第4章7 模擬戦VSフォーティス1
今回は結構上手く書けました!あと、ユニーク数5000ありがとうございます。拙い物ですが見て頂き感謝しています。
(こいつ、私の斬撃を避けだと。確かに、私が座ってからの攻撃だったとはいえ、間違いなく、やるつもりだった。)
凡人ならばまず死んでいたであろう斬撃。
フォーティスは警戒していたレベルを数段階上げる。
(歩き方や、身のこなし方は全くの素人だった。そこら辺にいる賊の方が上手いくらいだ。しかし、今の攻防を見た後だと身体能力は化け物か。…人間ではないか…。)
フォーティスは自分の記憶を探る。
その中に、ティストス森林で、異常な魔気が探知されたことがあったのを思い出す。
(あれはこいつだった可能性があるな。)
そして―
(レイクルのことを…。しかしまた出かけていたのか。後で説教だな。それと、こいつにも聞く必要があるな。)
「貴殿。それをどこで?」
◇◇◇◇◇◇
(危なっ!こいつ絶対殺る気で剣振っただろ!世界認識さんが体動かしてなかったら首飛んでたな。)
先程のフォーティスの斬撃をそう振り返る。世界認識さんが咄嗟にヘティアの体を動かし事なきを得ていたのだ。
その絶技とも言える剣技を見てヘティアは確信した。
(こいつ多分女王に次いでこの国で強いと思う。というか、剣聖って言ってたしそうなのだろうな。さて…この問いにどう返すかな。)
「なぜそんなに殺気立った剣を向けるのか教えて欲しいんですけど…まぁいいでしょう。実は路地裏で襲われそうになったのを助けてもらったんですよ。そこで名をレイクル=アルバーンと聞いたのでフォーティス様と何か関係があるのではと思った訳です。」
ヘティアは慎重に言葉を選びながら話した。
迂闊な事を言ったり、フォーティスからの好感度が下がれば即戦闘になると考えたからだ。
その返答にフォーティスは考える素振りを見せた。
その時間をヘティアはどぎまぎしながら迎える。
(さて、ここからどう動くか…。予想ではレイクルのことを知らん振りすると思うのだが…。)
フォーティスが口を動かす気配を感じとり、フォーティスへと意識を集中させる。
「なるほど。確かにそれは私と関係があると思うのも必然だな。ただ、残念ながら私とは無関係だろう。その名に覚えがない。」
流石に無関係というのは無茶苦茶だろうと思うが、国民達が知らないというのだから、隠す必要があると言う事だろう。
(でも、納得は出来ないけどね。それに、俺に死ぬ思いさせたんだからそれ相応の対価は貰わないと。)
「本当に無関係ですか?その赤い髪も、整った顔立ちもそっくりでしたが。まるで、親子のようなね。」
そこまで言ってフォーティスの雰囲気が変わった。
「…何が言いたい?」
フォーティスの表情からは憤怒の色が見えた。
へティアはこの状況を上手く切り抜けられるような言葉を考える。
「何か事情があるのではないかと。何らかのことがあって、それを公表していないのでは無いかと思いまして。」
そこでフォーティスの表情を見てみる。
そこではフォーティスの表情から少し憤怒の色が薄くなったようにも見えた。
「なるほどなるほど…。私に容姿そっくりならばそう思うことも納得だ。だが、仮に私がその情報を持っていたとして、素直に教えるとでも思っているのか?」
フォーティスから一気に風が吹いたかのように足を後ろへと滑らせた。
覇気というものだろう。
へティアの背中に嫌な汗が流れる。
「思ってませんよ。しかし…ふむ…。なるほど。ならばこれで決めるというのはどうでしょう。」
へティアは『創造』で木刀を2個創り、片方をフォーティスに投げる。
受け取ったフォーティスはへティアを鼻で笑う。
それと同時に明確な憤怒の色が見えた気がした。
「私を…剣聖を相手に模擬戦か?それは余りにも私を…ひいては歴代の剣聖達を侮辱しているということになるぞ?」
「そのようなつもりはなかったが、フォーティス様の得意分野で一本取れば褒美として情報を貰ってもいいだろう?」
そこまで言って、今まで黙っていたフゲンが口を開く気配がした。
「ま、待てへティア!へティアの実力は知っているが、フォーティス殿の実力はそれ以上だ!そ、それに、これが女王陛下に漏れれば…。」
その先の言葉をフォーティスが手を上げて止める。
「大丈夫だフゲン殿。これは非公式な模擬戦。ここにいる者たちには他言無用と伝えよう。」
「いいですね、フォーティス様。では早速庭にでも行きましょう。」
こういう、豪邸には模擬戦も出来るような広さの庭があるというのが俺の予想だ。
それは実際にそうだったようで、前世の学校の広さほどの庭に案内された。
そこの真ん中に俺とフォーティスが立つ。
向かい合うような感じで10mほど間隔をあける。
「このくらいでいいだろう。試合開始の合図はフゲン殿に任せる。」
「分かりました。」
俺はフォーティスの挙動を1個も見逃すまいと、全集中してフォーティスを注視する。
「では、フォーティス殿対へティア様の試合を始めます。…よーい、始め!」
フゲンの声が聞こえた瞬間、さっきまでフォーティスがいた場所が砂ぼこりが舞い上がったのを確認した。
さっきまでいたフォーティスは姿を消した。
へティアの勘が左に木刀を出すべきだと感じ、左に木刀を出した。
その直後に凄まじい衝撃が俺を襲った。
(ッ!この威力、凄まじいな!)
コケないよう、足で必死に耐えていた。
フォーティスは腕を振り抜いたままの格好でいた。
左手に木刀を持って。
「おっと、利き手では無いとはいえ今のを防ぐとは。中々やるようだな。」
「ってっめぇ…。」
挑発されたことにより演技が剥がれてしまった。
だが、その事には気づいていないようだった。俺は演技をまたし直すことも無く、独り言を呟く。
「絶対に倒してやるよ。」
世界有数の力を持った者同士の本気の模擬戦が始まった。
へティアとフォーティスが向かいあってまた一定の距離を空ける。
(フォーティスは、剣聖という名に恥じない強さだ。俺が今までに出会った中でかなり上位の方だな…。それに、あの攻撃…利き手ではない方であの速さ、か。)
たったの一撃だが、それで分かった圧倒的な差。
それを痛感したへティアは気合いを入れ直す。
(フォーティスはもう手加減をしてくれなそうだしな。)
かませ犬のような相手であれば手加減したままやられてくれるか、そもそもの実力がそこまでないかだが、今のフォーティスを見て手加減をしてくれるつもりはないと分かる。
構え直したフォーティスは右手にしっかりと木刀を握っており、先程とは比べ物にならないくらいの圧を感じる。
まるでフォーティスの体が大きくなったようにさえ思えた。
俺もそれに備えて構えをとる。
(俺は素人に毛が生えた程度の剣の実力。それに比べフォーティスは、生まれた時からこの世界で剣に命を捧げてきた者。実力は火を見るより明らかだ。だから──世界認識さん頼みますよ。)
《了解しました。最大限の力で支援したいと思います。》
俺がこの世界で1番頼りになる人──人なのかは分からないが──からの返事を聞き、心が軽くなったような気がした。
「ほう…。中々良い顔つきになったじゃないか。」
フォーティスが俺の心境の変化を顔を見て気が付いたのかそう呟く。
俺の額から流れ出した。その汗が頬を伝わり落ちる。
──前にへティアが動いた。
下手に防御に回るよりも攻撃をした方がこの場合には適切と判断した。
まずは、縦に上から木刀を振る。初撃が当たるとは思っていない。大抵は防がれる一撃だ。
なので、それを見越したその1撃は軽い。
しかし、その1撃はフォーティスの反撃を受けないような速さと重さでなくてはならない。
そこには、人族の推定Lv30以上──人族からすれば強者──の力が込められている。
そしてそれは正しく、へティアの1撃を上手く受け流された。そのまま地面に当たる寸前で、人には出来ない、人ならざる力でまたフォーティスへと木刀を振り抜いた。──燕返しという技だ。
その高速の剣技を受け、フォーティスに木刀が当たる──
──よりも早くフォーティスは体を少し後ろへと傾けた。
まるで最初からわかっていたようにフォーティスの体のすぐ側を通り過ぎた。
(ちっ。あちらも最初から分かっていたようだな。予測以上の速さで攻撃すれば当たるかもと思ったが、そう簡単には行かないか…。)
すぐさまフォーティスの反撃が始まる。
俺との意志とは別にへティアは飛び退いた。
「─ッ!今のは確実にとったと思ったんだがな。…やはりあの時の…?」
フォーティスの声は後ずさり時の足音によりかき消された。
(今のは…世界認識さんか。助かった。支援してくれなければ、今のでノックアウトだった。)
《それには及びませんよ。それよりも──ッ!》
へティアの体が勝手に動き木刀を右に出していた。
それよりほんの少しだけ遅れて衝撃が来た。
「ッ!」
その衝撃は木刀で守っても、さらに言えばへティアのステータスをしても、相当強い衝撃が来た。
(確かにこれは、人族、希望の星、剣聖って感じが当てはまるな。あの四天王達よりも強いと言われても納得出来るかもな…。)
四天王たちも剣聖もどれほどのステータスか分からないのでその根拠は勘としか言いようがないが。
(まぁ、見方を変えれば、それほどの強敵とも渡り合えている…もちろん本気の殺し合いではないが、良い勝負出来ているのか。さすがと言うしかないな。)
世界認識さんの異常な『未来視』とも呼べる分析能力で攻撃を予測して、その対処を難なくこなしている。
(いつもありがとうございます!)
《──。来ます!》
フォーティスが凄まじい速度でこちらに向かってくる。
その周りをありえないくらいの砂煙が立っている。
俺はそれに向かうつもりはなく、どっしりと待つ。
そして、『思考速度上昇』により脳内時間をゆっくりにする。その目で、フォーティスの一挙を見逃さないと、全集中して待つ。
フォーティスの右手の筋肉の動きを捉え、すぐさまフォーティスに向かう。
木刀を振る時に、予備動作が必要と思い──椅子から立つ時に少し体を下に動かすように──その予備動作の時にこちらの攻撃のチャンスと判断した。
実際それは当たったようでフォーティスは、へティアの攻撃に対し、1つ遅れた対処をしていた。
「ちっ!」
それが苛立ったのか僅かに顔が歪む。
しかし、その1撃の後の対処で、フォーティスの方が攻勢に転じ、俺は後退しながらの防御になってしまう。
そのフォーティスの速撃はへティアのステータスと世界認識さんの補助によりなんとか食い付いていけるようなものだった。
久しく強敵と戦ったことがなかった俺はこの状況に対し、少し嬉しく顔が少しニヤつく。
そこまで思い、俺は疑問を感じる。
(うーん。何故か強者と戦うことに楽しみを覚えている。前世でも、ゲームをする時強い相手と戦う時は楽しかったけど…。それとはなんだか違う気がする。何だろう…。種族の特性か?)
そういえば種族の特性に狂乱があったことを思い出す。
そこまで考え、へティアは心の中で頭を振る。
(今はそんな場合じゃないだろ。フォーティスを見ろ!)
近頃、考え事が多くなってきている気がする。
フォーティスは今、木刀を横になぎ払っている所だった。
恐らく世界認識さんが今さっきまで考え事をしていた時と同じようにへティアの体を動かしそれを防ぐ。
フォーティスは尋常ではない力でへティアを吹っ飛ばす。
宙に浮く感覚がした次の瞬間、仰向けになっていた。
すぐさま、体勢を立て直し、次の追撃がこないかを警戒する。
(いない──いや、これは!)
木刀を俺の方に向けそのまま突き刺す。
木刀は後ろの方で音を立て、勢いが止まった。
後ろへ体を向けつつ後退する。
そこには、へティアの攻撃を木刀で受けた衝撃で体勢を崩しているフォーティスがいた。
「動きはまるで素人だが、その勘の良さ…。そしてたまに出る俺と同じくらいの技術。認めよう。貴殿は強者だ。」
それを無視し攻撃をしようとも思ったが、思ったよりもスタミナを使っていたのでスタミナを回復することに努める。
「剣聖様に褒められるとは嬉しいですね。」
「ふむ。その剣の腕を見込んで私の弟子にしてもいいのだが…。」
「ありがたい申し出ですが断らせていただきます。」
「……そうか。それは残念だ。」
肩をすくめると、フォーティスは木刀を構えた。
「そういえば私が勝った時の報酬を言っていなかったな。…そうだな。よし、私が勝った時は、貴殿を私の部下としよう。」
へティアは驚きで目を丸くしたが、すぐさま元の顔に戻した。
「まぁ、本当は嫌ですが、俺もそれほどの要求をしてますからね。いいでしょう。」
俺は負けられない理由が1つ出来たと、覚悟を入れ直す。
(俺は自由に、そして妹達と楽しく暮らしたいんだ。ブローメが理由があってこの世界に連れてきたとしてもだ。誰かの下につくなんぞ真っ平ごめんだ。)
「では、私も報酬を貰うために、少し力を解放するか。」
そう呟くフォーティスだが何かしら変わった様子は見えない。
(ブラフか?)
「〈加速〉」
目の前からフォーティスの姿が消える。
それと同時に勝手に体が動き数度木刀を振るう。そのどれも全てが木刀を払った感触がした。
フォーティスが攻撃してきたのだろう。
しかし、今までであればフォーティスの斬撃は、『思考速度上昇』を使わなくとも視れていたが、今では何も見えない。
また『思考速度上昇』を使っても、その斬撃は木刀がブレてしか見えないほどの速度になっていた。
(今までは本気ではなかった?いや、その様子はなかった。だとすれば──)
先程の〈加速〉とやらの効果だろう。
しかし、あれは魔法ではないような気がするし、能力でもないような気がした。
そして、剣技のような、技術でもない気がする。
《あれは恐らく特殊能力だと思われます。》
俺の疑問に答えたのは世界認識さん。
フォーティスの攻撃を捌きながらその特殊能力について教えてくれる。
《特殊能力とは、主に人族が使えるものです。1部の亜人族も使えますが、それは例外的なものです。種族的に劣る人族は亜人族や魔族と比べ弱いです。強固な肉体も鋭利な爪や牙も持っていません。そのために非常に弱い生き物ですが、それの差を埋めるためにあるのが特殊能力です。最初から使える訳では無いですが、種族Lvが30以上から1つLvが上がるごとに、2つ覚えられます。剣聖ともあろう人ですと、およそ100以上はあると思われます。》
丁寧に説明してくれた世界認識さんに対し、感謝を述べ、今の情報を整理する。
(人族限定で使える技か。この特殊能力は模倣出来ないらしいし。要注意だな。)
その特殊能力で速度が上がった斬撃を捌いていく。
しかし、段々その反応が鈍くなりつつある。
(体に思ったより反動がきている。これは、木刀に握りなれていないことにより、いつもより疲労しやすいのか。)
その事により反応の鈍さに繋がっていると考える。
ならばフォーティスはどうか。
その速度は鈍ることなくたて続けて攻撃をしている。
(まさか、慣れがここに来て響くとは。今まで短期決戦だったことが災いになったな。疲労を感じない体であれば良かったんだろうが。)
今、悔やんでも仕方ないと頭を切りかえ、ここからの逆転の一手を考える。
(あまり見せたくなかったが、ここまできて、力を秘めていたから負けました、は意味が無い。)
木刀がぶつかりあう瞬間、力を込め、フォーティスをはじき飛ばす。
力を込めた1振りにより、隙が生じる。
それを見逃すフォーティスではなくすぐさま間を詰める。
その間に俺は木刀を鞘に収める動作で居合いの構えをとる。そして世界認識さんに体を任せる。
フォーティスが突撃してくる、それに合わせへティアは木刀を抜いた。
『剣技・花吹雪』
能力とは別の技。
先ほどのフォーティスの斬撃を越える16連撃。
不完全ではあるものの、ルシファーでさえ受けきれなかった技だ。
フォーティスでも、受け切るのは無理だろう。
──しかし、その考えは容易く裏切られる。
異常な速度の16連撃。それは全てフォーティスにより受け流されていた。
(嘘だろ…!あれを受け流すとか…。)
唖然としていたが、花吹雪の最初の1撃の前に、突撃してくる速度を若干落としていたのを思い出した。
「今のは中々だったな。」
「世辞をどうも!」
世辞じゃないんだがと呟くフォーティスを他所にへティアは体を休める。
世界認識さんを使うのにも相当のEPを消費する。
(このままではジリ貧だ)
俺は短期決戦へと持っていくべく、難しい道のりだがなにか無いのかを考え始めた。




