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竜人の独白

 なんでも1人でやらなければいけないという考えが、レイにはあった。ちゃんと考えれば分かったはずなのに、後回しにした。そのせいでレイは片足を吹っ飛ばした。あの時、丸呑みにされていたら中から爆破する予定だったのだろう。レイの表情が、そう言っていた。ダンジョンから出る時も、片足がないのに1人で歩こうとしていた。レイは人への頼り方というものが分かっていない。身の上話を聞いた感じ、分からないのは仕方ないのだが。

 悪い癖はそれだけではない。自己犠牲精神が強すぎる。街に戻れてからも何かあるとすぐに俺を背に庇う。ティアが草むらから顔を出した時もそうだった。単純な火力では俺の方がレイより上だというのに、だ。大切に思ってくれているというのは俺と他の人との対応の差で歴然だが、レイが犠牲になってまで守られたくない。


 自分を犠牲にして巨人を倒し、まともに立てもしないのに人を頼ろうとしないレイに対しイラつきはしたが、それよりも何も出来なかった無力な自分に対しての怒りが大きかった。角で動きを封じられていたとはいえ、逃げ出し方はいくらでもあったはずだ。あの時レイを助けに行けていればレイは片足を失わずに済んだかもしれない、もっと俺が強ければレイは自爆を選択しなかったかもしれない、もっとスキルを使いこなせていれば、もっと力が強ければ、もっと、もっと…。


 自分への怒りと後悔で、若干八つ当たりのように抱きついて気持ちをぶつけた。もう2度と自爆なんて選択をさせないように、もう2度と自分を犠牲にさせないように。

 今度は俺がこいつを守る。


 街に戻ってからも驚きと怒りの嵐だった。

 街が変わり果てていたのは当然驚いたが、それよりもレイの口調がやけに丁寧だった事の方が驚きだった。争いを避けるために下に出てあしらえるからという理由だったが、それを教え込んだのはレイの父親だった。俺も正しい父親がどんなわからないが、自分の娘に対して行う教育じゃない事は確かだ。

 受付嬢達に対してもだ。日々傷だらけの姿で懸命に薬草採集を行う少女に手も差し伸べず、「薬草取り」なんてあだ名で呼び、一時的な名前にもそこから取るだなんて。あだ名で呼ぶ暇があるなら治癒士が傷を癒せただろう。本来学校に通っている時間にも採集に来ていたのだから、学校はどうしたのだと聞くこともできただろう。痩せ細っているレイに、おやつだとか言って食べ物をあげる事だって出来たはずだ。それをしないでレイとの関係はだの、どう知り合っただの問い詰めてくる。今までぞんざいな対応をしてきたのにそれを棚に上げ、保護者気取りな受付嬢達に頭にきた。


 なんとか繕ってはいたが、イラつきが収まらない。義足の依頼を出した後、服屋に着くまで気持ちを落ち着けるため、なるべく感情が入らないようにレイに説教した。ダンジョン内でのアレは、ただ感情をぶつけただけだ。次から俺を頼る事、自分を大切にする事を約束した。いざというと時は破る、という覚悟を決めた顔をしていたから注意しなければならないな。


 服屋に行き、ボロボロになった服をレイと同じような服装に変えた。色はレイの服を反転した白いコート、大きめの襟のシャツ。服を変えた理由が単純な理由で恥ずかしいのだが、街に戻ってからレイはちょくちょく視線を集めていた。17歳とは思えないほど綺麗に整った顔、冒険者には珍しいしっかりした立ち振る舞い。熱い視線を集めるのは当然というくらいだ。顔にできた大きめの火傷のせいで別の視線も集めているが、俺はそれが気に食わなかった。だからこいつは俺の相棒だって、少しでも周りの奴らに知らせたかった。恋愛感情はない。

 レイがアクセサリーを眺めていたから気になるものがあったのかと聞くと、ゆるゆると首を横に振った。今までこういうものは遠い存在だったから何が何だかさっぱりだと、苦笑いをして眺めていた。

 その後、店員の着せ替え人形になっていたが服に触れる良い機会だと、程よいところで止めようと、服装が次々変わるレイを眺めていた。


 義足の依頼を出して、出来上がるまでの4日間。俺とレイは別で行動していた。レイとどこかに行くときは必ず声をかけることを約束し、街の外、宿屋が見える開けた場所でひたすら特訓していた。

 亜人用の指輪を外し、索敵スキルを取って竜化を行い周りにいた魔物を蹴散らす。ダンジョン内の魔物より遥かに弱いこいつらは、尻尾に軽く当たっただけでも死んでしまうくらいだが、指輪を外した状態でいきなり強敵とやり合うのは無理があるため、このくらい雑魚の方が助かる。魔石を落としてくれることも期待したが、雑魚すぎて4日間倒し続けても魔石が落ちることは無かった。雑魚の素材は大量に手に入れたから、お金には困らなさそうだ。


 ウルティの街を出てからはのんびりと話しながらラモンに向かった。俺はこっちの世界で生まれ育ちもこっち。向こうの世界の事はほとんど知らないから、レイにあれはなんだ、これはなんだと聞きながら歩いた。レイはティアの相手もしつつ、俺の質問にも丁寧に答えてくれた。

 レイの話では、向こうの世界では魔力は余分な物とされていたようだ。魔法よりも科学が発展し、扱いきれなければ暴走し、事件や事故を引き起こしてしまう魔力は危険視されていた。だから人間よりも魔力を多く持つ亜人達は差別されていたと。

 今考えても不思議な話だ。小さい頃から魔力を使っていれば、暴走することも事故を起こすこともない。なのにそれをせずに押さえつけるなど、変な話だ。


 ラモンに着く前、レイの父親に鉢合わせてしまった。咄嗟にレイを背中に隠し、やつから遠ざける。人違いだと伝えても食い下がり罵声を浴びせ続けるクズに、手が出そうになる。

 しかし、コレにはすでに奴隷の証である首輪がついていた。先にこっちが手を出してしまえば奴隷商から、「商品に傷をつけられた!売り物にならないから買え!」と言われるのがオチだ。コレの話を聞かないよう、遠くで魔物を狩って遊んでいるティアに意識を向ける。可愛い。

 しばらく勝手に喚くやつを無視していたら、持ち主が来た。

 早く連れて行ってくれないかと考えていたら、後ろから冷や汗が出るほどのとんでもない威圧感が襲ってきた。指先が冷たくなるのを感じながら恐る恐る後ろを見ると、レイが見たことない凍った笑顔をしていたのをよく覚えている。遠くにいるティアも尻尾を足の間に入れていた。

 奴隷商が去ってからレイが、「威圧のスキル取ろうかな」とか呟いていたからティアと共に全力で止めた。素であれくらいの威圧感が出せるなら、スキルで誇張しなくていい。俺たちが持たない。


 ラモンに着いてから、変な視線を度々感じるようになった。明らかに敵意を持つ視線なのだが、人が多すぎて索敵を使っても相手が誰か特定ができない。今のところ攻撃を仕掛けてくる様子はないから大丈夫だとは思うが、その視線のせいで気が散って仕方ない。


 宿に入り2日分の疲れを癒そうと布団に潜り込んで休んでいれば、強盗が押し入ってきた。指輪を取られたが、俺にはもう必要ない物だったから放置していたら、レイとティアで強盗を撃退してくれた。

 何かあれば飛んでいってくれるティアにレイを任せ、他に仲間はいないかと狸寝入りしながら索敵を使う。すると昼間感じた敵意を持つ奴が、2軒ほど離れた宿辺りにいる事に気づいた。幸いギルドはこの宿のすぐ裏。隣の路地を通ればすぐで、その路地は奴がいるところからは見えないはずだ。

しばらくしてレイが無事に帰ってきてからも、奴が動く事はなかった。


 盗まれた指輪を受け取り、新しい義足と俺の指輪やティアの装備を作ってもらいに鉱山街の門をくぐる。索敵を使ったらまた、奴がいた。スキルを使い慣れていないから、誰か特定ができないのが悔しい。

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