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第4章3 いざ王都へ

遅くなりました!

 俺は今泊っている宿屋の前に来ていた。

 フゲンが言うには出発は今すぐに行くらしい。そして、ユウキとノエルに別れを告げて来いと言われた。そこまで長く滞在するわけではないが、五日ほどここを留守にするので一応伝えておこうと思ったからだ。


(しかし、またユウキに悪いことするな。ユウキも分かってくれるといいんだが。ノエルは納得してくれると思うが...。)


 俺はどんな言い訳をしようと考えながら自分の部屋に入っていった。


「おかえり!町はどうだったの?」


 帰ってきて俺に挨拶をし、疑問を投げかけてきた。

 何かあった時のためにこの部屋に結界を張りここから出ないように言っておいたのだ。


「ああ。大丈夫だったよ。ただこの国の女王が来てただけだった。」


「ええ!それって全然大丈夫じゃないじゃない!」


 ユウキが大きな口を開け、驚愕の表情を取っている。

 その表情を見て俺は笑いを堪えきれなかった。


「いや笑い事じゃないよ!」


 それに抗議するユウキだったが俺の笑いは止まらない。


「ヘティア様はユウキちゃんの顔が可愛かったのよ。」


 それまで黙っていたノエルがフォローした。


「そ、そんな見え透いたフォローいらないから!」


 しかし、ユウキにはばれたようだ。

 ユウキはもういいと拗ねてしまった。


「まあまあ、笑ったのは悪かったけどほんとに大丈夫だから。問題ないから。」


「怪しい。本当にそうなのかな?」


 これに関しては本当に問題ないのだが、ユウキからは疑われてしまっている。


「私はそれは本当だと思いますよ。私からしたら人族の王なんてクソですけどね。」


 その『クソ』の言葉にどれだけの感情が乗っているかは分からなかったが、いつも上品な言葉をつかっているノエルがここまで酷い言葉を使うくらいだ。


(まあ、ノエルの生い立ちを知っている俺からするなら俺もノエルの気持ちのちょっとは分かる。)


「ああ。でだ、ここからが問題なんだが。」


 二人は俺の次の言葉を待っている。


「王都に行くことになった。」


「おう、と?」


「ああ、そうだ。女王から直々に招待された。」


「直々にですか...。」


 それを聞きノエルは何やら考え始めた。


「それってお兄ちゃんが何かしたからなの?」


 俺が何かしたんのはしたんだが素直に言ってユウキを不安にさせたくない。


「いや、俺はただ女王に気に入られただけだよ。」


「「!!」」


 一斉にユウキとノエルがこちらを目をぎらつかせて振り向いてきた。


(こわ!)


「お兄ちゃん...?」


 ユウキがふらふらとした足取りでこちらへと向かってくる。

 その眼にはどす黒い闇に包まれている。


(やばい。早く誤解を解かないと!)


「落ち着け!女王は俺を魔族と見抜いて興味がわいただけなんだ!」


 まあ嘘は言ってないな。

 ユウキの動きが止まり何やらぶつぶつ言っている。


(怖いよ。)


「なーんだ!そうだったのか!」


(ふぅ。よかった。誤解は解けたみたいだ。)


「危うく女王を殺しに行くことだったよ。」


「...!」


 そんな物騒なことを言うノエルに俺は驚きすぎて唖然としていた。


(え、本気で言ってる?...まさかな。でも冗談には見えないんだが。)


 まああの女王には勝てないだろうけど。


「魔族と知りながらも見逃したと?ヘティア様。どうもこの件何か裏があると思うのですが...。人族は魔族と仲が悪いのではありませんでしたか?」


 考え事をしていたノエルが冷静に物を考えおれに話しかけてきた。


(こんな茶番しているのにノエルだけ考えさせて申し訳ないな。)


 ユウキからしたら茶番じゃないんだろうけど。


「ああ。仲悪いぞ。俺もそれには気が付いていた。どうも俺のことを昔から知っていたようだし、今はまだ信用できないな。」


「そこまでわかっていて王都に行くのですね。」


「そうだ。」


 今から言われるであろう説教も甘んじて受けよう。


「はぁ。ま、いいです。この先のことも考えたら一度王都に行くのもいいでしょう。」


 覚悟を決めていたがなにも言われなかったどころか、肯定までされた。


「何呆けた顔しているんです。ヘティア様が言い出したことでしょう?」


「あ、ああ。そうだけど怒ってないのかなって。」


「怒ってます!だけどそれは王都に行くことに対してではなく、私たちになんの報告もなく決めたことです!どうして何も言わずに決めるんですか!私たちは足かせですか?私は、私たちは足かせになんてなりたくない!」


 肩を上下に揺らし息をするほど俺に思いを伝えるノエル。いつもとは違う様子にびっくりしつつ、その思いに対して申し訳なさが募った。


「悪い。だが、あの場にいなかったしすぐに決めないと...」


「それも私たちを置いて行って一人でいくからですよね?返事を保留して、一緒に考えてもよかったんじゃないんですか?」


 その言葉に何も言い返せない。


「ふん。今日はこの辺にしときます。...今後は私たちに相談してからにしてください。」


「ああ。約束する。」


「ねぇ!誰か忘れてない?」


 その声は俺とノエルの間に入っていた。


「すまん、ユウキ。ユウキからも何か言いたいことはあるか?」


「ん-、ない!ユウキの言いたいことはノエルが全部言ってくれたから。」


 ユウキは悩む仕草を少しみせ、自分の考えを伝えた。


「あ!やっぱりユウキからも一つ!生きて帰ってね。」


「...当たり前だ。」


 俺の返事を聞くとユウキは百点満点の笑顔を見せてくれた。


「全く。この兄妹は。」


「あ!」


 俺はあることを思い出し亜空間からあるものを取り出し二人にあげる。


「「これは?」」


「これは遠くでも連絡を取れるものでな。ここのボタンをおせば連絡ができる。だが、三回ほどしか使えないから重要な時しか使わないように。」


 俺が渡したもの。四角い薄いやつ。スマホだ。

 ただ再現するのには難しかったので劣化版だが。


「よし。準備も終わったし、そろそろ行くわ。」


 ユウキとノエルが俺に手を振っている。


「「いってらっしゃい!」」


「いってきます!」


◇◇◇◇◇◇


「こっちは用済んだけど、フゲンは終わったのか?」


 ユウキとノエルに別れを告げた後、俺はまたフゲンの部屋に来ていた。

 フゲンは何やら秘書兼フゲンの嫁と話し込んでいるようだ。


「おおヘティア。まあな。俺がいない間の引継ぎをだな。」


 フゲンは一応この町のトップだ。やることは多いのだろう。


「へー。この町のトップは大変そうですなー。」


「何を他人事みたいに...。それとお前もこの町の冒険者に引き続きをしなくていいのか?」


 俺はこの町で冒険者達のまとめ役をしていた。基本言うことを聞いてくれるのだが、たまに文句を言ってくる奴らもいた。

 俺の容姿は女性だからな。舐められることもある。

 でも、そういう奴らは本当にごく一部で、大抵は女王の存在もあり認めてくれる。

 そのごく一部は俺直々にコテンパンにする。

 とまあ、なんやかんやでまとめ役をやっているのだが。


「あいつらは俺がいなくともやってくれるはずだ。それにノース達もいるし。」


「またノースに甘えて。あいつの顔だんだんと痩せ細ってるぞ。」


「大丈夫大丈夫。ノースもそんなやわじゃないし、元気が出る飲み物も渡してるから。」


「そういう問題じゃねえよ。」


 何やらフゲンが肩をがくんと落としている。


「まあアイツらがいいならいいんだがな。アイツらには感謝しろよ?」


「それはしているから大丈夫。」


「本当か?」


 フゲンは俺を疑っているようだが、もちろん感謝している。

 俺には書類をまとめるのとか俺には苦手なんだ。

 それをわざわざしてもらっている。

 まあ、報告するものは少ないから多少楽だと思うけど。


「それで、王都に行くのは何人だ?荷物とかもあるだろうし、馬車も多いよな?」


 俺がそういうとフゲンは「フフフ」と怪しげな笑い声をあげている。


「何だよ。気味が悪いぞ。」

「いやいや。お前にマウントをとれると思うとついな。」

「何だよそれ。」


 隣にいる、フゲンの嫁から「大人げない」と苦笑いをしながらフゲンを責める。


「そろそろ言わないとこの建物を壊されそうだし、どうやって王都へ行くか教えてやろう。」


「何で上から目線なんだよ。それに俺も建物を壊すほど落ちぶれていないぞ。」


「そうだな。悪い悪い。」


 そう全然悪いという気持ちがこもってない謝罪を聞きながら続きを話すよう首で促す。


「転移結晶というものを知っているか?」


「ああ。一応知識としてな。」


 以前戦ったケント達一行のハヤトが使ったやつだな。

 転移結晶とは王国にある巨大な転移結晶がもととなっている。

 女王が作った装置に転移結晶を持っているものは転移できるというものだ。

 王都と大きな街にしかまだ転移装置が建てられていない。

 この技術は今の女王が就任したと同時に開発したものだ。

 今はまだ王族か6将、一部の金持ち、大きな街の街長しか持てないもののあと数十年後には、一般普及するだろうと考えられている。

 ハヤトが持っていたのは俺がかなり危険度の高い者と警戒されていたのがあるらしい。

 ま、これは全部『世界認識』さんからの受け売りなんだが。


「それで、女王にもらった転移結晶で王都に行くってわけだな。」


 俺がフゲンが何を言うのかを察し、先に言うと、どうやら図星だったらしく口をとがらせていた。

 マウントを取られたのはうざかったが、馬車だと1ヵ月はかかっていたからありがたいことではあった。


「ちぇ、すぐに気づくんだから。可愛くねーやつ。」


「てめぇに可愛く思われてもうれしくねーからいい。」


「そうかい。お前の言う通り、転移結晶で移動すんだよ。ネタ晴らしもしたし、王都へ行くぞ。」


 そういうとフゲンは転移結晶をいじっていた。


「は?もう?はやくねーか?」


「女王陛下から早くって言われてんだ。もし機嫌を損ねたら俺らの首が飛びかねねーんだ。文字通りな。」


「そうかもしれねーけど見送りもなしに―。」


「行くぞ。」


 俺の静止する声を無視しフゲンが転移結晶を使った。

 視界が真っ白に染まり体が宙に浮くような感覚を覚えた。

 その現象は何か身に覚えがあった。


(あ、あれだ。この世界に来る時と、この世界に来てすぐの時と一緒なんだ、)


 そんなどうでもいい考えをしていると景色がうっすらと色を帯びてきた。

 やがて色が鮮やかになった。


「ここは…。」


 そこはどこかの部屋だった。


「はあ。なんだよ。そこにあった景色は絶景だった。って言おうと思ってたのに。」


「まあまあ。ここを抜けたらすぐ王都だから。いきなり街のど真ん中に出てくるわけないだろ?」


 それもそうかと納得し、フゲンの後をついていく。

 扉を開き、光が見える方へと向かう。

 この道の周りは建物の中のようで景色は見えない。


「腰ぬかすなよ?」


 もうすぐでこの道も終わるときにフゲンがそうワクワクした顔で言ってきた。

まぶしい光に目が慣れ、その先に見えた景色は前世でみてきたゲームやアニメでみるザ、ファンタジーな街並みだった。

 転移装置がある場所は王国の中心部分にあるようで周りが見渡せる場所にあった。

 技術は圧倒的に前世のほうがあるが、この街は今まで見てきた街よりはるかに―


「すごい。」


「絶景だーって言うんじゃなかったのか?ま、それも無理な話か。俺もここに来るのは二回目なんだが、初めて来たときは腰が引けたよ。」


 いつもなら煽ってくるフゲンに軽口が言えるのだが、俺はそれに突っ込む余裕なんてなかった。

 それほどこの景色に圧倒され何も言えるものではなかったからだ。


「さ、そろそろ手続きやるから、あっちに行くぞ。」


 そういうとフゲンは強面の兵士の所へ向かい、俺もそのあとに続いた。

 一応転移できても、検問はあるらしい。

 色々な装置にかけられた。

 武器を持ってないか、持っていたら書類を出したり。

 5分くらいして最後の項目になった。


「じゃあ、女王陛下の招待状を見せてください。」


 と兵士から言われ、バッグをあさるフゲン。

 いつまでたっても書類を出さないフゲン。


「あれおかしいな、ヘティア。お前持っているか?」


 フゲンがつぶやいた。


「持ってるわけねーだろ。」


 俺がつぶやいた。


「じゃ、じゃあこのバッグに入ってないのは?」


 フゲンがつぶやいた。


「は?嘘だろ?もう一回バッグ見ろよ。」


 俺がつぶやいた。


「そ、そうだな。…ない。」


 フゲンがつぶやいた。


「っておいぃ!なにやってんだ!」


 王都初日はあわただしい1日になりそうだ。


◇◇◇◇◇◇


 俺の手は血で染まっている。

 周りから叫ぶ声が聞こえる。

 ただいまと言わないといけないのに。


「ノエル、ユウキ。...すまない...。」



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