第3章5 いざダークエルフの村へ
今回はちょっと長めです!
俺は、ダークエルフの村へと旅立つことをフゲンに伝えるため、フゲン…領主がいる館へと向かった。
3年前俺が塔が溜め込んだ経験値を吸収した後、フゲンがそれを解体した。
なんでも、フゲンや、町のみんなからしたらあれは負の象徴、つまり前領主のことを思い出してしまうかららしい。
ドルンが領主になったすぐに塔を建てたらしい。
果たして、それになんの意味があったのか分からないが経験値を巻き上げるなんて技術、ドルンにあったとは思えない。
あの時あった、あの爺さん。
あれがなにか関係あると思うのだが…。
「お兄ちゃん?どうかしたの?」
「ん?あぁ、いやどうもしてない。それよりなんでユウキも付いてきてるんだ!」
俺がそう怒鳴るとユウキはかわいい顔を傾け何言ってんだこいつ…みたいな目で俺を見てくる。
くーっ、俺じゃなきゃうっかり恋しちゃうよそれ。
「えぇー。別に良いでしょ、それに私はお兄ちゃんに付いてきてるわけじゃないんだから。ノエルについてきただからね!」
お、な、なに…。
この口調…。
この態度...。
あの伝説の...。
『別にお兄ちゃんのためじゃないんだからね!』
で、お馴染みのツンデレか...!
これは、前世での女の子がやるから意味があるんじゃない。2次元のキャラがやるから意味があるんだ!三次元で可愛くても、何か腑に落ちない。だが、今いるところは現実であるが、現実ではない!異世界だ!俺の目の前にいる妹も、ノエルも前世にいたら、世界2大美女にも数えられる程の美少女だ!まさか、俺が生きてるうちにこんな場面にでくわせるとわ!おぉ!神様ありがとうございます!
「あ、あのーユウキちゃん?ユウキちゃんのお兄さんが立ったまま動かないけど?」
「あー。それほっといてもいいよ。それより、お兄さんってやめてくれる?」
ユウキが俺をそれ扱いしてくる...。
最近俺の扱いが酷くて悲しいよ。
そう言えば、前世でも妹に同じような扱いをされたっけ。
俺は、前世の記憶を思い出していた。
それを思い出すと、どうしてか胸が傷んだ。
注射を打たれたようなチクッとした傷みが俺の胸をじわっと傷めつけた。
「なら、なんて呼べばいい?ヘティア♡って呼べばいいかな?」
「あ?そんなもん許すわけないでしょ。お兄ちゃんは私のだけなんだから。私以外に渡すわけないでしょ?」
「ふふっ。まず渡すも何も、奪おうとしてないのだけど。ユウキちゃん、そんなにお兄さんが好きなのね。」
「そ、そういう訳じゃないから!ふんっ!」
「おいおい。なんでこんなに喧嘩してんだ?全く困ったヤツらだぜ。」
と、澄ました顔で言ったが俺は分かってる。
これは、俺を取り合ってるシチュエーションだ!
『お兄ちゃんは、私のモノ!この変な気もしない女なんかに渡すもんか!』
『邪魔だわ。私がお兄さんの隣に相応しいのよ!』
ってシチュエーションだな。
ぐへへ。分かってるぜ俺にはな。
あーはっはっは!
「何お兄ちゃんそんな気持ち悪い顔して。変な物でも食べたの?」
「あはは。お兄さん面白いですね。」
ユウキは気持ち悪いーって気持ちを全面に出した顔をして、ノエルは真顔でそんなことを言う。
やめろよ。そんな目で俺を見るな!
なにかに目覚めちゃうだろ?!
「はぁ。そのパターンは聞いてない...。」
「ふふ。ヘティア様ってなんだか面白いですよね。」
そう、微笑みながらそんな事を言う。
「今の流れでそれは褒められている気がしないけど?」
「はい。褒めてませんよ。」
「え?褒めてないの?!」
褒めてないんかい!
そこは実は褒めてますよパターンでしょ!
「褒めてませんが、ヘティア様には感謝してます。あの絶望の日々を忘れることは出来ませんが、ヘティア様と一緒にいると震えが止まるのです。これも全て、ヘティア様のおかげですよ。」
そう言うノエルは、どこか大人びて11歳とは思えない雰囲気を出していた。
俺はロリコンの気でもあったのか?
「うぎゃ!」
俺は足を蹴られ悶絶してしまう。
蹴られた方を見てみると、ドス黒いオーラが見えると錯覚するほど殺気立ったユウキがいた。
「お兄ちゃん?妹のユウキを放っておいてそのお...ノエルとイチャイチャするわけなの?」
「...!ふっ。」
俺はユウキの頭を撫でた。
何をするんだとぎゃあぎゃあ騒いでいたが、騒ぐだけで頭を払ったりしなかった。
一見すると俺に嫉妬していると思うだろうが、それは間違えだ。
その気持ちもあるだろうが、大きな要因はまだある。
ユウキが、初めて出来たであろう対等な相手...友達が出来たわけだからな。
友達がいなかったわけではなく、ユウキの珍しい容姿と綺麗な容姿が相まって近づく人がいなかったのだ。
それが、友達をとられて嫉妬してたと考えてたとしたら微笑んだりするよ。
ユウキは、なにか俯いて考えていたが顔を上げて胸張って言った。
「...お兄ちゃん。私、ノエルと友達になれて嬉しい!」
その顔はとても綺麗で、ユウキがノエルのことを大切にしていることが分かった。
それに対し、ノエルは涙を流していた。
ノエルもノエルなりに思うことはあるのだろう。
それを察しはするが、言葉にするような無粋はしない。
俺は黙ってノエルとユウキは抱きしめた。
ノエルとユウキはビックリしたが、ユウキが先に抱き返した。
ノエルは困惑していたがすぐに抱き返してきた。
俺らはそのまま自分達の世界に―
「あの、いい雰囲気のとこ悪いんだけどよ。それ、俺ん家の前でされる俺の気にもなってくんね?」
そう言ってきたフゲンに対し気まずくなりすぐさま離れ、頭を下げた。
―――――――――――
「さて。いい雰囲気を邪魔したのは悪かったが、本題に入ろうか。」
俺達はあの後、気まずい雰囲気を誤魔化しつつフゲンの仕事場にお邪魔していた。
「どうぞ。」
そう言い、お茶を差し出したのはフゲンの秘書。
なんか秘書って愛人みたいなイメージあるけど、それは大丈夫だ。
「ありがとうございます。ありがたいですけど体、大事にしてくださいね。」
「いえ。ヘティア様が旅立たれるのです。それを見送れるはずがありませんから。それに、この子にも私達の...この町の英雄の見送りをさせて上げたかったですので。」
そう秘書さんは大きなお腹を擦りながら言ってきた。
この秘書さんは、察してる通りフゲンの奥さんだ。
妊娠5ヶ月ほどの体に酷使をさせるのは申し訳なかったが、どうしてもと言うので同席させた。
「英雄ですか...。なんとも荷が重いですね。」
「そうでもないさ。だって、お前がいなかったらこの町は終わってたからな。」
「そう言うフゲンは、馴れ馴れしいな。」
「おっとこりゃいけね。悪かったですね英雄様。」
「ふっ。やっぱその態度は無しだ。気持ち悪い。」
そう言うと、俺達は笑いあった。
ユウキとフゲンの妻...ミネ=アルベルトは俺との関係を知っているため呆れた目で俺達を見ている。
ノエルは何がなんなのか分からないが、賢いノエルならばどういう関係かは分かっただろう。
俺とフゲンは、この3年で大分仲良くなった。
話してみると割と話しやすく、気も合い、悪友みたいな関係になった。
ミネからその度にお叱りを受けるが。
「じゃ、ノースから伝わってると思うが、一応顔見せもしようと思ってな。俺は今からダークエルフの村へと行く。ユウキをよろしく頼む。」
「あぁ。なんだったら、帰ってこなくてもいいぞ。」
「はっ。そうしたら俺も顔を見なくて済むからな。」
「ふっ。.......死ぬなよ。」
その目は先程と違い、真剣な目をしていた。
「当たり前だ。」
俺はそれを笑いながらあしらった。
そして、俺はユウキに体を向け、頭に手を乗せた。
「じゃ、行ってくる。」
「うんっ。行ってらっしゃい。」
頭を撫でるのを気持ちよさそうな顔をして受け入れ、そう別れの言葉を告げた。
「ノエル。行くぞ。」
「はい!」
そうして俺はダークエルフの村へと向かった。
――――――――――――
俺は、ヘティアを見送った後、ノースにユウキを託し、部屋へと戻っていた。
「あなた。ヘティア様は無事に帰ってくるわ。」
俺の心の内を読んだのかって思うようにそう言ってきた。
「あぁ。そうだな。」
なぜか襲いかかる不安の影を振り払いながらヘティアの無事を祈った。




