第3章12 ダークエルフの真実
あの真っ白な世界から現実へと意識が目覚める。
まだ、意識が完全に起きずにいた俺を、とても大きい音が俺の意識をはっきりとさせた。
視界がはっきりした時、目に入ったものは...。
「ぐっ...。」
俺は突如として、体を吹っ飛ばされていた。
口から吐血をする。
(意識が目覚めた早々、これ?ってなんで俺はこいつと戦ってんだよ。)
目に映ったもの、それは...。
「ノエル...。てめぇ、正気か?」
それは、見るものを怖がらせる様なそんな禍々しい黒いオーラを放っているノエルだった。
しかし、ノエルはヘティアの声かけにも答えず、どこか、目が据わっているように見える。
(ちっ。これは、正気じゃないな。こいつの状態も気になるところだが、俺のこの体と、なぜ俺が死んでいたはずの場所から離れていて、尚且つこいつと戦っていれたんだ?)
体が万全なことは、ブローメが俺を生き返らしたことで、全て全回復したと考えれば納得出来るが、俺の体が、ノエルと戦っていたことには疑問に残る。
いや...
(『世界認識』さんが闘っていたと考える方が自然だな。)
以前に、俺の体を乗っ取っていた『世界認識』さんならば可能だろう。
(いや、それよりもノエルだ。あいつをどうにかしないと。)
ノエルの様子を見る。
目には理性の欠片も無く、まるで獣のように俺を見ている。
とりあえず、まずはノエルを鎮静化させよう。
それ以外にこの場を切り抜ける方法を思いつかない。
気づけば、俺の姿は元の(女性の姿)姿に戻っていた。
一発で鎮静化させる方法。
あれしかない。
『アレはやめといた方がいいと思います。』
そうすると、それを止める『世界認識』さんの声が聞こえた。
しかし、俺は無視して準備を進める。
それ以降、『世界認識』さんは何も言わなくなったし、体を乗っ取ってでも止めようとしていないので、大丈夫だろうと思い、目の前の敵...ノエルに集中する。
「最後に聞いておくが、お前は誰だ。」
また問いかけるが、何も言わない。
(やっぱりか。ケントがノエルに何かした?...いや、それならばあいつがここにいない理由がないし、ノエルを連れ帰っていただろう。だとすれば、暴走...?ダークエルフの種族にはなにか秘密が?)
そこまで考えた時、一匹の獣とかしたノエルが俺に襲いかかってきた。
はやい。
前までのノエルのステータスを遥かに超える動き。
一応、『状態認識』をかけたが、効果は鑑定不能だった。
(なんか、鑑定不能になること多くね?)
いや、今はどうでもいい。
ノエルの動きをよみきり、攻撃を流す。
はやいと言っても、俺よりは遅い。なんなく対処出来る速さだ。
そして、両腕を押さえ込み、顔をノエルの顔にかぶせ、目を見た。
『色欲』の、『魅了』の力。
これを使うことにより、ノエルの意識を奪い正気に戻させる作戦だ。
『魅了』を使うのが初めてだが、これは相手を至近距離(大体2mくらい)で目を見ないと発動出来ない。
それと、自分より互角かそれ以上のLvだと『魅了』の効果は得られない。
あまり使いどころがないと思っていた力だが、こんな場面で使うことになるとは。
ノエルは、俺の目を見た直後、目を見開きそれから体が固まった。
人の好意を勝手にいじるような真似はしたくないのだが、この状況だ。仕方がない。
ノエルはその場に倒れ込むかのように眠った。
俺はノエルを背負い、ダークエルフの村へと帰った。
◇◇◇◇◇◇
「お、おぉ。戻られましたか。ご無事で何よりです。...しかし、あの黒い光...。どうかされましたかな?」
帰って早々村長に話しかけられた。迎えと言うには少なすぎる人数で、村長ただ一人であった。
労いの言葉と共に、あの黒い光について聞かれたが、ダークエルフの長である、この村長は何か知っていると思う。
俺の返事次第では友好関係を築けない可能性もある。慎重に言葉を考えて、その中からこの場の俺自身が最適解だと思う使った。こういう時は『世界認識』さんは動いてくれないんだけどね!
「村長殿。知らないフリはやめて、教えて貰っても?それも、知らないフリをするつもりですか?」
ちょっと上から目線だったか?
でも、こんな風に舐められないようにしないと。
村長が俺の目をものすごい形相でガン見してくる。
(ひぇっ。)
爺さんのこんな顔怖いよ。
それからしばらく頭を下を向き考え事をしているようだった。
そして、意を決したかのような顔をしているようだった。
「流石。お気づきですか。」
ため息とともに出た言葉は俺を賞賛する言葉だった。
俺はそれに対し、にこにこと笑顔を見せている。
...何も分かってないんだけど。
え?全部分かってますよ?って雰囲気出しとけば全部勝手に言ってくれるって思ってたんだけど、まさか本当にそうなるとは。
「もちろんですよ。」
(全く見当もつきません!)
「そうですか。分かっている通り私達ダークエルフは、神話の時代、エルフの始祖、真妖精人と、魔族の始祖、魔神の子孫です。」
「えっ?」
予想外なことを聞き俺は驚きの言葉を隠せなかった。
ハイエルフ?魔神?
「どうかされました?」
俺の様子を不審に思ったのか、不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「い、いえ。なんでもありません。」
「はい。これからの話は約五千年前。魔族と人族の一回目の戦争の時です。まだ、魔神と、人族史上最高の勇者がいた頃の話です。」
そう言うと、村長は昔話をはじめた。
「魔神は、勇者との戦いで疲れていました。それで...当時いた真妖精人を誘拐してきて、子供を作らせました。疲れていたこともあると思いますが、子孫を作ろうとしたでしょう。しかし、勇者がそれをききつけ、子供諸共取り戻し、私達ダークエルフを保護してくれました。」
そんなことが...。
ということは、ノエルのアレは魔神特有の?
「しかし、勇者が死ぬと、私達を恐れた人族達が、迫害をし、先祖はこの森へと移住したのです。」
そして、村長は、ノエルの方を見た。
「その子は、最近では珍しい先祖返りです。魔神の力の半分はあるでしょう。しかしまだ、自分でも扱えきれてないのです。」
魔神か...。
確かに魔神とやらの半分の力があるとしたら、俺はボコボコにされていただろう。
「そこでお願いがあります!」
そう言うと、村長は俺の足元に土下座をかました。
きゅ、急にどうしたんだ。
「ノエルを一緒に連れて行ってはくれないでしょうか!」
その言葉に俺は考え込む。
「それは、人族と一緒で、危険な存在だから追いやるってことか?」
そう威圧をかけると、顔を勢いよく向け、顔を振った。
「そんなことはありません!彼女は、私達に手が余ります。このままでは彼女は、残りの人生を、自分の力に怯えながら暮らし続けてしまいます。それは、私達としても彼女にとってもそっちの方がいいはずです!」
こいつの言い分もわかる。
しかし...
「分かった。だが、ノエルの意見も聞くからな?」
「はい!わかりました!」
そう言って俺は家へと戻った。
はぁ。また女の子...
俺はロリコンじゃないはずだ。ロリコンでも、俺の今の性別は無性。てことは...!
ッ!今また後ろから殺気が...。
まぁいい。
俺は、ノエルの返事が分かりきっているので、それからの事をどーするか考えるのだった。




