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第3章13 もう一人の妹

遅くなり大変申し訳ない!

 長い、夢を見ていた気がする。

 それは、どこまでも暗く、一筋の光も見えない暗闇の中、突然現れた眩しい光。

 その光はどこか歪でこの世のものじゃないように見えた。

 でも、それは私にとってはどうでもよかった。

 家族を、仲間を前に何も出来ない私には、それはそれは神がもたらした奇跡。


「ーーーーッ。」


 意識が目覚めたノエルの目にはダークエルフの村にある自分の家の天井がまず目に入った。

 何故ここにいるのか、ヘティアはどうしているのか。


(ヘティア様...。)


「お、目が覚めたな。」


 丁度考えている人の声が聞こえてきた。

 一瞬幻聴だと思ったが、その声のするほうを見るとそこには忘れもしない姿があった。


「ヘティア、様?」


「うん。そうだよ。」


 ヘティアは恥ずかしそうに頬をかきながらそう返事をした。

 しかし、ノエルはヘティアをヘティアと信じられない。

 だって、意識を失う前、あの時確実に息が止まっていたのだから。

 でも、その声、その姿、その仕草。どれもがヘティアだと脳は判断している。


「体の調子はどうだ?」


 私を心配してそう問いかけてくる。

 しかし、ノエルはそれに答えられなかった。

 どうしても、目の前の人をヘティアと思えなかった。

 生き返るなんてこと神でもなければ出来ないから。


「あなたは本当にヘティア様ですか?」


 そう思いきって言った。

 ノエルは冷や汗が止まらなかった。

 もしもヘティアではなかったら、殺される可能性が高いからだ。


「何言ってるんだ?ノエル。俺はヘティアだよ。」


 そう、ヘティアは笑ってみせた。

 その顔や目には嘘をついているような様子はなかった。

 しかし、それでもノエルはまだ疑念が拭いきれない。


「でも!あの時、確実に死んで.....。」


「あ、あぁ。それでか。」


 ヘティアは困ったような笑顔を見せ、ほほをかいている。

 それから言うのを躊躇っていたようだが、何かを決意して、事情を説明した。


「──って感じのことがあって、なんだ。つまり、俺は神様に生き返らせてもらったってことだよ。」


 私は言葉が頭に入ってこなかった。

 言葉というより、その意味が分からなかった。


(神?生き返った?ヘティア様はすごいって思ってたけど、神と話せるほどの人なの?)


「神って、ヴィヌアヌスって名前?」


 この世界で唯一神と言われている名前だ。


(ダークエルフは信仰をしていないけど、人間はしていたはず...。神のお告げってやつなのかな?それじゃあ、ヘティア様は神官?)


「いーや。そんな名前じゃないな。ブローメって言うらしい。」


(ブローメ。聞いたことがない。ヴィヌアヌスではないの?

私の知らないマイナーな宗教なのかもね。)


「そうなんですか。ですがヘティア様。あまり神の名前を呼び捨てにしてはいけないのでは?」


 そう言うと、苦い顔をして肩をびくんとさせた。


「い、いやー。あい...ブローメが呼び捨てで呼べって言ったんだよ。...ん?呼び捨てで呼べって言ってたか?」


(最後の方は何を言っているのか聞こえなかったけど、神から呼び捨てにしていいって言うなんて...。それでも。)


「そうですか。でも、余り人間にそんな事言わない方がいいのでは?妄想だったとしても怒る人間もいると思いますよ。」


「いやーほんとなんだけどなー。」


 うーんと唸っていたヘティア様だったが諦めたように肩を竦めた。


「ま、そうしとくよ。」


 そう納得した。

 それにしても。


(理由はどうであれ、ヘティア様が生きてくれて本当に良かった。両親も奪われた私が生きていける最後の希望。それを見つけたの。これ以上奪われてたまりますか。)


 両親を失い、一年間ずっと感情を殺し生きていたノエルがヘティアと出会い感情を取り戻したからこその執着。


「それより...も...。」


 その時、ノエルは泣いていた。

 押し殺していた感情が、一年もの溜まっていた感情が爆発した。怒り、悲しみ、そして、安堵。

 それら全てがノエルの涙のダムを壊したのだ。

 それは、以前の涙とは違う心の底から出た涙であった。


(お父さん...お母さん。私頑張ったよ。...あの地獄の中でも生き抜いた。先に旅立った同胞よ。私は生きた。だから。あなた達の分まで生きていく。私は私の人生では返しきれない恩をあの人に返すよ。だから...。皆も見守っててね。)



◇◇◇◇◇◇



 急にノエルが涙を流し気まずい雰囲気が流れている。

 またか!と思ったが、あれだけ怖いことをしたんだ。

 涙を流すのも仕方ないことだろう。

 それからしばらく時間が経った。


「すみません...ヘティア様。もう大丈夫です!」


 泣き止んで直ぐにそう言うノエルに、俺は無理をするなと言 おうと思ったが、やめた。

 その笑顔が強い力を感じさせたからだ。

 消え入りそうな笑顔ではない。


(もう大丈夫そうだな。)


「そうか。それならいいんだ。」


「はい!...とそれと...。」


 ノエルが急にモジモジし始めた。

 何だこの気色悪い行動は。


「そのお姿。可愛いですよね。」


 ノエルは俺の容姿を見て、褒めた。

 どうやら、褒めるのが恥ずかしかったらしい。何故か俺も照れくさくなったから、そっぽを向いた。


「そうか?」


「そうです!」


 ノエルが食い気味に返事をしてきた。

 こ、こえー。


「見たことも無い服ですが、なんですか?」


「あぁ。これは着物と言うんだ。」


 俺は自分の服の説明を始めた。

 俺の今の服は、前世での着物をモチーフにしたものだ。

 着物のままだと歩きづらいので、着物にちょっと小細工をして来やすいようにした。

 この世界に着物は無いのかな?

 他の転生者が広めてそうだが...。

 なぜこのような服装なのかは、たまには気分転換でもと思い、創ってみた。髪も風呂上がりだから、セットがとけている。あの髪はセットしてるんだからな!


「なるほど!実に素晴らしいです!」


 そう興奮気味に返事をするノエル。その反応に俺も嬉しくなった。


「そうか。なんなら、ノエルも着るか?」


「え!とんでもない!私には勿体ないものです!」


 そうは言ってるが、目が欲しいと言っている。

 そんな可愛い反応をするノエルに俺は意地悪をしたくなった。


「そうか。ならお預けだな。」


「そうですね...」


 明らかに残念がっているノエルに俺はこらえきれずに笑う。

 最初は不思議がっていたノエルだが、だんだんと状況を理解したのか、顔を真っ赤にして叫んでいた。


「ヘティア様〜!私で遊ばないでください!」


「ははは!」


 その様子がおかしくて笑ってしまう。


(そろそろ、本題に入るか。)


 俺は笑顔をやめ、顔を真顔にしてノエルと向き合った。


「ど、どうしたんですか...?急にそんな真面目な顔をして。」


「ノエル。」


「は、はい!」


「俺と一緒に来るか?」


 その言葉にノエルは...


「こ、こここここ、。」


 え?にわとり?


「これってプロポーズー!?」


「ちっげぇわ!」


 それから何とか事情を説明した。

 勘違いがずっと続いているノエルの説得は骨が折れた。


「そういうことですか。」


 ノエルは姿勢を正し、俺と向き合った。


「私、ノエルは、ヘティア様について行きたいと思います。」


 そう膝をつき、正式に俺について行くことに決まったのだった。

 最初から分かってはいたが、盲目から来るものだったら断っていたが、今の目を見ると大丈夫そうだ。

 それならば、村長に伝えに行くか。


 それからあれよあれよと物事が進み、ノエルを送りだす歓迎会が開かれた。


「ヘティア様〜。どうしてそんなにかっこいいんですか〜」


 さっきから、ノエルがだる絡みしてくる。誰だ、未成年に酒を飲ませたのは。

 にしても、かっこいいか。俺の今の見た目は可愛いだろうになぜかっこいいなのだろうか。

 考えても今の俺には分からんな。


「ヘティア様。私絶対、離しません!」


「そうか。」


 もう一人妹ができたみたいだな。

 俺ももう、誰も失わない。そう心に誓い、宴を楽しんだ。

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