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夜中の訪問者

 屋台を一通り見終え、宿で一泊してからロザイアの言うおじいに会いに行く事にした。

 鉱山街とラモンとは隣り合わせになっているから、鉱山に行きやすいように街の境界線近くの宿に泊まる。今回義足が高くつくと考えて、宿代はケチった。ご飯は今晩の夕食と明日の朝食だけ、お風呂はなくシャワーのみの簡素な部屋だ。

 1日中草刈りをし続けてきたおかげで体力はある。それに途中の魔物は全てティアが狩ってくれた。が丸2日歩き続けるのは流石に疲れた。ベッドに身を預けた瞬間、眠りに落ちた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 早朝に外の喧しさで目が覚めた。時間を確認したら4時。通りが騒がしくなるのは早すぎないかと思い、覚醒してしまった体を起こし窓の外を覗く。


「だから、なんでリンゴが銀貨1枚なんだ!いつもは銅貨1枚だろ!高すぎるだろうが!!」

「そう言われても!世界がおかしくなってから今まで使ってたルートが使えなくなって、こっちも困ってんだよ!高いのが嫌なら他所に行きな!」


 そんな会話が至る所から聞こえてくる。世界が変わってから地形も物価も大きく変わったみたいだ。大変だなぁ、お金足りるかなぁと呑気に考えていたら、部屋の外に人の気配が近づいている事に気づいた。ティアも気づいたようで扉を睨みながら寝ているクロを隠すように立ち上がった。


(ティア、そこで寝ているフリを。入ってきたら奇襲しよう。)

(分カッタ。)


 再びベッドに横になりながら警戒するティアに伝える。部屋の中、扉付近にいつでも動かせるよう影を用意し、撃退の準備をする。


 カチャリと小さな音が響き、ゆっくり扉が開く。入ってきたのは男3人組。3人とも出店でよく見た店員の格好をしている。

 ラモンに来てからも魔物の素材は度々売っていたから、そこを見られたのかもしれない。

 部屋の中央辺りまで男2人が物色しながら進む。もう1人は部屋の入り口で待機している。そろそろか。


(ティア、もういいよ。)

「ガルルァ!」


 合図を送った瞬間、ティアが入り口付近の男と扉の間に飛び出し退路を塞ぐ。


「な、なんだ!?」

「うわぁ!」


 部屋の中央にいる2人が、ティアの声に驚き振り返った。それを後ろから影で縛り上げる。盗られたものがないか確認するため、手だけ外に出しておく。

 ベッドから起き上がり、ティアの元まで歩く。今も唸り続けるティアの頭を撫でて、尻餅をついていた男も影で縛り上げる。

 手の中を目で確認し、影を動かし服の中まで盗られたものがないか確認する。盗られたものは、寝る前に息苦しいからと取った私のベルト、クロが普段から身につけていた指輪の2つ。ベルトは普通の服屋で買ったものだし、クロの指輪は亜人用のどこにでもある指輪。店を経営してる者のはずなのに価値がわからないのか?


「あ、謝るから離してくれ!すまなかった、出来心だったんだ!!」

「盗った物もちゃんと返す!本当にすまなかった!だか」


 突然騒ぎ出した男達を影の中にしまい、声を強制的にシャットアウトする。ろくに眠れていないから疲れも取れず、寝不足で頭痛も酷い状態なのに、大声で話されると頭に響くのだ。お願いだから静かにしてほしい。


「ティア、こいつらをギルドに置いてくるから、クロの事お願いしてもいいか?」

(任セテ!)


 胸を張って言ってくれるティアに、「お土産買ってくるね」と言って頭を撫でて部屋を出る。


 ギルドは泊まったこの宿の反対の通りにある。近くて便利だ。まだラモンに来てからギルドに顔を出していなかったから、ついでに挨拶を済ませてしまおう。


 まだ5時だと言うのに酷い人混みだ。人の間を通り抜けてギルドに向かう。背が低く立派な髭を蓄えた男がチラホラといたから、朝は人間よりも亜人達の時間なのかもしれない。

 ギルドの扉を開き、手前にある酒場を通り抜けて受付カウンターに顔を出す。


「朝早くにすみません、強盗を捕まえたんですが。」

「はーい、ただいま!…よいしょっと!」


 元気な声が響いても見えなかった姿が、掛け声と共に現れた。緑の髪をおさげにした背の低い可愛らしい女の子だ。ドワーフのようだ。


「強盗を捕まえられたのですね!その輩は今どこに?」

「あぁ、ここです。」


 カウンターに届かないからと置いた椅子の上に立ち、捕まった強盗を探す彼女。その目の前に強盗を出す。縛るための縄は持ってなかったから、影で縛ったまま。すると、急に出てきた事に驚いたのか、「うぎゃぁ!!」と奇声をあげて椅子ごと後ろにひっくりかえった。


「…あらら。」

「ど、どこから…!?まぁそういうスキルをお持ちなんですね、失礼しました。こいつらは引き取りますね。盗られた品は何かお分かりですか?」


 椅子を置き直しカウンターから出てきた彼女は、素早く強盗を縄で縛り上げ、奥にいた職員に引き渡した。

 盗られた品によって強盗らの罪の重さが変わるのだ。盗まれたベルトはそんなに価値はないが、クロの指輪は亜人からはけして盗ってはいけない物だったらしく、強盗らは重い罰を受けることが決定した。

 獣人や竜人は必ず獣化、もしくは竜化が使える。しかし、獣化、竜化すると身体能力が上がりすぎてスキルに振り回される事が多々ある。それをある程度抑え、獣化や竜化を安全に使えるようにするための道具があの指輪なのだ。それを奪うということは後に大きな混乱を起こす可能性があるからと、重罪になっている。あの3人組はしばらく牢の中だろうな。


 強盗をギルドに渡し終え土産を買って宿に戻ると、クロが部屋に朝食を持ってきて準備してくれていた。

 パンとスープという簡単な朝食だが、宿代をケチったから仕方ない。少し冷え硬くなったパンを食べながら、取り返した指輪と出店で買った焼き鳥をクロに渡す。ティアには焼き鳥を串から外して渡す。


「これ、床に落ちてたぞ。」


 強盗の事は伏せて、クロの掌に指輪を落とす。寝ていたのだから強盗の事は知らないはずだし、教えたらなぜ起こさなかったと若干面倒な事になりそうだから黙っておく。


「嵌めたままにしてたはずなんだがな。ありがとう。」

「それってずっと嵌めてないといけないのか?」

「いんや。今は振り回されることもないし、逆に本来の力が出せないからもういらないんだよな。」

「努力の賜物だな。」


 クロのようにスキルに振り回されなくなったら、逆に枷になってしまう。ただクロは幼い頃から嵌めていた物だから、無いと落ち着かないのだと、困ったように笑いながら指に嵌め直していた。


「今日、例のおじいって人に会う予定だし、新しく作ってもらうのはどうだ?今度は抑える物じゃなくて、サポートしてくれる物を。」


 以前クロが言っていた。魔石は売るか、装備の素材として使うのが一般的だと。ならば余っている魔石を使って新しい指輪を作って貰えば、クロの竜化がさらに強化できるかもしれない。


「いいのか?余ってるとはいえ、売れば結構な金になるぞ?」

「持て余してるくらいだから、良いだろ。クロのを作ってもらうついでにティアの装備も作ってもらおうか。」

「そうだな。…ありがとうな。」

(ティア強クナルー!)


 ぴょんぴょん飛び回るティアを眺めながら朝食を食べ終え、身支度を済ませて鉱山街に向かう。途中で変な視線を感じたが、振り返っても誰もこっちを見ている人などいなかったから気のせいだと信じ、鉱山街への門をくぐった。

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