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第4章8 模擬戦VSフォーティス2

「な、なんという2人だ…。」


 フォーティスの庭の端でフォーティスとへティアの模擬戦を見ていた感想だった。

 フゲンには2人がどのような駆け引きや、剣──今使っているのは木刀だが──のやりとりをしているのかが理解出来なかった。


「こ、ここまでとは。」


 思わず小さく呟かれた声は、2人が放つ音により掻き消えた。

 今現在もまだ決着は着いておらず、2人の激しい攻防が続いていた。

 もちろんフォーティスが強い事は分かっていた。

 彼は王国で剣聖という立場にあり、王国の危機を幾度となく排除している。

 十数年前にあったとある事件もまた、彼が解決した。冒険者組合が出した難易度はSS。

 それもSSという枠に収まるかどうか分からないほどのだ。それをたった1人で解決してしまった。

 つまりは、彼はそれ以上の者だということだ。

 その噂を聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだった。

 しかし、フゲンが実際に驚いたのはフォーティスの実力ではない。フォーティスの実力も驚いたが、それ以上にへティアの強さだ。

 あのフォーティスに引かないレベルで模擬戦をこなしている。

 その強さにフォーティスの部下も驚いているのか、口を大きく開けている。

 その間抜けな顔に笑ってしまう。


(へティア…。いつの間にこんな差が出来ちまったんだろうな。)


 フゲンはへティアの強さに少しだけ寂しさを覚えていた。無論、へティアは冒険者として、力をつけている。それに対し、フゲンはゴループ町の内政をしていた。

 その多忙により、自身の訓練などが出来なかった。

 元々フゲンとへティアの差は大きかった。ただ、隣に立って戦えるくらいには大きくなかった。

 しかし、今はもう、へティアの力の一端が見えないほど差が広がってしまった。


(戦闘面ではもう、役に立てないかもしれないが、それ以外の部分では、役に立てるからな。)


 そう思う事で、心の状態を整える。この世には自分を納得させることが大事なこともある。

 考え事を頭から抜いて、フォーティスとへティアの戦いを見る。

 見ると、戦いは1つのターニングポイントと思わしき雰囲気になっていた。


(あの構えは…。)


 その構えは、3年前に見た、強大な悪魔を払った時の攻撃の構えだった。あの時ですら、何が起こったか分からないくらいの速撃だった。


(あれで決着をつけるつもりか。確かにあの技は常人であれば見切れない技だろう。だが──)


 あの時見た速度よりもさらに速くなっているのならば、それは最早英雄と呼ばれる領域に達していると言っても過言ではない。

 それほどの技を見切ることは英雄と呼ばれる領域でも無理だろう。技を見切るということはその技を完璧に捉えているということ。つまりは、それ以上の実力があるということ。

 しかし、へティアの相手は剣聖だ。

 尋常じゃないほどの実力を有している。


(へティアのレベルは聞いていないが、フォーティス殿は推定80レベルほどあると聞く。)


 フゲンのレベルは30レベルだ。それがフォーティスは倍以上の──30レベルでもこの世界では強いのだが──強さだ。


(俺は、これでも才能に恵まれ人よりも強くなりやすかった。まぁ、本当の才能がどれほどかは目の前の2人によって証明されちまったがな。)


 それで、80レベル台ともなればそれは、国家1つ単位の戦力では言い表せないほど。

 それほどの実力は英雄を超える者。

 超越者と呼ばれている。

 その超越者に対してへティアの攻撃が通るとは思わなかった。


(でも…そう、もしかしたらあの攻撃ならば通用するかもしれない…。)


 その期待とは裏腹に、フゲンには何が起こったのか分からなかったが、フォーティスは立っていた。

 その様子を見て、フゲンはガックリと肩を落とした。

 奥義であろう技を見切られたへティアはどんな様子をしているのか好奇心が湧いたフゲンはへティアの方を見て表情を見てみる。

 その表情は絶望に満ちた顔でも、焦燥している顔でもなかった。

 ただその顔は笑顔だった。

 その顔を見て、フゲンはゾッとする。その顔の中にへティアの魔族としての顔を見て…。


(いや、違う。へティアはそんなやつじゃない!そうだ。きっとあれはまだ対抗策があるとか、強敵と出逢えたことに対する笑顔のはずだ!)


 そうして、自己を無理やり納得させた。

 これから起こる、模擬戦の終盤を見届けようと気持ちを整理してフゲンはフォーティスとへティアの2人にへと意識を集中させるのだった。


◇◇◇◇◇◇


 へティアはどうやって、フォーティスを倒すのか必死に頭を回転させていた。

 世界認識さんにも頼っても良かったが、せっかくの強敵。自分以外の考えを借りずに自分を強化することでもいいのではないかと考えていた。

 ──これが殺し合いだったらそのような甘えはしないのだが。


(う〜ん。ダメだ。何も思いつかねぇ。)


 良い案が思いつかず、半ば諦めで顔を無理やり笑顔の表情をする。

 せめて相手に何も対抗策がないということを悟られないようにするために。

 そのはったりが効いたのか、フォーティスの顔が一瞬固まった気がした。


「今のが貴殿の最高の技なのでは無いか?ならば、勝負はあったも同然だな。」


 そう言いながらも、決して油断することなく構えをとかないフォーティス。へティアがまだ何かしらの力を残しているとみての判断だろう。


(ちっ。何が勝負はあっただ。確かに最高の技だけど、まだまだ勝負は分からねぇだろ。)


 そう思っての行動は速かった。

 考えることを放棄したへティアはフォーティスに向かって突撃する。

 へティアがフォーティスの挑発に引っかかったと勘違いさせるために。思いっきり木刀を振る。

 ただの縦振りで、安直な剣の太刀筋だったが、考えることを放棄したそのひと振りは、英雄の域を超え、超越者の域にかかるくらいのひと振りだった。

 およそ60レベルもあろうかという1太刀だったが、フォーティスはそれを避ける。

 へティアも当然分かっていたように、その追撃をする。

 そして、木刀に集中させておいて、本当の攻撃は足に──

 木刀を振り抜く前に、足でハイキックをした。

 ──しかし、その攻撃は分かっていたかのように避けられた。


「今まで木刀で攻撃し続け、足からの意識を遠ざけ、最高の技をぶつけた後に、足で攻撃をする。実にいい考えだ。だが、足に意識を集中させすぎていたな?バレバレだったぞ。」


 そう流暢に話すフォーティス。

 へティアは、その話を聞きながら、すぐさま次の行動へと出る。

 フォーティスへとダッシュ向かい、木刀をフォーティスの足に向けて投げた。

 フォーティスは、まさか木刀を投げるとは思っていなかったのか、少し体が固まっていた。

 直後、その投擲を避け、少し体勢が崩れた隙を狙って、拳を握りこみ顔に殴りつけた。フォーティスは、後ろにステップをして距離を取る。

 少し、距離をとられ、拳がフォーティスの目の前で止まると、へティアは手を開いた。

 拳を握り込む時に、庭から少し砂をとっていたのだ。

 腰を下げ、殴った手とは別の左手で先ほど足元に投げた木刀を拾いながら、フォーティスへと向かって一閃。

 その卑怯ながらも、敵を倒すための策は完璧に決まった。


 ──相手が剣聖出なければ。


 その一閃は、完璧にフォーティスの木刀が受け止めていた。

フォーティスが力のまま木刀を振り抜くと、受けきれずに、後ろへと吹き飛ばされる。

 策が決まらなかった事で、少し苦虫を噛み潰したような顔をする。


「先程の策は良かったぞ。まぁ、私相手でなければだが。最高の技が、本当に最高の技か不安だったが、小手先に頼るようになるとは。本当にもう、貴殿には技が残っていないのだな。」


 へティアはそれには答えず、ただ黙ってフォーティスの言い分を聞く。

 しかし、その顔には少し悔しさの色がみてとれた。

 次はこちらの番だと、フォーティスがへティアに向かって突撃してくる。

 へティアは、『花吹雪』と同じ構えをした。


「それは、先ほど見切ったはずだ!」


 フォーティスは、今度は一切減速せずに、猛スピードで向かってくる。

 へティアは、フォーティスをギリギリの所まで待つ。へティアが狙った範囲にフォーティスがかかった瞬間、木刀を抜く。

 それは『花吹雪』とは違い、ただの1太刀にかけたもの。

 それはまるで、雷が1つの場所に目掛けて落ちるようだった。


「『雷一閃』」


 この模擬戦の経験を元に、模擬戦の最中に編み出した世界認識さんが作った技。

 音速をも超える1太刀をフォーティス目掛け振り抜いた。


「残念だ。それは予想していた。」


 フォーティスは、その1太刀をジャンプして避けた。『花吹雪』であれば確実にしとめられていた場所を通って。


「先程から、貴殿の狙いがバレバレなのだ。先程の技とは違い、1太刀にかけていた印象だった。狙いが外れ先程の技ならば1本取られていただろうが。まぁ、その速度は予想外過ぎて避けながらの攻撃は出来なかったが。」


 フォーティスがやれやれとでも言うように肩をすくめた。

 攻撃をしようとも思ったが、フォーティスは一切油断しておらず、攻撃に対して対応出来るようにしていた。

 覚悟をしたかのようにへティアは深呼吸をする。

 そしてへティアは、また『雷一閃』の構えをする。それに対しての、フォーティスが何かの技を発動する準備時間を与えないようにすぐに『雷一閃』を放つ。

 フォーティスはまたそれを先ほどのようにジャンプして避ける。


「それは、先程も見きったぞ…。」


 言い切ると同時にフォーティスは、空へと少し飛ぶ。

 へティアの蹴りがフォーティスに当たっていたのだ。

 フォーティスは転がりながら体勢を立て直す。転がっていたのは勢いを無くすためだろうか。


「な、に…。」


「剣であんたを倒したかったんだけどな。……でも。これで、1本だ。木刀で1本取れとか指定してないだろ?」


 フォーティスとへティアの模擬戦は思わぬ形を持って、へティアの勝利で終わった。

この世界で、どれだけレベルが上がるかは決まってます。レベル80台ともなると、神に愛されてるとか、そういう感じの人達しかいないです。

そう考えると女王の108レベルがどれだけ以上かは言うまでもありませんね。

ただ、能力レベルには上限はないので基本、誰でも平等です。希少能力には、制限がありますが。

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