第4章10 処遇
遅くなりました〜!
森の中に設置した、テントなどがある拠点に戻ってきたフォーティスとヴィルは、ベットに横たわっている女の子に目を向ける。
服は、貧相なもので、その上から布1枚だけ羽織っているようなものだ。しかし、布は破れていたり、汚れていたりはしていない。
それどころか、この布には魔法の力が備わっているらしく、魔法道具らしい。
「ただの子供ではなさそうですね。」
「そうですな。大方どこかのお偉いさんの娘とかそんなとこでしょう。」
ヴィルとの意見はその方向で合致していた。服が貧相なのも何か地位を偽らなければならなかったのかもしれない。それに、何故あんな森の奥深くに居たのか分からないが、それはこの子が起きてから聞けばいい。
ヴィルとフォーティスは、女の子から目を逸らし、これからどうするのかについて話し始めた。
「何はどうあれ、狼王が町の近くまで迫っているのは確かですね。」
「はい。今のところ人が襲われたというのは……この子達以外いないようですが、それも時間の問題だと思います。」
「そうでしょうな。ただ、あれを見た限りでは難なく倒せるような敵でしょう。」
「師匠に同意です。」
ヴィルとフォーティスで話をしながら、意見をまとめた。
多くの餌…もとい、兵士達がいるところに狼王が来ると予想した。1人として死なすつもりはないが、囮のようにして、別働隊であるフォーティスが倒すという作戦だ。
翌朝、部隊を編成して準備は整った。
狼王は、あっさりとフォーティス達によって倒され、その亡骸は手土産として王都へと持ち帰った。
女の子の処遇をどうするかヴィルとフォーティスが相談した。狼王は倒された、情報を聞きとる必要はなくなった。そのため元の場所へと戻そうという結果になった。
しかし、この女の子の事を知っている人達が、近くの町にはいなかった。
領土の広い王国だが、等間隔で関所がある。その関所にも聞いたが誰も知らなかった。
隣国のスパイではないかと、処分する方向になったがフォーティスがその案を却下し、自ら面倒を見ると言い、フォーティスの家で預かることとなった。
◇◇◇◇◇◇
フォーティスが、戻って3日程経った頃。剣の稽古をしていたところに、メイドから連絡が入った。
「預かった女の子が目を覚ました」と。
すぐさま、剣の稽古をやめ、その少女の元へと走っていった。
少女がいる部屋の前に立ち、ノックをする。
「入りますよ。」
と言ったが、許可を出す返事はなかった。
返事はなかったが、ここの家の者だし、恩人として多少無礼をしてもいいかと、許可なく部屋に入った。
扉を開けきる前に、目の前から皿が飛んできた。
それに反応しきれず、顔面にクリーンヒットしてしまう。
痛みで、顔を押えながら悶絶する。
涙目で飛んできた方を見ると、少女が脅えたような顔をして、後ずさりして部屋の隅に立っていた。
痛みを我慢して、ニコッと顔を笑顔にして挨拶をする。
「初めまして、フォーティス=アルバーンと申します。恩着せがましいですが、貴方を助けた者です。」
警戒を与えないよう、明確に敵意は無いことを伝える。
少女の顔を見ると、困惑したような感じでブツブツと何かを言っていた。
何を言っているのか小さすぎて聞こえなかったが、それを問いただすようなことはしない。
相手が話してくれるのを待つのみだ。
「あ、あ。……ありがとう…ござい…ます……。」
小さいながらも確かに聞こえた感謝の声に素で笑顔になる。
「困った人を助けるのは当たり前ですよ。」
と、言うもまだ、混乱しているようだった。
少し時間が経つと、冷静になったのか、周りをキョロキョロと見ていく。失礼などとは思わず、相手のペースに合わせ警戒心を解くようにする。
「こ、ここは?」
「ここは、私の家の私の部屋です。ティストス森林で倒れてた貴方を保護させてもらいました。」
そう言うと、記憶を遡るような顔をし、急に青い顔をしてフォーティスの元へと近づく。
「母は!父は!どこですか!」
この子の周りには誰もいなかった。狼王の口元に血がついていたのをみると、恐らく…。
気乗りはしないが真実を伝える。
「残念ながら、狼王に喰われてしまったと…。」
「そ、そんな…。」
少女は唖然とした状態で膝から崩れ落ちた。鼻をすする音が聞こえる。フォーティスは、何も言えずにただただ背中をさすることしか出来なかった。
(この子はもう頼れるものはいないんだ。こうなるのも仕方ない。…情報を聞くのはもっと後の方がいいか。)
「混乱もしているだろうし、もう少し休んでいってくれ。聞きたいことがあってここに居させるけど、まだまだ休養が必要なようだし。落ち着くまで待ってる。それと、出来ればなんだけど名前を教えてくれる?」
フォーティスは、泣きやみもしていない少女にずかずかと、質問をする。フォーティスには時間が無い。
保護していいのは、約1か月程度。
その間に身を潔白するという条件で、この子を保護している。この子が生きる道は無いためだ。
少女は、少し時間がかかったが泣き止んだ。
「フォルテです。フォルテ=キリムと言います。」
「分かった。フォルテ、君の安全は私が保証する。だから、私が戻るまで大人しく待っててね?」
「はい。分かりました。」
フォーティスは、必要最低限の情報を聞き、王城へと向かう。
そこにある、王国の民の記録を見るためだ。
ラリア王国では、出産した者の名前と、誕生日を報告する義務がある。それを怠ったものには厳しい厳罰がくだるという決まりまである。
その情報をまとめたものが、王城にある図書館の厳重管理室にあって、そこにフォーティスは向かった。
フォルテ=キリムという名を探す。
キリムなどという性はフォーティスの記憶にはなかった。有名貴族や、大商人などの有名どころであれば、聞き覚えのあるはずだが、一切聞き覚えがないということは、そういった人達では無いということだろう。
しかし、性を持ってるということは、それなりに地位の高い人物だと言うことで間違いない。
未だ、一般では、性というものが広まっていない。
(ならば、他国の者?)
一通り探した、フォーティスが可能性を感じたのは、王国では無い、別の国からの難民者。
しかし、それも即座に却下する。
(いや、ティストス森林周辺には、他国の町はない。そんな遠いところからあそこに行けるはずがない。)
あらゆる憶測が頭をよぎるが、どれも説得力にかける。謎の多い、女性だが、早く身元を確認しないといけない。
すぎる時間は残酷で、フォーティスの心情を察することなく平等に過ぎ去って行った。
そして、処分が下される日となった。
◇◇◇◇◇◇
「い、今。なんとおっしゃいましたか?」
騎士団の者がザワザワと動く気配を感じた。
それもそうだろう。フォーティスが、驚くべきことを言ったのだから。
「フォーティス。もう一度言ってみろ。」
フォーティスの父が、確認のために先程言った事を問いただしてきた。
それは、本当にその覚悟があるのかの最終確認の為でもあるだろう。
「はい!父上。私フォーティスは……フォルテと結婚することとします!なので、彼女は、この私、フォーティスが身をもって保証します!」
その、いきなりの言葉に、フォルテの処分を決める会議に参加していた2名以外が驚きを隠しきれていない。
冷静なのはフォーティスと、フォーティスの父親だけだ。
「ふむ。その言葉に偽りは無いとみた。ただ、子供のお前がどうやって身元を保証すると?」
そうだ。子供の俺が保証できるはずも無い。
そこをつかれるのは目に見えていた。
だからこそ、そう言われた時の対策は考えてきた。
フォーティスは、決意を決めると、立ち上がってフォーティスの父親の前に行き、剣を突き出した。
「父上!剣の名家らしく、剣で決めましょう!父上を倒したならば、私が非力な子供ではないと証明できましょう!」
そうした、フォーティスの行動に、またもや周りの者達は、動揺せざる終えなかった。




