新たな仲間と
「そこのカッコいい角のお兄さん、良かったら私のパーティ入らない?」
宿屋の女将、ヒルダさんに出発の挨拶とお礼をしてお金を払って出る途中、クロが声をかけられた。声の主はさっきのボインの女性だ。
私に用はないだろうと思って、先にギルドに顔を出しに行こうとしたらクロに服を引っ張られた。
(どこ行こうとしてんだ、助けてくれ。)
念話で飛んでくる。クロの方を見ると腕はがっしり掴まれ、胸まで当てられていた。俗に言う当ててんのよ状態だ。
このまま見てるのも面白いが出発が遅れるのは困るので、今もクロを口説き落とそうとしている女性に向かって「すみません」と笑顔で口を挟む。めんどくさいな。
「彼、私のパーティメンバーなので、離していただけませんか?」
「あらそうなの?こんな貧相なのより、私の方が貴方を楽しませられると思うけど?」
私を軽く流して口説き続ける。性的な事しか頭にないのかこの女は。
「いい加減にしてもらえます?これから用事があるんですよ。貴女なんかに構ってる暇ないんです。」
「はぁ?私より弱いくせに何言ってんの、あんた?あ、じゃあこうしましょ!私に勝てたら彼を離してあげる!私に負けたら二度と彼に近寄らないで頂戴!」
急にとんちんかんな事を口走ったと思えば、もうクロを自分のものだと言っている。頭の中がお花畑と言うか、ネジが外れまくってると言うか。
「はぁ…、分かりました。ただし私が勝ったら二度とその姿を私の前に現さないで下さい。」
今も抗議しているクロを一旦黙らせ、喧嘩を買う。
この前はこういう喧嘩を買って痛い目にあったから、今度は油断しないようにしなければ。
「分かったわ。Bランクの力、見せてあげるわ!」
そう言って女はクロを少し離れたところに避難させ、レイピアを構えた。
決闘というのはやったことがない。だからどうなったら勝ちなのか、Bランクとは何か分からない。とりあえず先手必勝という事で、女の下にある影を動かし丸出しになっている腹を殴る。勢いもつけずに殴ったからそんなにダメージはないだろうなと思い、ファイアボールを3つと鎌の形にした影を用意しておく。
「…レイ、ちゃんとした対人戦が初めてなのは分かるけど、手加減しようか。」
いつのまにか隣にいたクロに肩をポンポンと叩かれる。やりすぎてしまったらしい。クロの一声で人だかりから歓声があがる。
流石に殺す気は無かったので、吹っ飛んで気絶している女の元に駆け寄り、殴った腹に買ったばかりの回復薬をぶっかける。
「ここまでやる気は無かった。すまん。」
喧嘩をふっかけてきたのは向こうだからと、言葉だけで謝罪をしてギルドに向かう。後ろから「待ちなさいよ化け物」と聞こえたが、無視する。決闘には私が勝ったのだ。言う事を聞いてやる必要もない。
周りの野次馬も騒がしいが完全無視を決め込む。もうこの街にはしばらく戻らないと思うし、ここで起こることも私には関係ない。取り繕う必要もない。
ギルドの扉を開け、カウンター内にいたエテルにこの街を出る事を伝える。案の定すごい勢いで引き留めてくる。もう決めたこと、準備が終わっていること、義足のことを話し、街から出る事を伝えると折れてはくれた。納得はしていないようだが。
「あ、出発する前に冒険者情報とパーティ情報を更新させて下さい。」
冒険者にもランクがあるようで、一番下がFランク、一番上がSSランクになっている。ランクは自動更新されるのではなく、ギルドで専用の端末を使ってランクを更新しなければならない。そしてBランクからは上に上がる度にランク試験というものが存在する。難易度の高い魔物の討伐であったり、護衛任務であったり、ランクの高い植物の採取であったり様々だ。一気にランクアップもできるが、ニ段階までだ。
私は前から薬草採取を繰り返していたからFランクスタートではなく、Eランクからスタートしていたようだ。
ランクが高くなると受けられる任務の幅も広がるし、バングルに物を入れられる数が増えるらしい。危険な任務に指名されることもあるが、それは断ることも可能らしい。ただ、危険なだけあって報酬が目が飛び出るくらいの額であったりする。命をかけて馬鹿高い報酬を取るか、安全な任務でコツコツ稼ぐか。道は様々。
「これにバングルを置いてください。置くだけで更新されるので!」
エテルが持ってきた石板のような魔道具に、バングルを置く。石板が淡く光り、バングルに文字が刻まれ、嵌め込められていた青い石が、若干緑を帯びた石に変わった。
「ランクアップおめでとうございます!冒険者情報と、パーティ情報、両方更新完了です!では、お次にクロウディアさん、バングルをこちらに。」
石の色が変わるのはランクが上がったからだったようだ。前よりも磨かれたような石で綺麗になった気がする。刻まれた文字はB。ランクを意味しているようだ。
クロの更新も終わり、私達2人ともBランクに上がった。
「お次にティアさんにお願いしたいのですが、ここにはいらっしゃらないのですか?」
「あぁ…えっと…部屋を変えて話したいのですが。」
パーティ情報の中にティアも入っていた。流石に人が集まっている場所でアンデッドであるティアを表に出すわけにもいかず、部屋を変えてもらう。不思議そうな顔をしていたが、前の倉庫の絵がある部屋に移動させてくれた。
「ちょっとびっくりするかもしれないですが、いい子なので攻撃しないでくださいね。」
軽く注意をしてエテルが頷いたのを確認して、ティアを影から出す。
「きゃあ!ま、魔物!?」
「紹介します。私のパーティメンバーのティアです。」
エテルは影から出てきたティアに、驚き尻餅をついた。軽く震えている気がする。
ティアは念話で話すでも尻尾を振るでもなく、ただ大人しく座っていた。心なしか表情が硬い気がする。ティアが死んだのは人間が原因だから、仕方ないのだが。
「そ、そうだったのですね!使役師という職業もあるので、魔物がパーティに入るのは問題ありません。魔物用のバングルを用意しますので、少々お待ちを。」
エテルは壁伝いになんとか立ち上がり、倉庫の絵からバングルを取り出して手続きを進めていく。
途中、魔物用のバングルは首につける物なのだが嫌がってバングルを吹っ飛ばしたり、エテルの方を勢いよく振り向いてビビらせていたり、隠蔽が解けてアンデッドの姿がバレてしまったりと色々あったが、無事に登録手続きが終了。
ギルドから出る時にマスターのダンカンから紹介状をもらった。中身は見てもいいけど無くさないようにねと言われたが、興味がなかったから即バングルに仕舞った。
「では、またいつか。ありがとうございました。」
街の外に出るための橋まで見送りに来てくれた三人姉妹とその両親、武器屋の店主と技師に、一礼して街を出る。
「さて、のんびり行きますか。」
「だな。」
(歩ク歩ク!)
森を抜けて伸びをしたクロにそう返し、融合した世界をのんびり見ながら歩き出した。
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