第3章4 親友
さて、意気込んだはいいもののユウキになんて言おうか。
あれほど心配かけてたと言うのがたった今分かったって言うのに、また家を空けるなんて言葉誰が信じてくれるだろうか。
また、泣かせてしまうのがオチだ。
だがあんな担架を切って救うと意思表明したのに、それを無しにするってのは俺のプライドも人間性としても無しだ。
しかし、どうしたらいいものか。
と、俺はユウキの部屋の前で悩んでいた。
「ヘティア様?どうかされたのですか?」
心配そうに、純粋な瞳でこちらを見てくる。
今から助けようとしている子に心配されるとは。
俺もまだまだ甘ったれた覚悟だということを再認識してしまう。
「いやいや、何も無いよ。ただ、ワガママなお姫さんにどう説明したらいいのかをだな…。」
「おひめさん?」
「そーそー。俺のかわいいかわいいお姫さん。」
「だれがワガママなのよ?」
俺がノエルに変なはぐらかし方をしていた所に、一瞬背筋に氷を当てられてるような気分を味わった。
それをした犯人は…。
「ユ、ユウキ…。」
「だーれーがワガママなのよ!」
わ、怒ってる。
やべー。どんな強敵よりユウキの目の方が怖い。
まだこの歳でこの覇気ってどんだけだよ。
10年後とか目で人を殺せるようになってるんじゃないか?
俺は将来の俺に憐れみの目を向ける。
「かわいい…。」
俺とユウキの間に割って入ったのは、ノエルがぽつりと呟いた独り言だった。
その目には復讐の目はなく、一人、ただかわいさに魅了された女の子だった。
「…。」
やばい!
ユウキがこの子を見たら、きっと嫉妬で怒り狂ってしまう。
ユウキは、俺の事が好きなブラコンだからな。
俺もシスコンだけど…。
暴発する前に取り押さえなきゃ…。
「よくわかっているのね。そうよ。ユウキはかわいいの!」
何故か知らないがユウキは胸を張って私はかわいいと高らかに言った。
「はい!ユウキさん?ていうんですか。貴方はとても可愛い。」
「うんうん。よく分からない女の子だけどよく分かってるのよ。」
ユウキは、顔をとろけさせてうんうんと頷いている。
あーあ。また調子乗っちまう。
以前、この町の子供達と遊んだ時もこうやって、褒められて調子に乗ってたな。
ユウキは、他者とは圧倒的に違うところがある。
可愛いのはそうだが、他に学習能力がレベチと言うとこだ。
なんでも聞いたものをすぐ吸収しその頭に刻み込む。
そうして、ユウキは齢3歳ながら大人にも負けず劣らずの頭脳を持っていた。
なので、こうした褒められているということを理解しているのだ。
だからこそ、自分を特別と思い込み…いや、特別だ。
この子は他の目から見ても特別だ。
それがなぜかはまだ分からない。
俺がこの子に『状態認識』をかけようとしても、シルバーやルシファーと同じように鑑定不能と出てくる。
つまり、そうするだけの何かの能力か、俺と互角以上かの二択だ。
俺は前者とみているが。
捉えられていた時この世界の希望かなんか言っていたような気がするからな。
それほど珍しい能力でも持っていたのだろう。
っと、ちょっと考え事が寄り道してしまったようだな。
「ユウキはかわいい!」
「うん!かわいい!」
そんな微笑ましい時間を10分ほど続けた後(これを10分ほど見ていた俺の気持ちを考えてくれ。)合間を見て俺はユウキに声をかけた。
「ユウキ、あのな…。」
「…なに…。」
ユウキのさっきまでの笑顔がムスッとした顔に…。
その顔もかわいいけど、もう反抗期でお兄ちゃん泣いちゃう。
「実は…また俺ここを空けなくちゃならない。だからすまん!」
「そういうこと。別にいいよ。」
「だから、なんとか許して…え?」
覚悟していた反応と異なり俺は呆気に取られてしまう。
「だから、いいよっていってるの。どうせお兄ちゃんのことだから、この子を心配に思ったんでしょ?」
それは6歳とは思えないほど立派で大人な対応だった。
「ユウキは、心配でしょうがなくて、夜も眠れないくらい心配だけど。ユウキは、そんなお兄ちゃんがだいすきだから。だから、いいよって言うの。」
俺はユウキがいつの間にか精神もちゃんと育っていることに気がつき、涙が自然と溢れていた。
「ちょっ、お兄ちゃん?!いきなり泣かれるとビックリするんだけど。」
「あぁ、すまん。お兄ちゃんはユウキの成長が嬉しくて。」
「もう、軽口言わないでよ。」
「……。そうだな。大丈夫だ。俺は大丈夫。帰ってびっくりするほどの武勇伝を用意しとくからな!」
「うん!」
その笑顔は100点満点の笑顔だった。
「それと、あなた。名前を教えてくれる?」
ユウキはそういい、ノエルに声をかけた。
それにびっくりしたのかしばらく目を点にしていたが、やがて目と口を緩ませた。
「ノエル…。私はノエルよ。ユウキちゃん。」
「ちょっと!ちゃん付けしないで!」
「ふふ。」
ユウキは、ノエルにそう怒っていたが、顔を見合わせると互いに笑っていた。
その雰囲気は誰もが見ても親友と呼べる光景であった。




