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MVPの進化

 半分竜化したクロが唸りを上げる。やはり目は虚で何も写していない。どこかタングルと似た雰囲気を感じる。


「ティア!クロを操っている奴がそこの奥にいるはずだ!ぶっ殺してこい!!」


 クロがずっと見つめていた穴を指差し、それを確認したティアが短く吠えた。意識のないクロに妨害されないよう、一度ティアを影の中にしまい穴の近くで取り出す。案の定ティアを行かせまいと走り出すクロとティアの間に土の壁を作り出し、ティアにGOサインを出す。


「お前の相手は私だぞ?相棒さんよ。」


 分かりやすく煽ってやれば、敵意を剥き出しにし襲いかかってくる。操られているとはいえ、少し悲しいものだ。

 突き出された拳を受け流し、胸ぐらを掴んで頭突きをする。視界がぐらりと揺らぐが、クロは勢いがあった分そのダメージも大きい。後ろに傾いた体を影と土で拘束する。


「なるべく傷つけたくねぇんだわ。頼むから大人しくしててくれ。」


 こちらの思いと裏腹にクロは暴れ続ける。剛力を使えばすぐ砕けるような拘束なのに、使う様子がないのは操っているものが使い方を知らないから使えないのか、それとも本人が抑え込んでるのか。

 土にヒビが入り、砕けた。暴れ続けているクロを抑え込むには緩すぎた。拘束を解いた瞬間、一気に距離を詰められる。そういえば接近戦が得意なやつだったと、呑気に考えながら振り抜かれた拳を避け、鎌の柄の部分で腹を薙ぐ。後に痣になってないと良いが。


 単純な強さでいけば、私よりクロの方が上である。当たり前だ。私はこの世界に来て戦い始めたのがごく最近であるのに対して、クロは生まれた時からこの世界で戦っている。自分の力を操るための訓練も、そんなやつにぽっと出の私なんかが叶うはずなんかないのだ。

 クロの攻撃を避けながら、急いで余ったSPで身体能力永続向上のスキルを取る。レベルで上がっただけの身体能力じゃクロを抑える事などできない。

 ふわりと体が軽くなる。スキルの効果だ。回し蹴りを左腕で受け流し、右手で刃が当たらないように鎌を振るとクロは後ろに飛び回避する。再びこちらへ突進してこようとするのを見て、目眩しとして壁を目の前に生成し影の中に入って背後を取る。壁を破壊しても私の姿を確認できないクロは、一瞬固まった。その隙に影から出て右足で回し蹴りを喰らわせる。絶対頭に当たらないように。


「こんな不意打ちにも反応できないのか、本体は随分弱いんだな。」


 再び本体を煽る。挑発に乗りやすいやつですぐに、唸り出す。しかし、それも急にピタリと止まり、本体がいるであろう穴の方へ体の向きを変えた。本体がピンチに陥ったか。

 穴を土壁で塞ぎ、さらに影の中にしまっていたタングルの死体を壁の前に積み上げる。万一にフレイムブレスを使っても壁が焼け落ちないように、炎無効の壁を作った。


「大事な、大事な、仲間が頑張ってんだ。行かせるわけねぇだろうが。」


 私を殺さないと本体の元へ向かえないと分かったクロが、今までの比ではない速さで突進してくる。

 クロは半竜状態だと力加減が難しいと言っていた。すでに鼻血を出しているから、早めに正気に戻さないとクロが危ない。しかしこのまま再び頭突きをすれば、クロより体重の無い私の方が吹っ飛ばされる。


 時間稼ぎとスピードを落とさせるため、私とクロの間にタングルの壁を作る。迂回させるようにすれば多少スピードが落ちるはず。しかし、予想と反してクロは死体の山を乗り越えてきた。さらにスピードが増している。振り上げられた拳から逃げることも叶わず地面に叩きつけられる。一瞬目の前が真っ暗になった。

 頭の横に手をつき、勢いだけでクロを蹴り飛ばし立ち上がる。身長差で見事に鳩尾に蹴りが入り、よろめいた所を捕まえお返しに地面に叩きつけた。もう傷つけられないとか言ってられない。


「いい加減、戻って、くれないかなぁ!」


 状態異常の威力を最大まで高めたダークネスジンを、クロの足元からあちこちにばら撒き、襲ってくるクロを誘導しながら反撃する。

 顔面に伸ばされた拳を左手で受け流し、胸ぐらを掴み思い切りダークネスジンを貼った場所へ叩き付ける。無事に効果が発動し、魔法陣が紫色に輝く。これでクロの行動はある程度制限できた。操っている本体にも影響があれば万々歳だ。


 今のクロはほとんど何も見えていないし、聞こえていない。思考もろくに働かないはずだ。この状態を試した事がないから分からないのだが。

 立ち上がり()を探すクロの四方を土の壁で覆う。これで少しは時間稼ぎができるはずだ。


 叩きつけられた時に口の中を切ってしまい溜まった血を吐き出しながら、どう抑え込むか考える。

 ここまで何度も体にダメージが入っていて、急所にも一発喰らわせている。それでも尚正気に戻る気配すらない。という事は、クロを操っている本体を倒さない限り元には戻らないのではないだろうか。

 すでにクロの体の限界は近い。ティアが本体を早く倒してくれないと…。


 土の壁が崩れた。囲ってからずっと叩かれ続けていたら、そりゃ壊れるか。むしろよく耐えた方だ。

 飛び出して来たクロから距離を取ろうと、地面を後ろに蹴る。しかし、窪みに引っかかりバキと音が鳴って義足が折れ、それは叶わなかった。そこへ虚な目だったクロの目が元に戻ったと同時に、私の方は倒れ込んでくる。


「ぅお、あ!」


 バランスが崩れ、地面に倒れる。私の上にかぶさったクロはピクリとも動かない。


「おい、クロ…?」


 不安が襲ってきて、体温が一気に下がり冷や汗が止まらなくなる。頼むから起きてくれと肩を叩けば、穏やかな息が聞こえてくる。どうやら気を失っているだけみたいだ。安堵の息を着く。

 クロを影で起こし、背負う。まだ何がいるか分からないし、床は濡れているから転がしておく事は流石にできない。回復薬をゆっくり飲ませ、与えたダメージを治す。


(レイ!ココ開ケテー!オ花殺シテキタ!)


 土壁を爪で引っ掻く音が鳴り響く。「今開けるよ」と返事をし、影に死体をしまって土壁を壊す。


「お疲れさ、ま………ティア?」


 奥から姿を現したのは紛れもなくティアだったのだが、姿が変わっていた。全身に肉はなく骨のみであり、肩や足首からは黒い瘴気の炎を纏っている。目は赤紫色の光がぼんやりと浮かんでいて、耳や尻尾も黒い瘴気の炎でできているようだ。首にはフード付きのマントをつけており、金の鎖が留め具になっている。

 本当にティアか、鑑定をしてみたら名前はティアのままだったが、種族の欄がアンデッドハウンドからリッチハウンドに変わっていた。レベルもステータスも大幅に上がっている。


(魔物、進化スル。ティアモ進化シタ!)


 混乱していた私にティアが説明してくれた。(凄イデショ、強クナッタヨ!)と胸を張りながら。

 背負ったクロを影で支えながら、ティアの元へ鎌を支えにゆっくりけれど早く歩き、骨の顔を撫で回す。炎は熱くないし、スルリとした感触で中々に良い手触りだ。ザラリとした骨の感触とかかけ離れているから、おそらく本物の骨ではないのだろう。


「よく頑張ったなティア!クロもほら、ちゃんと元通りだ。ティアのおかげだ。ありがとう。」


 後ろにいるクロの顔を見せてやれば、良かったと微笑んだ。

 ゆっくりと綺麗に座ったティアが首を傾げながら聞いてくる。


(ティア、英雄ナレタ?)

「あぁ、立派な英雄だ。」


 可愛い質問に笑顔でそう返せば、赤紫の光を細めて照れ臭そうに笑う。愛らしいティアを再び撫でる。


「さて。鉱石の回収と行こうか。」

(…ウン。)

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