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第3章10 VSケント1

最近ずっと眠くて眠くて、何も手につかないです。

「本気の殺し合いと行こうぜ?魔族さん?」


 片膝をついているのを俺に向け、本気の殺し合いという宣戦布告をしてきた。

 俺は特性の自己再生を使い、傷口を塞ぐ。

 多少のEPが減るがまだまだ空きはある。

 破けた服も『創造』で修復する。

 ダメージは少ないが、俺のEPは減った。

 1分も経てば、元は取れるが戦いの1分は長い。

 これがケントの狙いだとすれば、中々な策士だ。

 狙ってないだろうと思うとともに、前とは違うケントならばそれもあるかもしれないと、頭の片隅で肯定する俺もいた。

 俺はケントについて考える。


(俺の防御力を上回りダメージを与え、更には俺の目でも追い切れない、スピード。どこか、格上との戦いに慣れているような気がする。それよりも、性格は根本から変わってないが、雰囲気が前とは違う。何かこの4年であったのか。)


「だんまりしちゃって、もう終わりなのか?」


 ケントの声が、俺の考えを遮った。

 今はそんなこと考えている暇はない。

 俺は雪白を構えなおす。


(さっきは警戒してなかっただけで、警戒していれば大丈夫だ。)


 そう思うが、不安がどうにも拭いきれない。

 しかし、何をしても不安が拭いきれるわけではないので、雪白を構え、ケントの動向に注意を向ける。


「ふっ。ようやくやる気になってくれたか。だが、そんなに警戒しても…」


 独り言を言っている途中、ふらっとしたと思いきや、姿が消え、その姿がまた俺の目の前に現れていた。

 俺は姿が消えたと同時に、俺の警戒心が体を勝手に動かし、雪白をお腹をガードする態勢にしていた。


「無駄だぜ?ガードしてもなァ!」


 しかし、そのガードは意味もなく、顔面に蹴りを思いっきりくらった。

 体勢を崩し、横によろけた。

 そのまま拳を追撃しようとするのが見えたので、足元を思いっきり蹴り、そのまま横に移動した。

 砂埃が舞い、ケントの姿が見えなくなる。

 その合間に、体勢を立て直した。が、後ろから岩の槍が飛んできたので、俺はそれを咄嗟に横によけた。

 まただ。また、見切れなかった。

 俺の警戒心を、また一段と上げる。


「どうした?それでも本気を出してるのか?クックック。」


 嫌な笑い声をしているが、それが挑発だと分かる。

 こいつは、4年前とは比べ物にならないくらい強い。

 俺は火竜と戦う時以来の集中をする。

 そして…


「グッ…」


 またもや姿が見えず、顔面を吹っ飛ばされた。ダメージはないが、ノックバック効果は絶大だ。

 木にぶつかり、その勢いは止まる。

 そこに、ケントの追撃が来るのが見えた。

 俺は空間移動し、広場の中心に戻る。そして、後ろから追撃をしようとしたが、それに合わせてきた、ケントの拳の追撃が腹に打ち込まれた。拳自体ダメージはなかったが、拳から生えてきた岩の槍に刺し貫かれた。

 お腹に大きい穴が空く。

 血がいっぱい流れる。

 『痛覚激減Lv1』を貫通し、ダメージの通りの痛みが俺を襲った。

 前世での腕が折れるくらいの痛みだ。

 我慢出来ず、声が、小さな声が漏れる。


「ァアア゛ア゛!!」


「クッ、クハハハハ!これはいい鳴き声だ!いいザマだ!俺を見くびってたんだろ?それもそうだろうなァ!お前のステータスを見た。何があったか知んねェが、あれだけの膨大なステータスがあればそう楽観的になるのも仕方ねぇよな?それに牢屋で会った時に俺が怯えた態度を取っていたから尚更、俺の方が格下だって思うよなァ?あぁ。いい、実にいい気分だ!」


「へ、ヘティア様!」


 何の声だと、声の方を見ると、ノエルが手の鎖をガチャガチャしながら、こちらへ心配の声をかけている姿が見えた。

 ケントは、ノエルの方へと足を向けた。

 俺は、それを見過ごすまいと、無理やり岩の槍を体の前方の所をへし折り、ケントに、雪白を持って切りつける──

 の前に、体に残っていた岩が四方八方へと飛んでいった。

 ヘティアの体は、体の内側から岩が四散された結果、穴だらけになった。

 俺はその激痛に、耐えられず倒れた。


「お前はそこに這いつくばっとけ。」


「ヘティア様ー!」


 ノエルが俺を心配しているような声を喉が裂けんばかりに出す。

 しかし、俺は心配するなという言葉すらかけられないほど深刻なダメージを負っていた。

 それを、死んだのか勘違いしたのか、ポロポロと大粒の涙を流し始めた。


「ダメです!死んぢゃだめです!もう、私の大切な人が死ぬのはいやー!」


 それは、両親や、死んでいったダークエルフの同胞を見てきたノエルだからこその、悲痛な叫びだった。

 それでも俺は、その叫びを聞きながらもそれを安心させるようなことが言えない俺に、自分で自分を責める。


「心配すんなってお前もすぐ、一緒の場所に連れて行ってやるからよォ?」


 そう言って、ノエルの頬を触る。


「触らないで!」


 あの状況になってもなお、ノエルは恐れることも無く、ケントへ真っ向から立ち向かう。


「今の状況でもそんな強気な態度がとれるのか。中々いい女じゃねェか!気に入った。こいつとの決着が着いたら、可愛がってやるよ!…そんな、不思議な顔するな。こいつはまだ生きてる。まァ、それでも俺には勝てないがな!クハハハハ!」


 そう言い、ケラケラと笑い声をあげる。

 しかし、俺はノエルへの言葉にはイラつきはするが、俺のことを言っていることにはイラつく気も起きない。

 なぜなら、こいつが言っている全てが図星だからだ。正直今回は、ヌルゲーだと思っていた。

 かっこよくノエルを助け、それをユウキに語り、楽しくまた平和な時間を過ごす。ダークエルフの村を再建し、ノエルの両親や、ダークエルフの生活を見る。

 そんな、甘い妄想をしていた。

 警戒はしていた。何かあるとは思っていた。しかし、それは俺がなんだかんだ今までと一緒で何とかできると思っていた。

 しかし、それは甘かった。

 これは、ケントも言っていた通り、本気の殺し合いだ。対人戦だ。

 ゲームでも対人戦は読み合いが大事だった。相手が何をしてくるのか考え、それにどうやって対応するか。相手の意表をつくような一手を考え、実行するか。

 自分の持てる限りの手を使い、勝利を収める。

 それが最善手だったのに。俺は…。


(俺が対処出来なければ他の奴らは無駄死にするだけだろうしな。)


 ふっ。この考えも、確かにそれもあるけど、俺が一人でノエルを救った方が、好感度上がるかなっとか、そっちの方が面白いかなとか思ってた。楽観的過ぎた。


《主導権を私に渡してくださったら、すぐに倒しますが、いかがなさいますか?》


 情けないことに、『世界認識』さんから、そんな提案があった。

 しかし、その提案は断る。

 楽観的に考えているからじゃない。これは俺への戒めだ。

 ここで甘えてしまったら、俺の中に甘えが残ってしまう。どんなに劣勢でも『世界認識』さんがいるから大丈夫と、思ってしまう。それではダメだ。

 理性で考えれば、戦闘を全部『世界認識』さんに任せてれば全部上手く収まるのだろうが。

 これは、男の意地だ。

 くだらない、ちっぽけな意地だ。

 だがそれでも、俺はやる。今度こそ、俺は守ってみせる。

 ノエルも、俺が大事だって思ってる人皆。その全てを!

 断っても、『世界認識』さんからは否定の念は聞こえてこない。それもそうか。無理やり俺から体の所有権を奪った『世界認識』さんならば提案するよりも早く、体の所有権を奪っていただろう。

 それをしないってことは、最初から分かってたってことだ。

 もしくは、俺の意思を確認するのが目的だったかもしれない。

 ここまで『世界認識』さんに期待されて、無理だなんて言えねーわな。

 ケントは、俺にトドメを刺さなかったのは、俺を完膚なきまでに叩き潰したいからだろう。

 俺は、気持ちをフラットに、冷静にする。

 大丈夫だ。もうアイツの技のタネは分かった。


「ハハッ。やっぱりお前はまだ立ち上がって来るよなぁ?」


 俺は立ち上がり、雪白を握り直す。

 頼むぞ。

 HPは500を切っている。もうすぐで死ぬ間際だ。

 体に巨大な穴が空いているのは格好が悪いから、自己再生で治す。

 EPも、空間移動1回分しか残っていない。

 HP自動回復も、EP自動回復もスキルの使用をやめた。

 これは舐めプでもなんでもない。

 さて、今までの借りを全て返そう。

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