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即戦力

 最下層はかなり入り組んだ地形で、行き止まりが多くある。その行き止まりに一度も入ることなく、開けた空間に出る。ドーム状にぽっかり空いた空間で、壁には今きた道以外にも沢山あるらしく穴が無数に空いている。何だか面倒臭そうな予感がするが、気のせいだと思いたい。


「ここがちょうど、敵地のど真ん中だ。」

「…お前、一体ずつ探すのが面倒だからわざと巣の真ん中に来たんじゃないだろうな?」

(面倒臭ガル、良クナイ)


 私とティアでクロにじっとりとした視線を送ると、数秒固まった後無言で微笑んだ。

 はぁとため息をつき、このドームに着いた時から感じていた敵の気配が、すぐそこまで迫っている事に気づき武器を構える。


「始まるぞー。第一波、数は3。それぞれ2時の方向、4時の方向、8時の方向。」

「近いやつがやればいい。ティア、無茶はしないように。」

(分カッタ!)


 のんびりとした口調でクロが敵の情報を明かす。私が一番近いのは4時の方向からくる敵だ。まずはそいつから。

 ティアの元気な返事を合図に敵がドームの中に一斉に入ってくる。タングルだ。頭から尾の先まで黒光りする鉱石に身を包んだ、竜に似た姿の魔物だ。短い手を浮かせた前屈みの姿勢から覗く腹にも鉱石が生えていた。炎は完全無効だな。


「「「クァァァァァァン!!」」」


 タングルの甲高い咆哮がドームに響き渡る。反響してかなり頭に響く。

 洞窟の中は私の独壇場だ。正面にいるタングルを背後から影で殴り私の方へ飛ばす。渾身の力で殴ったから、かなりのスピードで飛んできた。そこを鎌に雷を纏わせタングルを薙ぐ。背中より腹の方が生えている鉱石が薄いようだ。深い傷を負わせられた。その傷へ、義足ができる間に練習した闇系の魔法、ダークネスボールを成形し打ち込む。


 闇系の魔法は他の魔法とは違い、当てられると視覚や聴覚、思考の妨害という状態異常をダメージと共に追加できる。便利な魔法だが、他の魔法よりも威力は下がる。ただ、私と闇系、状態異常の魔法は相性がいい。大ダメージを叩き込めるし、妨害だってできる。


「クルァァァァァン!」


 いきなりおかしくなった自分の感覚を呼び戻すように、タングルが咆哮を上げる。残念ながらその異常は時間経過でしか解けない。私が身を持って実験した。いくら喚こうが暴れようが戻るのは90分後だ。

 私が相手をしているタングルが恐怖の叫びを上げたことで、クロとティアが相手をしているタングルが一瞬怯んだ。その隙に2人はとどめを刺す。それを確認し、私も暴れ狂うタングルを影で固定し、首を切り落とす。


「次、ニ波!数は12、さっき出てきた穴の左右の穴から来るぞ。」

「了解!」

「ワン!」


 タングルが来る前に、継続ダメージと状態異常を付与できる罠、ダークネスジンをクロが言った穴の出口あたりに12個設置する。どれか一体でも錯乱状態になってくれれば、内側からの崩すこともできるはずだ。


 穴から飛び出してきたタングルが、咆哮を上げようと口を開く。頭が痛くなるあの咆哮をやめさせる為、アクアカッターを最大出力にしてティアやクロの正面まで飛ばす。最大と言っても私は相性が悪くダメージは見込めない。だがそれでいい。

 私のやりたい事が伝わったようで、「なるほどな、確かにそれは効率いいわ!」と、私と同じように威力のないアクアカッターで地面を濡らして水溜りを作って行く。


「ワォォォォォォン!」


 ティアが遠吠えをし、ドームの中に豪雨を引き起こす。地面には水が足首が浸かるくらいまで溜まった。罠を踏んでパニックになっているタングルもずぶ濡れだ。

 2人と視線を交わし、私とクロは地面に向かって纒雷を、ティアは地面を凍らせ、雨を氷の槍に変化させタングルを突き刺していく。


「あっは、えげつな。」


 雷を放ちながら、悲鳴をあげ倒れて行くタングルを見遣り笑みが溢れる。

 さすがティアだ。魔物相手だからか容赦が一切ない。濡れたタングル達はみるみる凍っていき、降っている氷の槍も時間が経つにつれどんどん鋭さを増す。体に生えている鉱石も槍に砕かれどんどん崩れ落ちる。


 いつのまにか第三波が来ていたみたいで、新たなタングル達も次々ティアに仕留められ、それを乗り越えてまた新たなタングル達が出てくる。キリがない。槍を防がれないよう、積み上がった死体をなるべく多く影の中にしまう。


「ゥワォォォォォン!」


 もう一度ティアが吠える。すると、氷の槍と共に地面に広がった水が唸り出す。


(レイ、クロ!隣来テ!マトメテ殺ス!)


 腿辺りまで増えた水をかき分け、ティアの言う通り隣に行く。クロも翼を使いティアの隣に立つ。すると、ティアが前足で水を叩いた。その瞬間私たちの足元に氷の足場ができる。なんとなくティアがやろうとしている事を察して、MP回復薬を用意する。

 どんどん増えて行く水かさはついにドームの6割に達した。タングル達は鉱石の重さで浮く事ができず、ほぼ溺れている。ただ、脇腹あたりに鉱石に隠れた小さなエラがあるからそこで呼吸し、生きているやつも少なからずいる。きっと出てきていないだけでまだ他の穴の中にも、生きている奴はいるだろう。


「ワォォン!!」


 一歩踏み込み、ティアは今までよりもさらに力強く吠える。その瞬間足元に広がった水が一瞬にして凍りつき、割れた。割れた氷はそのまま静かに消えていく。足場になっていた氷も一緒に割れてしまったから、影を使ってゆっくり降りる。

 地面には大量の死体が転がっていた。ティアは本当にまとめて片付けてしまった。

 鉱石も砕けているものもあるが、全て回収できそうだ。ここにくる途中でかりたピッケルを取り出し、タングルの体から鉱石を外す作業を始めようと屈み込む。


「…ん?」

「どうした?」


 小さい声が聞こえて、クロを見上げる。質問に答えず、ずっと一点を見つめているクロ。何が起こっているのか分からないが、何かあることは確かだ。私は隣で寝転んでいたティアにMP回復薬を飲ませてクロから距離を取る。


(ドウシタノ?クロ、何シテルノ?)

(分からんが、嫌な予感がする。)


 こういう予感は当たるのだ。

 未だ動かないクロを土操作で軽く沈めて、私とクロの間に落とし穴を作る。クロの事を信用していないわけではない。ただ彼の目がどんどん濁っていっているのだ。おそらくティアのあの攻撃で死ななかった残党が、クロに何かしている。


 タングル以外に魔物がいるとは聞いていないが、ギルドで小耳に挟んだ話がある。鉱夫が狂ったようにいきなり笑い出し、持っていたピッケルで自身の頭を突き刺したという話だ。タングルとは何も関係ないようだが、妙に引っかかる。急に暴れ出したタングル達、ピッケルを突き刺した鉱夫。世界が変わった事が原因かと思っていたが、どうやら別の原因がありそうだ。


 とにかく今はクロを正気に戻す事が先だ。鉱夫のようになるとは限らないが、狂ってしまったら困る。

 念のためティアを遠くで待たせ、クロの元へ歩み寄る。顔を覗き込むと焦点が合わなくなってきていた。これはまずい。


「起きろ。」


 その一声と共に一発、頬へ拳を叩き込んだ。一瞬瞳が元に戻り、気がついたかと思ったら竜化した拳が飛んできた。避けるのが遅れて、拳が頬に掠り傷を作る。


「グルルル…」

「遅かったか。」

評価、感想等頂けたらとても嬉しいので、是非お願いします!

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