて、体の前に出した両手の中に鎌が収まっているのをイメージして手を握る。何も無かったはずの手が急に重くなり、目を開ける。鎌がイメージした通りの状態で手の中に収まっていた。これはすごい。周りからも感嘆の声が漏れる。


「よし、上出来だな。それじゃ次。そっちの使い魔だ。」

(使イ魔ジャナイヨ!ティアダヨ!)

「おー悪い悪い。ほれ、元の姿に戻してちょっと座って。」


 嫌そうな顔を隠しもせずに姿を解きながらドスッと座るティア。今更だがティアは人嫌いなのかもしれない。

 元の姿があらわになり、大勢の人が戸惑っている中でヴァルドは1人、ティアのマントの留め具の鎖に何かを取り付けている。しばらくして、ヴァルドは「よし、できた。」と立ち上がる。

 ティアの胸元にはきらりと黒く輝く鱗のピアスがついていた。


「兄ちゃんから依頼されたもんだ。自分の鱗使って防具を作ってくれってな。魔物でも付けられる防具は希少で限られている。で、思い付いたのがピアスだったんだが、前の姿なら付けられたんだがその耳じゃ付けられんだろう?しばらくはここで我慢してくれや。これは兄ちゃんと嬢ちゃんの分と予備だ。」


 手で受け皿を作り受け取る。鱗の上の方に穴が開いていてそこを通すように作られたフープピアスだ。個数は全部で3つ。1人ワンセットではなく、1人1つなのだろう。ピアスホールが空いていないから、後で開けてつけよう。


「間違っても1人でセットでつけるなよ?防御力増加だけ増やしてるわけじゃねぇからな。後、付与効果は戦闘時の魔力に反応して発揮されるようにしてある。日常的に付けてても問題ない。」


 全て受け取り、お金を払う。時計を見てもまだお昼前だったから、これ幸いとヴァルドを酒場に誘い今までの疑問をぶつける。なぜ種族だけではなく血筋まで一目で分かったのか、なぜ契約していると分かったのか、なぜティアの姿が偽装だと分かったのか、なぜ使い魔だと思ったのか、なぜここにはエルフがいないのか、なぜ私に苗字があると思ったのか。

 ヴァルドは私の疑問を一通り聞いた後、店員が持ってきた酒を一口飲み、いつもより落ち着いた声で話し始めた。


「まずなんで血筋まで分かったのか、だな。簡単だ。生まれたばかりの兄ちゃんと会ったことがあるからだ。この鍛冶場に腰を落ち着かせる前は、いろんな所を旅していてな。一晩休ませてもらおうと里に立ち寄ったら、竜王誕生の儀っていうのをやっていてな。それで知った。あそこの里は辛かったろう。よく頑張ったな。」


 優しい声でクロの頭を撫でるヴァルド。クロはゴツゴツしたその手を払おうともせず、大人しく撫でられていた。


「契約してるかどうかはもっと簡単だ。お前らの目だよ。血を交換して契約するっていうのはよく聞くが、まさか目を取り替えるとはな!一目で分かって驚いたよ。臓器を交換するやつは滅多にいないし、それも竜王とだからな!

 ティアの姿は俺も鑑定を持ってるからな。見ればわかる。使い魔かってのは、キラーハウンドは人には懐かないことで有名なんだ。アンデッドもだがリッチハウンドなんて、人を呪い殺して仲間に引き入れるとも言われてる。そんな奴が人と一緒にいるなんて、使い魔としか考えられないからだよ。ただ予想は外れて自分の意思で隣にいるみたいだけどな。

 エルフがここにいない理由は単純にドワーフと仲が悪いからだ。ロザイアがエルフ嫌いのドワーフ好きの変わり者だったってだけだ。

 それから、お嬢の苗字の事だが…。まぁいずれ分かるだろ。」


 最後の質問に眉を寄せながら答えると、ヴァルドはジョッキに入った酒を一気に飲み干して、お金を置いて去っていってしまった。いずれ分かる、というのはどういう事なのか…。

 考えながらテーブルに置かれたお金を数えると私達の分まで含まれていた。サラッと奢ってくれたようだ。ありがたい。


 遠くで仕事をするヴァルドにお礼を言って鍛冶場を出る。ギルドに向かう途中の屋台でピアスを耳につけるため針を買い、クロのブレスで消毒してからお互いの耳に穴を開けた。私は左耳に、クロは右耳にピアスをつける。


「似合ってんじゃん。」

「俺の鱗だしな。」


 褒めれば、ふいとそっぽを向かれた。耳が若干赤いから照れてるんだろう。後ろでティアがこっそり笑っていた。

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