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第3章8 天の使い

ギリギリ...!

「.............い」


 意識がはっきりしないが、何か話し声が聞こえる。


「.......ください」

「起きてください。」


 そこで俺は目が覚めた。

 目が覚めたばかりでまだ頭に血が巡っていないのか、何も考えれない。

 やがて、目がこの世界に慣れてきた。

 俺は相変わらず鎖に繋がっており、空調にぶらさがっている。


(前世だったら絶対に肩外れているだろうなー)


 とまだ頭が覚めていないのか余計なことを考えてしまう。

 俺は目線を下に向ける。

 するとそこには、多分俺の意識の覚醒を促したであろう、ノースがいた。


「ヘティア様、遅くなり申し訳ありません。」


 そう言い、片膝を尽き、頭を下げるノース。

 しかしながら、俺には何が何だか分からない。

 何か謝られるようなことを俺はしていないし、謝ることをノースはしていない。

 ならば、何か不都合でも起きたのか。


「う.....ん。何も問題はない。それより、なぜここに?」


 という、ごくごく当たり前の質問をした。

 ノースにはユウキの護衛を頼んでいた。

 俺はそのことを思い出し、嫌な予感を覚えた。俺の背中に冷や汗が流れる。

 もしかして.......。


「まずは鎖を外しますね。」


 その声に俺は我が帰った。


(まだ決まったわけじゃない。)


 そう考えると、幾分か方が軽くなった。

 ノースの方を見ると、俺の鎖に手をかざし何か呟いている。その手から紫色の光が放たれたと思ったら、鎖は跡形もなく消えた。


(なんて魔法だ?それにこんな魔法使えるのか。)


「我々は、フゲン様のサポート役ですので、その補助をするための、補助魔法を覚えているのです。」


 俺が疑問に思っていると、その雰囲気を察したのかノースが説明してくれた。

 確かに、ルシファーと戦っている時もあまり参加せずに結界を張ることに集中していたなと思い出していた。

 あれから3年も経ったんだ。

 サポート用の魔法くらい覚えるだろう。

 まぁ、鎖を解除する魔法なんて使う機会あまりないと思うけど。でもそのおかげで助かったし、ここは感謝をしておこう。

 それにしてもなぜノースがここにいるのか。

 考えたくもない嫌な予感がする。俺はそれを考えようとしないように蓋をしても隙間から漏れ出てくる。

 それは不安。

 ノースがこっちにやって来るってことは何かあった証拠だ。何も無いなんて都合がいいことはない。

 このパターンは悪いことが起きるやつだ。

 そんな嫌な予感がしたと同時に、ノースが口を開く気配がした。


「ヘティア様。私がやってきたのは私の同期がヘティア様にかけていた監視の魔法が壊されてしまい、不審に思ったフゲン様が命令を出しこちらに参りました。...ユウキ様は大丈夫ですよ。」


 そう聞こえた瞬間俺の体の力は抜けきった。

 俺もそう知覚し笑ってしまう。

 ユウキが無事だと聞いただけでこのザマだ。


(もうこれ、ユウキが無事じゃなかったら俺死ぬな。)


「そうか。ありがとう。」


 そうして俺は立ち上がった。


「もう立ち上がってもよろしいので?」


 そうノースが聞いてきたが、俺の顔を見るやいなやふっと笑みをこぼした。


(え、俺なんかした?顔変だった?)


 ノースが笑った原因がわからず、心の中を動揺で満たす。

 それと同時に冷静な俺がそんなことは無いという否定的な意見が出る。

 俺がどういう事だということを顔に出す。

 それを察知したノースは失礼。といい頭を下げた。


「ヘティア様の強さとそのお顔を見れば、愚問であったということは分かります。」


 え?俺顔に何か出てたかな?

 俺にはよく分からないことを言う。

 俺は頭を切りかえ、今後の行動を考える。それよりノースの同期が俺に監視の魔法を使ってた?

 え、いつから...

 俺のあんなとこやこんなとこが見られてたってこと?


《それは大丈夫です。私が対処していたので、見られたらまずいものは見せなかったです。》


 『世界認識』さんがそう自信を持って言う。

 『世界認識』さんが言うなら大丈夫だな。

 さて、監視の件はフゲンをボコることとして、今後どう行動を起こすか。

 いや、もう決まっている。ノエルを取り戻す。

 たかだか出会ってちょっとのやつを助けるために危険な目にわざわざ自分から飛び込むの?

 そう思うやつもいるだろうがそれは否定しない。だが...


(ノエルはダークエルフという珍しい種族との交流のきっかけを作ってくれたし、ケントのやつをぶっ飛ばすチャンスもくれた.....そうこれは借りを返す。それだけだ。)


 そう、覚悟した俺の行動は早かった。

 まずは『世界認識』さんに手伝ってもらい、脳内マップに大まかな場所を特定してもらった。

 ここから、7kmくらいの場所か...。

 すぐ行けるな。

 まずは、ノースに別れを告げるか。


「俺はこの村をこんなことにした元凶を叩きに行く。ノースはこの村を守ってくれ。多分戻ってこないとは思うが、一応来てもいいように。」


「了解!」


 俺が仕事モード─勝手に自分が呼んでいる─になりテキパキと指示をする。

 俺には演技のスキルがあるのかもしれないな。


「それと、この村の状況を教えてくれ。」


「はい。まず、この村にいた不届き者たちはヘティア様が惨殺してくださったので死体を片付けるだけでした。しかし、長年の傷は癒えておらず、使い潰されたものや、拷問を受けたものストレスのはけ口にされたものなど、様々な形で被害が大きいです。」


 ノースがすらすらと報告してくる。流石に長年フゲンに仕えていただけあるな。

 ケントは村の人達に何もしなかったのか。俺だけにしか興味がなかった?よく分からないな。

 しかし.....。


「不快だな。」


 前世ではありえない...いや、俺が知らないだけでどこかであったのかもしれないな。っとそれは今回関係ないが、俺の分かる範囲でこんな出来事があるのは少々不快だ。

 俺には関係ないから不快だだけで済んでいるが、被害者達からしたらたまったもんじゃないだろう。

 しかし、なぜこの村を......。

 やはり、奴隷に?しかし、それならば一年も滞在する必要が無い。

 .....ダメだ。考えても分かんないな。

 こういうことはどこぞの名探偵にでも頼めばいいんだ。

 ノースをそっちのけで考えてしまっていた。

 こんなに考え事をする性格だっただろうか?

 もしかすると、この世界に来た影響なのかな?


「そうか...。心のケアや、負傷者の手当てや、村の復興はどれくらいかかりそうなんだ?」


「申し訳ありません。私はどうにもその手に弱く、分かりません。」


 ま、それもそうか。俺も急に聞かれたら考えを出すことは無理だし。


「そうか。フゲンに何かしらの伝手でこっちに来させるよう出来るか?」


「そうですね.....。村から離れることになりますので難しいかと...。」


 そうだな。村を離れるのはやめて欲しいが、ノースひとりでは心細い。

 ならどうするか。

 うーん。何かいい考えは...。


《『創造』で、見えない壁を創るのがよろしいかと。》


 そう、『世界認識』さんが提案してきた。

 おぉ!確かにそれが良さそうだ。

 やっぱり『世界認識』さんは頼りになるなー。早速その考えをノースに伝える。


「俺が見えない壁を創るから、この村は安心だ。それと、自由に出入り出来ないと不便だろうから、ある特定のルートならばこの壁を突破できるようにするから、それを覚えておけ。」


 そして、ノースに自由に出入り出来るルートを教えた。

 あ、ちなみにこれ考えたの俺だから。俺ながら、いい案を出せたなと思う。


「では、また。ご武運を。」


 そう言うと、多分ゴループ町へ目にも止まらない速さ─俺からしたら全ての行動が見えるのだが─で戻って行った。

 さて、ここから出る前に、この村の住民に現在の状況を教えてやった方がいいよなー。


(はぁ。こういうことはもう辞めたいんだけどな。ただ、一回は救った命だ。ここで放り投げ出したらここまでの苦労が水の泡だ。仕方ない...。)


 そして俺は地上へ向かって行った。


◇◇◇◇◇◇


 地上に向かうと、ダークエルフの老人がいた。


「お、おぉ。救世主よ。ワシらを苦しめた兵士を殺してくださってありがとうございます。」


 その老人が俺を見るや否や足元まで急いできて、両膝をついた。

 確か、この村の村長だったか。

 それよりもこの村長、目がギラギラしててちょっと...

 

(え、えぇ。怖いな。)


 その狂気的と言える熱量の謝罪に俺は一歩引いてしまう。

 それと、何故か俺の気持ちにモヤがかかる。

 感謝をされているのに何故だろう。

 何がこんなに俺をモヤモヤさせるのか。

 ...分からない。分からないな。

 こんなにも俺の頭が残念だったことにショックを受ける。


(まぁ、それは今更だし...。というか知力が50000近くあるのになぜこんなんなんだろう。)


 その独りで考えている質問には誰も答えてくれない。ただひとつを除いて。


《知力は、魔法に補正をかけたり、魔法の覚えれる容量のようなものなので、知識などや推理には関係ありません。》


 と衝撃の事実が。

 薄々気づいてたけど、そうだったなんて。

 確かに疑問には思ってたけどさー!


「ど、どうかされましたか?」


 老人が話しかけてきた。

 いかん、また考えて事をしてしまっていた。


「いや、...何も無い。それで.....えっと.....。」


 やばい!ひ、人見知りが!

 これは、仕事モードに切り替えなくては。


「話したいことがありますので皆さんを中央に集めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 そう話しながら、やはりほかの考え事をする。


(どうして俺をこんなに信頼しているのだろう。あいつらと同じ見た目なはずなのにな。)


 ──それは、兵士達を躊躇なく殺して回っていった事がダークエルフ達からしたら、地獄から救ってくれた蜘蛛の糸のような存在だからだ。これがもし、殺していなかったり、躊躇していればまた違っていただろうが。それと、ヘティアには分からないカリスマを自分自身が持っているのだがその事実を知るものはいない──


 まぁいい。それはこちらとしても好都合。

 罠だとかそういう可能性もあるけど、俺からしたらそういうことは分からない。

 なので、表向きだとしても好意は素直に受け取っておく。

 ダークエルフの老人を見てみると、他のダークエルフ達を呼び、伝言を伝えているようだ。

 これならばすぐに集まるだろう。


◇◇◇◇◇◇


 10分ほどしてダークエルフ達、30名ほどが集まった。

 さて、緊張するが仕事モードとなった俺にとってはいつもの事だ。


「さて、皆さん集まってきていただいてありがとうございます。集まってもらったのは他でもなく、今からこの村を見えない壁で覆うからです。この村から出られなくなりますので一応伝えておきました。」


 そう言うと、ダークエルフ達がざわつく。


(あー、前世で先生が話す時に、ざわつかれるとこんな気持ちになるのか。これはちょっと嫌だな。)


「はいはい。静かにしてもらいますか?大丈夫です。私は危害を加えるつもりはありません。それと、後からは私の仲間が来ます。人族ですが私の信頼のおける人族なので、大丈夫です。皆さんが心配するのは分かりますが、私の大事なものに誓って言います。」


 俺がそう言うとまたざわりとなる。


(さすがにダメかー。まぁこの人らはクソみたいな人族のせいでこうなっちまったんだからな。それで人族を信頼しろってのは無理あるよな。)


 俺は半ば諦めていた。

 しかし、それまで口を閉じていた村長が立ち上がった。


「お主ら!この御方こそこの村の救世主であるぞ。この御方がおいでにならなければワシらは近い将来滅んでおった...。その御方がご親切をしようとしておる。それを無下にするつもりなのか!」


 村長が信頼していると言っている。

 すると、徐々に信頼してもいいという意見が出始める。

 しかし、それでもまた裏切られるかもしれないと、いう疑問が大きくなり始める。


(はぁ。信頼しろというのは難しいな。)


「皆さんが信頼出来ないということは分かります。それならば私はこの村を見捨て、元の町に戻るだけですので。」


 そう言うと、ダークエルフ達はまたもやザワつく。

 どうするのかと。

 この選択はダークエルフ達にとってはターニングポイントとなるような選択だ。

 まぁ、村を見捨てる気なんてないけどな。


「この村の問題.....元凶を取り除いた後はこの村からそれなりの謝礼をもらおうと思っています。」


 そう言うと、ダークエルフ達はそれならば...と納得し始めた。

 俺からしたら、こんな事しなくてもいいのにと思うが、やはりただは怖いのだろう。

 タダほどコワいものはない.....だったかな?


「なんと、お礼を申し上げれば...。本当にあなた様はワシらの救世主です。神がお導きになった、天の使いなのですね。」


 何か危なっかしいことを言っている。

 まぁブローメがここに転生させたから天の使いってのも...


「あながち間違えではない.....」


「お、おぉ!!!」


 あ、やばい。そう思ったがそれはもう遅かった。

 至る所から、「神よ...」「この御方が...」「やはり、神はお見捨てにならなかったのですね。」「.......かわいい。」

 などの声が聞こえてきていた。

 やばい、変な勘違いをされる前に間違えたって言わないと。


「い、いやこれは...」

「分かっております!」


 食い気味で俺の話を遮る村長。

 その迫力に俺は一歩下がる。


(こ、怖えよ。)


「このことは秘密にしておきますので安心してください。」


 何を安心しろというのか。

 しかしながら、訂正する気も起きず俺は未来の自分に丸投げした。


「えぇ。お願いしますよ。」


 なぜこうなってしまったんだ。


◇◇◇◇◇◇


 後悔先に立たずなので、昔のことは忘れて今できる行動をする。

 見えない壁を創り終えたところだ。


「では皆さん。私は元凶を倒しに行きますのでここで大人しくしておいて下さい。白いローブを着たものが来ると思いますので。」


「はい。天の使い様...どうかご無事で!」


 ダークエルフ達が並んで俺を見送る。

 その光景は嬉しいはずなんだがそれが怖く感じる。


(早く行こ。)


「私の心配はご無用。では。」


 そして俺は見えない壁の外へと向かった。

感謝されているのにモヤモヤしているのは、殺したことを感謝されているからです。前世ではそんなことは決してないので、この世界の異様さにモヤモヤしています。

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