勇者5
久しぶりの勇者編です!
「お主は誰かの?それに、スピアはどこにいったのじゃ?」
母上が、目の前に現れた、…ノエルといった少女。(少女と言っても背が高いのだが。)に喋りかけていた。
「あぁ。スフィアには、事態をややこしくされないように、転移させました。あの子がいると、騒がしいので。」
「スフィア?…。そうか。それは我も同じことを思っていた。ノエルといったか?」
「えぇ。」
「ノエルはなにをしに来たのじゃ?」
その時の母上の顔は、すごく険しい顔だった。それもそうだ。魔王と同格と思われる人物が現れたのだから。
「ふ。なにをしに来た?ははは!」
突如壊れたかのように、笑い始めた。
「魔王と一緒に来た私がなにしにきたかなんて決まってるじゃないですか。宣戦布告ですよ。我ら魔族軍は、今日をもって、契りをやめてあなた達、人族を滅ぼしに参ります。せいぜい頑張って抵抗してください。」
笑いをやめ、僕達を見下した顔で言った。
「待て!何を勝手なことを!」
僕はそれが聞き捨てならず、ノエルという少女に向かって叫んだ。
「なんですか。そんなにうるさく喋ってっ…。なるほどなるほど。勇者ですか。でも、勇者がなんのようです?正直私は魔王より強いですよ?」
「なっ。はったりを…。」
そうは言うが、僕の本能はこの少女に対し、怯えていた。触れてはならぬ禁忌だと。
「人族に仇なすものは、僕が断ち切る!」
「カエサル!」
母上が僕を止める声が聞こえたが、それでは止まらなかった。僕の勇者の剣が、ノエルを突き刺した。
しかし、なんの手応えもなかった。
「こっちですよ。」
声のするほうを見ると、会議の椅子にノエルは座っていた。
「そんないそがないで。まだ滅ぼすには早いですから。今日は宣戦布告だけですよ。」
「その身のこなし、只者ではなさそうだな。」
そう言ったのは、英雄プ=ナト。
正直に言って、僕より純粋なステータスで言えばちょっとだけ強い。
それでもプ=ナトが勝てるイメージが湧かなかった。
「そうですね。只者ではないですよ。」
そう言う、ノエルは美しい笑みを浮かべていた。
さっきから、あの魔王のことが頭から離れない。
「ん…。」
ノエルは僕を凝視してきた。その姿は美少女で、僕はドギマギしていた。
「ふっ。そんなのが勇者なの?」
突如砕けた口調で僕をバカにしてきた。
「なんなの?カエサルは勇者で間違いないけど。」
と、それがムカついたのか、花がノエルに向かって言った。
「そんな体たらくで何が勇者よ。人族の女王。彼の状態を見てみたらどうです?」
そう言うと、怪訝な顔しながら、母上は僕の方を見た。
「状態、魅了じゃと…。」
「そうよ。勇者が、魅了にかかるなんて。ははは!」
母上が僕を見て驚いた後、ノエルが馬鹿にした笑い声をあげた。
「滑稽だわ!…ふぅ。私としたことが取り乱しましたわ。それでは勇者さん、せいぜい足掻いて私の感情を昂らされてくださいね。」
「待て!」
そう言ってノエルはどこかへと消え去った。
◇◇◇◇◇◇
「さて、どうするものか。」
「どうするも何も、魔族のヤツらに対抗するための軍を編成するしかないでしょう!」
魔王とノエルが去った後、またもや、代表者たちを集めて会議が行われていた。
宣戦布告した、対魔族についてだ。
「そうじゃな。魔族が侵攻と言っても、大勢で侵攻出来るのは、カスタル平野と、ラリア王国の東側にある砂漠くらいじゃろう。」
「待て。魔王と、その側近らしきノエルとやらが攻めてくるのでは無いのか?」
そういうのは、エスカリ帝国の知将、エリウス。エリウスは当然の疑問を投げかける。
「あヤツらは来ないと言ってもいいじゃろう。あヤツらが動いたら我らの軍など容易く葬られる。あヤツらは自分が面白くないと思うことはしないのじゃ。今回の宣戦布告から分かる通り、戦争を楽しむつもりなのじゃろう。」
「楽しむだと!」
各国の代表たちは怒りを見せるが、それと同時に冷静な頭脳が、まだ人族の命運が決まってはいないことを悟っていた。
「そういうことじゃ。とりあえず、ラリア王国の砂漠は我らと、インスタシア評議国で、カスタル平野はエスカリ帝国とガナト共和国で軍を編成することでいいかの?」
その言葉に、各国の代表たちは異論を言わない。
「さ、舐め腐っているスピア達に人族の力を見せつけようぞ。」
人族の命運をかけての会議が終わった。後に人族の命運を分けた会議となるのだが、まだ誰も知る由もない。
そこに、悩んでいる勇者がいることも。




