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再会

 向こうの世界の瓦礫やら、車の残骸やらがそこかしこに転がっていて初の討伐依頼で見た、どこまでも広がっていそうな美しい草原は見る影もない。苔生していたり、車内が真っ白になるほど埃が積もっていたりとかなり時間が経っているみたいだ。


「道が造られたとはいえ、歩きにくいな。」

「我慢するしかないな。怪我しないようにね。」


 そう、最近道は造られたのだがきちんと整備ができてないのか、でこぼこで油断をしたら足を挫いてしまうような道なのだ。

 影から出てテンションが上がっているティアには、でこぼこ道さえも楽しいようでさっきから念話が止まらない。魔物を狩れば何話を飛ばしてくるし、大きめの石が落ちていれば念話を飛ばしてくるし、道から草が突き破って生えていれば念話を飛ばしてくるし、いい感じの木の枝があれば咥えて念話を飛ばしてくる。楽しいのは結構だが、出発してからずっとこうだと流石に返答に困るのだ。途中から「よかったね」と返せば元気よく(ウン!)と返ってくるのに気づいてからは、ずっとこのやりとりが続いている。


 出発してからすでに1度野宿をしている。最初に聞いていた通りならそろそろ鉱山街が見えてもいい頃だ。

 まだ見えないなと思いながら、クロとティア、2人と会話をしていたら、後ろから聞き覚えのあるような助けを求める声が聞こえてきた。


「おいあんたら、助けてくれ!急に意味もわからない世界になったと思ったら、知らん奴に奴隷に丁度いいとか言われて追いかけられてんだ!一緒にいた女も俺を捨てて逃げるし…。頼む、助けてくれ!」


 奴隷。大体の街には奴隷が存在する。街中に奴隷が溢れている国があれば、その逆で少ない国もある。この世界では奴隷は普通にそこかしこにいる。ウルティの街のように奴隷が1人もいない街は珍しい方なのだ。

 奴隷は大体過酷な肉体労働だと思われているのが多いが、そんなことはない。きちんとその体や性格にあった仕事が与えられている場合が多い。給料もけして高くはないがしっかり出ている所が多いのだ。魔力が使える奴隷ならば、だが。


 さっきの言葉を聞いた所、この助けを求めてきた男は向こうの世界の人間なのだろう。向こうの世界では魔力を抑えてこその世界。この男は魔力は多少あれど、使い方など知らないだろう。


「悪いが、私達にはお前を助けるメリットがない。奴隷商に見つかったら面倒だしな。」


 この男は奴隷商に目をつけられている。つまりその時点で奴隷になる事からは逃げられない。奴隷商は大体のやつが賢く頭の回転が速い。逃げようとしたやつがどこから逃げ出し、どこを通り、誰に助けを求めるのか、そこまで計算できるようなやつが多いのだ。そして逃げ出した奴隷が助けを求めた相手が、自分には手に負えない、勝てないと分かったら交渉を持ちかけるのだ。武力で勝てないのなら口で勝つと言った具合に。

 言った通り、この男を助けるメリットは私達には一切ないのだ。話しているところを奴隷商に見つかれば、武力行使か交渉か。面倒くさい事この上ない。


「待てよ、お前フィリスじゃねぇか!お前も俺を見捨てるって言うのかよこのクズが!」


 男に背中を向けて先を急ごうとした時に、そう叫ばれた。バレた。もう関わらないと思っていたのに。


「はぁ?何言ってんだよお前。こいつはそんな名前じゃねぇ。さっさと奴隷商に捕まんな。」


 クロが私を背に隠し、そう言い放つ。ダメだ、この男はそれだけじゃ引き下がらない。


「いいや間違いねぇよ。服は変わってるが、首についた縄の痕!気持ち悪りぃ白い髪に不気味な赤い目!片方はなんか違うが間違いない!奴隷は俺じゃなくてお前の役目だよ、天職だろ!」


 いつだって相手より自分が上だと思い込んでいる男だ。私に対する暴言が止まらない。そのよく回る口のおかげで奴隷商がこっちを見つけ、走ってくるくらいの時間は稼げた。交渉に持ちかけられたら、もしかしたら売れるかもしれない。


「お話中すみません。僕、人材貸出を行なっている者なんですけれど、商品が逃げ出してしまいまして…。こちら、いかがです?活きはいいですよ?」


 武力では敵わないと踏んだのか、交渉に持ち込んでくれた。すでにこいつは商品化しているようで売れはしないだろうが、引き離してくれるだけでもだいぶありがたい。

 今も私に対する暴言と、私を俺の奴隷にしろと言ってくる男。奴隷商の男も流石にうるさいと思ったのか、縄で動きを封じてから魔法かスキルかで口を塞いだ。ナイスだ。


「ごめんなさい、生憎奴隷には興味がなくて。でも本当に活きがいいですね!何をしても死ななそう!」

「それはそれは、残念です。ところで、商品の言葉に耳を貸すつもりはありませんが、気になる事が少々ありまして。貴女様、これの娘なのですか?」

「…さぁ?知らない人間ですね。」


 満面の笑みを奴隷商に向ける。みるみる奴隷商の顔が青くなっていく。イラついてしまったから少し威圧してしまったかもしれない。が、別に少しくらいいいだろう。イラつく言葉を放ったこいつが悪い。


「こ、れは…失礼しました。旅のお邪魔をしてしまいましたね。僕はこれで失礼致します。良き旅を。」


 口を塞がれ失禁していた男を引きずりながら、奴隷商は逃げるように返っていった。途中で念話を飛ばしたであろうティアの言葉に腰を抜かしていたが、何を言ったのかは聞いていなかったから分からない。


「レイの威圧感やばいな、背筋が凍りそうだったわ。」

(チョット怖カッター!)


 再び歩き出した時、クロが冗談でもいうように笑いながら言う。ティアも同意しているから結構な威圧感だったみたいだ。2人には悪いことをしてしまったかな。


「そんなにだったか?なら威圧のスキルも取れたら面白いことになりそうだな。」

「それだけはやめて。」

(ソレハダメ。)


 2人から同時に止められた。そんなに嫌か。


 奴隷商とその商品に会う前よりも別れた後の方が話が弾み、鉱山街の1つ手前の街、ラモンについた。

 鉱山街は鉱石好きなドワーフの街、ラモンはその鉱山街と他の街との仲介役のような街だ。ラモンは日々お祭り騒ぎのような街で、出店が街の名物だ。出店を見ない通りは狭い裏路地くらいしかない。

 ドワーフは酒と鉱石が好きな賑やかな種族だ。しかし、頑固者の集まりでもある。酒場では日々好きな酒や鉱石の事について争いが起きているとかいないとか。賑やかだが気難しい一面もあるなかなかに面白い種族だ。


 用があるのは鉱山街だが、ラモンも面白そうだから見て回る事にした。

 今回は魔物用のバングルをしているため、隠蔽だけかけて一緒に回っている。魔物を連れているのが珍しいのか、子供がティアに触りたいと話してきたり、よじ登っていたり、大人は遠くで大丈夫なのか、バングルはしているがとヒソヒソ話す人も多かった。当の本人はというと、触るのはいいがよじ登られるのは嫌みたいで、子供の服を咥えて怪我しない程度に引き摺り下ろし、ヒソヒソ話す大人に対しては念話を飛ばしていた。


「ティア、向こうに美味しそうなお肉売ってるぞ。食べる?」


 だんだんティアの機嫌が悪くなってきたのを察知し、クロが買ってこようかと提案する。すると、肉という言葉に反応して


(食ベル!イル!)


 とテンションが上がり、クロだけではなく周りの人間にも念話を飛ばした。そのおかげで心配する大人はいなくなり、集まってくる子供が増えた。少し抑えようね。

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